100冒険者たちの夢(タツヤ)
ここは、グローリーホールの淵。冒険者にとっては最前線の場所であり、RGF社にとっても、この大穴を下るという壮大な計画の最前線基地でもある。
ラビリンスでは例の一騒動があったためか、大迷宮内には冒険者たちは閑散としていたようで、とても静かだったが、ここでは今もなお、一定数の冒険者たちが集まっており、それなりに話し声や、何かの作業する音など、多少はにぎやかだ。
「教えてほしいのであります。グローリーホールの底に、桃源郷はあったのでしょうか?」
赤髪の兵士が、はっきりとした口調で、そう問いかけた瞬間、突然に辺りは静寂になった。
グローリーホールの周辺中に響き渡るその声。
それは冒険者たちもずっと思っていた疑問あり、冒険者たちの間で噂されていた妄想である。
誰もが、それは噂、そんなもんはあるわけがない、そう思ってはいる。だが、その声に、周りにいた冒険者たちもこちらへと注目をし始め、それまでグループ内で会話や、何かの作業をしていた冒険者たちも、それを途中でやめて、こちらへと耳を集中する。
それまでざわざわと何かしらの音が響き渡っていたグローリーホール。そこに突如と訪れた静寂。
その中で、俺は赤髪の兵士へ答える。
「桃源郷?そんなもんはなかった。」
「。。。そうで、ありますか。」
赤髪の兵士は、下を向いた。
訪れるしばらくの静寂も、そこで終わり、再び、ざわざわと、ざわめく音が響き渡った。
そこに、霞がつけ答える。
「でも、すごいのがあったわよね。」
「凄いもの??でありますか?」
「あぁ、まるで重力が反転したように建っている城。それに人の大きさほどもある巨大なレッドダイヤがニョキニョキそこら中に生えていたな。」
そう答えた瞬間に、再び、周囲の騒めく音が消え、静寂が訪れた。
「レッド、、、ダイヤ?」
「あぁ、あのレッドダイヤの巨大な結晶さ。あれがそこかしこにニョキニョキと生えていた。」
「は?、、、逆さに建っている城?どういうことでありあますか?」
「俺らにも、よくわからん。なんだか、ここだと重力が向きというのは下方向だが、あそこは、変な方向に重力が向いているらしい。」
「城には誰か、いたのでありますか?」
「えぇ、いたわ。城には、あのアイ・・・うっ、」
俺は霞の口を手で塞いで、小声で霞に話しておく。
「おい、ラビリンスはあいつのせいで、散々な状況だったんだ。あいつが、城にいたとでも言ってみろ。誰のせいでラビリンスの都市は壊滅したんだと言われかねないぞ。」
「そ、そうよね。」
オッ、ホン。
俺は咳ばらいをして話し続けた。
「いや、誰かがいた跡はあったが、誰も見当たらなかった。調べてみると、宝物庫があるらしい。俺たちが見たが扉は頑丈に施錠されているようで、開けることはできなかったがな。」
その話を聞いた周囲の冒険者たちや、RGFの兵士は小声でざわつき始める。
「おい!」
「聞いたか?」
「レッドダイヤだとよ。」
「おい!」
「聞いたか?」
「宝物庫だとよ。」
「てか、どうやって無事にあの穴を下ったんだよ。」
「本当に穴の下にまで行ったのかよ。」
「いや、あたしは見てたわよ。あいつらが穴に飛び込むところ。」
「じゃ、どうやって登ってきたんだよ。」
ふたたび、あたりが騒めき始めた。
グローリーホールの地底に、宝があった。それどころか、まだ見ぬ城すら建っていた。
それは、冒険者たちの心を揺るがすには十分な情報だったのだろう。
赤髪の兵士は続けた。
「もう一つ聞くのであります。グローリーホールの底に、他に人はいたでありあますか?」
「いや、見かけなかったな。」
「そうでありますか。。。」
再び、赤髪の兵士は下を向く。
「では、ベベルゼルドという名の人物も、知らぬでありますね。」
「ベルベゼンド??」
半透明な妖精、とは言っても今は人がいるので、完全な透明になってもらっているが、奴が俺の耳元で囁く。
「おい、ボケ老人。アースホールの横のホラ穴にあった置き手紙に書いてあった名前なのです。」
ボケ老人は余計だが、確かに、そんな名前で置き手紙が置かれてあった気がする。
「そういえば、さらにホラ穴みたいなところに置き手紙あって、『ベベルゼルド』とか、確かに書かれていたな。」
その瞬間に赤髪の兵士は、それまで下を向いていた顔をこちらへ正面を向け、大きくを目を見開いた。
それまで、赤髪の兵士とは、追いかけまわされていたり、戦っていたりして、あまり、直視はしてなかったが、兵士にはもったいなほどのキレイな顔立ちだった。
そして、ざわついていた周囲も一瞬で再び、静寂になった。
「他にも何人か、置き手紙に名前が書かれてあったわよね。アイリス=クロニエル?リュウゼン=セイイチ?だったしらね。」
そして、赤髪の兵士のキレイな瞳から、一筋の涙がこぼれていた。




