私は右手になりました②
どうもこの異界の錬生術師とかいう怪しい女の誘いを受けて、康陽が自分から引き受けたらしい。
「霧の大陸、巨人巨獣の棲むミスティジア大陸の調査隊、それがあなたたちの任務よ」
「任務? 何で私達がそんな事を」
そもそも何でまた異世界にいるのか分からないのに。
「魔力に頼らない、巨大化に関する情報を集めたいのよ。自然と巨体を維持出来る環境なのか、生き物の進化体系なのか興味あるわよね」
「そんなの興味あるわけ‥‥」
「めっちゃ楽しみだよなあ」
私の言葉は、康陽に遮られた。知らない世界に呼ばれて、さらに知らない地域へ行けるわけない。
「私達はただ学生よ。もとの世界に帰して」
「無理よ。その吊りバカ男子君はわたしが呼んだから、帰してあげられるわ」
要約すると呼ばれたのは康陽だけ。でも康陽が我儘を言って、私をまたも巻き込んだ。紗弥香は無理矢理ついて来たらしい。
「二人分の活動魔力、きっちり働いて返してもらわないとね」
「勝手に呼んでおいて、何よソレ」
「私が二人分働くから千代だけ帰してもらいなよ」
「ダメだよ。千代がいないと合体出来ないだろ」
頭痛が痛いって言葉、こういう時に使うのかな。会話が噛み合わない。それに紗弥香がヤバい。
「それじゃ、手始めに巨大生物と手合わせしてみましょう」
「はぁ??」
私達を巨大な影が覆った。学校の体育館より大きいよね、アレ。
「不細工なドラゴンだな」
康陽が珍しく冷めた口調で呟く。日本の神話に出てくるような八俣の大蛇って感じだ。空飛んでるけど。
「身体は預かるから、さっさと自分の聖霊人形に乗り込んでね」
「何‥‥」
私達は意識を失った。気がつくと康陽と紗弥香が目の前に立っていた。ただ違和感がある。
「その身体なら魂装合体兵器に乗り込んで動けるわ」
「おぉ、本物の身体より軽いぞ」
康陽が跳ねてみせた。ジャンプ力だけで私や紗弥香の背より高く跳んでる。
「ヤッ君凄い!」
えっ? 何か紗弥香が茂木田君呼びを急に止めた? 異世界デビューなの、そうツッコミたかったけど、私の身体は鎮座する銀色の像へと吸い込まれるように吸収された。




