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初めての戦闘 〜 エピローグ 〜

 霧の大陸と呼ばれているだけあって、下山してゆくと霧で視界が悪い。それにモンブランの街から山を下る度に、身体が不思議と軽くなる。


「重力の逆転現象が起きているようね」


 才媛の紗弥香が霧に混ざる微量の塵の魔力成分から、重力の違和感を読み取った。


「巨体を維持するのに、必要なものって何だと思う?」


「食べ物や水?」


「そうね。それと環境。重力の恩恵と紫外線の影響度が違うみたい。流石に世界が違うから、正しいかわからない。でもこの地は巨体を維持するのは比較的楽なはずだよ」


 霧が深いのに植物も茂っている。草食恐竜のような生き物なら、餌に困らなそうだ。


「おい、あれ見ろよ」


 先頭を歩く康陽が、何かを見つけた。視界が霧でボヤけているのに、わかる巨大な獣の姿。


「うさぎ‥‥?」


 白い体毛がなければ蛙のような後ろ足がやたら大きい魔獣。長い耳たぶが兎っぽく見え、よく繁り育った植物の葉を食べていた。


「あれは巨足兎(ビガーラビット)です。強力な脚力と、爪が武器です」


 あんなに大きいとは知りませんでした、そうネフティスさんが伝えてくれた。


「気づかれてるよね」


 巨足兎(ビガーラビット)がピタッと食事を止めた。


「ドラファントに換装だ!」


 康陽の叫ぶのと同時に、巨足兎(ビガーラビット)が跳ねた。私達の感覚だと象くらいの大きさの兎が跳んでくるとか脳がバグる。


「──ちょっ!!」


 ドラファントに乗り込んだのと同時に、私達は互いの機体で弾かれ巨足兎(ビガーラビット)がそこへ着地した。離れて換装しないとそうなるよね。


 自分を越えるサイズのワニのようなドラファントを見て、巨足兎(ビガーラビット)固まった。


「逃げる前に、仕留めるぞ!」


 康陽がいち早く体勢を整え巨足兎(ビガーラビット)を抑え込んだ。


「千代、トドメを!」


「えっ、ムリだよ」


 トドメって殺すって事でしょ? そんなのドラファントに乗っていても私に出来っこない。


 異界で調査を行うって、探検隊みたいなのとは違うんだ。アニメなどで異世界にやって来て、簡単にモンスターをやっつけていた。


「代わります」


 ネフティスさんがドラファントの手を巨足兎(ビガーラビット)の頭部に置いて何かを打ち込んで仕留めた。 


 私と、紗弥香はドラファントに乗ったままヘタる。どこかピクニック気分で楽しんでいた。


「死なない身体を使えてもさ‥‥襲われたら怖いし、やり返すの躊躇うよな」


 康陽がわかったように言う。ムカつくけど、強い武器を与えられた意味を私はわかっていなかった。


 康陽と、ネフティスさんは仕留めた巨足兎(ビガーラビット)を収納に送り込んだ。


 錬生術師のカルミアが生体データを欲しがるので丸ごと送るんだとか。恐怖体験に疲れたので、突っ込むのは後にしようと思った。


「異世界‥‥なのね。それとも私達の世界もいずれそうなる時が来るのかしら」


「そのための準備なのかも知れないよね」


 ドラファントの換装を解いて、私達は恐怖を胸に歩みを進める。どのみち戻る事は出来ない。戦える力を貰えただけでもマシな事をネフティスさんからも聞いた。


 私達の場合は、主に康陽が原因の気がするので恵まれていた。でも隣のクラスの子達のように、戻って来れない可能性だってあった。


 私は魂装合体兵器(ドラファント)の指輪を見た。どうして魂なのか、この任務が終わればあの錬生術師は答えてくれるのだろうか。


 ────こうして‥‥いつ戻れるかわからない、霧の大陸での私達のサバイバル生活が始まった。


 サイズ感が色々とおかしいけれど、異世界だからと私は強引に思考を抑え込んだ。


「それでこそ、千代だ」


 なんか上から目線で余裕ぶる、吊りバカ康陽がムカつくし、親友はそんな康陽に変わらず一途なままだ。


 ドラファントがあれば巨大生命体相手にも戦える事がわかった。


 ただ‥‥やはり普通に異世界転移を堪能したかった。なんで私なの? なんでゴーレム(ロボット)なの?


 きっとこの先も、バカな康陽のせいでトラブルが待ち受けていると思う。先を思うと憂鬱な気持ちになる。


 今はとにかくドラファントを使って生き抜く事。元の世界に戻ったら、今度こそ吊りバカ男、 茂木田 康陽を盛大に振ってやるんだからね!


 


 

 お読みいただきありがとうございます。


 バンダナコミック用に文字数制限があるため、ほぼ序章で完結の形となります。


 特別企画で投稿した、吊り橋の話の短編の続きにあたり、「錬生術師、星を造る」の外伝的な話ですが、短編、連載を読まずとも読める形となっております。

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