私は右手になりました③
魂装合体兵器に乗せられたのはともかく、あんな巨大な生命と戦うの?
「この人形が、魂装合体兵器とリンクして動かせるんだな」
康陽はバカなんだけど、勘がいい。戸惑う私達に見本を見せるように動いてみせた。いや違う、何で私達が任務とかつく事になっているのか説明がない!
「千代、空を飛ぶ感覚って気持ちいいんだね」
紗弥香まで康陽に毒されおかしくなっている。確かに心地よさはある‥‥────グハッ!?
巨大な竜に体当たりを食らった。十メートルはある魂装合体兵器が簡単に地面に叩きつけられて、人形だからないはずの肺が潰れた。
「強度は充分なようね」
魂装合体兵器が見かけ倒しではなく、巨大竜が大きすぎるのよ。
「これは確かに厳しいな。合体して勝算はあるのか」
「そういう問題?」
「充分よ。四体目にはその娘が乗るから」
金髪の美女がそこにいた。いや、どこから現れたの?
「先輩のかわりにあなたにこのチームを任せるわよ、ネフティスさま」
どうやらこの世界にあった国のお姫様らしい。私達の実質リーダーは康陽だ。異界の事に関しては、ネフティスという娘が間に入る事になった。
「ちょっと、待って。そもそも探索だとか、巨大ロボになるとか納得していないんだけど」
康陽も勝手に話を進めるが、この錬生術師という女はもっと酷い。康陽がバカなのをいいことに、利用しまくっているのがわかるからだ。
「千代は僕の恋人だから右手な」
康陽が勝手に何やら言い出して、またも私は魂装合体兵器ごと引っ張られた。
『‥‥魔力同調を開始します』
何か声がしたと思った瞬間、狭い部屋で康陽の右後ろにいた。私の隣には紗弥香がいて、私達の後ろにネフティスという娘がいた。
「なるほど。僕が頭と胴体、千代が右手、市谷が左手、ネフティスさんが腰と足になるんだ」
康陽が何を言っているのか私達にはわからない。狭い部屋にいるのに、外の景色も見える。私達魂装合体兵器というのに乗っていたんじゃないの?
「それが魂装合体兵器の本来の姿よ。今は四名だから本来の半分近くしか力も大きさもないわ」
錬生術師の話では、魂装合体兵器は粘体生命体の人形を中心に作っているという。ネバネバ、ブヨブヨしたゼリー状のアレだ。
「じゃあ試すよ。アスター、やってちょうだい」
錬生術師の指示で巨大な竜が迫って来た。魂装合体兵器が集まり倍の大きさになったようだけど、勝てるわけないよね。
「あの‥‥これ、どうやって動かすのかしら」
──消え入りそうな声で、ネフティスが呟いた。
私達は動けないまま巨大な竜の一撃で、またもふっ飛ばされ分解した。
相性の良いものが集まることで強くなるみたいだ。でも動かすのは頭担当の康陽ではなく、個々の乗り手らしい。




