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私は右手になりました⑤

 強い風が吹き付け、バランスを崩す私を康陽が支える。私達はモンブランと勝手に康陽が名付けた街に来ていた。


「はぁ〜、またここに戻って来ることになるなんて」


 強い風は変わらない。聖霊人形(ニューマ・ノイド)の身体は初めから制服のような服を着ていたので着替えずに済んだ。


 私達は魂装合体兵器(ドラファント)を仕舞える収納と伝達手段のついた指輪を貰った。暑さや寒さを感じる不思議な人形の身体。それに空腹を感じるので食事が必要で排世まで行う。


「なんでそんな無駄な性能までついてるのかな」


 見てないけど、自分の身体と違和感がなくなってるのがわかるくらい精巧な作りだった。


「科学者や研究家は変なこだわりが強いからな。それでも僕の気持ちは変わらないぞ、千代」


 キモダのくせに照れもせずに恋愛漫画のイケメンなセリフをほざく。


「ねぇ、ヤッ君、私は?」


「市谷も可愛いよ」


 何で紗弥香には雑なのよ。そう言われて紗弥香も喜んでいるから放っておいた。


「ねぇ、ネフティスさん。私達はこの世界の事をろくに知らされていないの。まずあの頭のおかしい女は何者なの?」


「新生ロムゥリ王国の宮廷錬生術師カルミア、それが彼女の肩書きです」


 ゲームに出てくるような錬金術師と違って、実際は臭うし色んな物を取り扱うから汚れてる。でも偉い人で、身なりをきちんとすれば美人だ。


「カルミアさんは少し‥‥いえ、かなり変わってらっしゃる方なのです。この世界の人々を誤解しないでいただけますか」


「マッドな人はどこにでもいるからな」


「あんたがそれ言う?」


 康陽も同類だと思う。ネフティスさんも仲間になったばかりで、錬生術師の事はあまり詳しくなかった。


 そのかわり転生者と身体を共有していた時期があり、私達の世界には詳しかった。


「このモンブランの街から下山すると、ミスティジア大陸の西部地域になるようだよ」


 渡された地図はろくな情報もない大雑把なものだった。だから調査隊を派遣したかったみたい。


 街の人はこの地で珍しいものを集めにやってくる、冒険者や商人を相手にしているそうだ。


「だから私達を見ても気にしないのね」


 前に来た時も放っておいてくれた意味はわかった。山の東部から降りた先には小さな港があって、そこにも旅人を迎える街がある事がわかった。


 山に街を築いたのは、巨大生物達の生活圏ではないから。


「高い所なのに、呼吸が苦しくなったり耳痛くなったりしないね」


「前回は魔法をかけてくれてだだろ? 今回はこの身体のおかげだな」


 康陽のは何の特徴もないが、基本性能は私達と変わらないみたいだ。


「物資はネフティスさんが持たされているから、僕達はこのまま狩りへ向かうぞ」


 やけに自信満々に康陽が言った。浮かれて吊り橋から落ちないといいわね。

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