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98その頃、グローリーホールでは(朱音)

 

 RGF社、第一最前線調査部隊、曹長、朱音である!

 なんとも、前回は大変にお見せぐるしいところをお見せしたのであります。

 随分と間が開いてしまったのでありますが、グローリーホールから突如と現れた深紅のドレスを着た妖艶な女性に、完敗したのであります。


 何ともお恥ずかしい。


 それからというもの、治療部隊に運ばれて手当てを受けていたのでありますが、その間にも仕事という仕事は積もっていき、やっと復帰して自職の事務所に戻ってきたのでありますが、今、自分の眼前の机に山積みにされた書類が天井にまで達するどころか、天井を突き抜けていたのであります。


 ふと、肩をトン、トンとされれば、背後に不気味な笑みを浮かべる上司が立っており、


「わかってるな。今日中に片付けるんだぞ。」


 と無茶ぶりをしてくるのであります。病み上がりかどうかなんて関係ないのであります。


 それよりも、気がかかりなことは、あの深紅のドレスを逃がしてしまったこと。

 噂を聞けば、あの女を逃がしたことで、ラビリンスは惨憺たる悲惨な状態になってしまったのこと。我が部隊が不甲斐ないばかりにラビリンス市民の皆様に甚大な被害を出してしまったこと。誠に申し訳ないのであります。


 そして、もう1つ。

 そのラビリンスに甚大な被害を与えた深紅のドレスの女性、まるで人間を超越した存在とでも言うべきなのでありますが、それを倒した者は、タツヤとカスミという名と聞くのであります。


 そう、前回、このグローリーホールを飛び込んだ大馬鹿野郎なのであります。

 今にも過去にも、このグローリーホールを飛び込むバカな冒険者は大勢いるのでありますが、戻ってきた者は誰もいないのであります。

 もし、本当に戻ってきたというならば、グローリーホールに飛び込んで生還した第一号者なのであります。


 ただ、、、


「まさか、そんな訳がないのであります。。。」


 そう、これはあくまで大迷宮都市ラビリンスから届いた風の噂に過ぎないのであります。

 いまだ、かつて、そんな偉業を成し遂げた者はいないのであります。

 おそらくは、よく似た別の冒険者であると推測するのであります。


 もし、仮に、本当に彼らだとすれば、危険なことをして一発殴ってやりたいのであります。が、同時に、グローリーホールの中の様子も聞きだしたいのであります。


 だって、グローリーホールへと旅だった者で一人として戻ってきた者はいないのであります。

 そして、あたしとて、RGF社の調査部隊でありますが、あたし自身、冒険者としてギルドから認められ、Aランクという認定までいただいているのであります。グローリーホールの中の世界はRGF社の社員としてではなく、単純な冒険者としての興味でもあります。


 それに、もし、戻ってきたというのであれば、過去にグローリーホールへと飛び込んだ冒険者たちの行方が気になるのであります。

 ラビリンスの自治政府法令によれば、1年以上、行方不明の者は死亡扱いとされているのであります。しかしながら、過去にグローリーホールに飛び込んだ者で、誰もその亡骸を目撃した者はおらず、彼らの生存を信じている人も多数いるのであります。


 そして、あたしも、その一人であります。

 あたしは、昔、ベベルゼルドという冒険者に惚れたのであります。彼もまた、この大穴に仲間と共に飛び込み、未だ行方知れずであります。ここにいれば、彼と再び、会えるかもしれない、そんな淡い期待を込めて、あたしはRGF社への入社したのでありますから。


 我が部隊や冒険者たちの間でも、多くの者は亡くなったのだろうと推測する者は多くいるのでありますが、一方で、グローリーホールという、まだ見ぬ世界に、桃源郷を重ね合わせる者も少なからずいるのであります。

 グローリーホールの先には、桃源郷があり、みな、そこで幸せに暮らしているのだ、という夢を持っているのであります。


 ただ、誰もその真実はわからないのであります。

 誰も、グローリーホールから戻ってきた者はいないのだから。


「曹長!緊急の報告であります!」

「なんだ!」

「そ、その、ラビリンスよりタツヤとカスミという名の冒険者がこちらへ向かっているとのこと。現在、D-4区画を移動中とのこと。まもなく、このグローリーホールへ来ると思われます。」


 その報告を聞いて、思わず立ち上がると、机の上の天井を突き抜けて積みあがった書類が、地面へと崩壊したのであります。


「承知、第一分隊はF-7区画、第二分隊はグローリーホール入り口にて待機、続報ありしだい連絡せよ!」

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