私は右手になりました①
────昔のアニメ特集で見たことはあった。車とか電車とかロボットが合体して巨大化するやつ。
強くなるかどうかでいうと、攻撃を受ける面積が無駄に広がるだけ。圧倒的に強くなった感じはしなかった。
パワーだって、出力を担っているパーツは合体しても同じはずだよ。加重され重くなった巨体を動かすのって、キツくないかなって思っていたのよ。
全機のパワーが集まったとしても、合体された機数分のパワーは変わらないわけでしょ。
合体する事でスーパーパワーが得られるならさ、始めから単機に搭載させた方が、軽くて的が小さい分強くない?
「やれやれ知ったかぶってわかってないな────千代は。合体ロボにはね、みんなが集まる事で上がる力っていうのがあるんだよ」
「はあっ? あんたこそ何もわかってないでしょ。この吊りバカキモダ!!」
「ちょっと止めなよ、二人とも。ヤッ君がそう言うのなら、きっと正しいんだよ」
「────どうして、紗弥香はこいつの事になると甘くなるのよ!」
◇
私は六沢 千代。高校生なった最初の文化祭、告白ゲームの演し物に参加した。そしてこの男、茂木田 康陽 に告白されたのだ。
──即刻振ってやった。別に嫌いだからじゃないよ。ただクラス一番の才媛で親友の市谷 紗弥香が、こいつの事が好きだと知っていたから……。
仕方ないので、クラスの女子もみんな協力してくれた。茂木田にあえて辛くあたり────紗弥香に助けさせるために。
それなのに……こいつと来たら鈍かった。そしてある日──隣のクラスで起きた異世界転移に便乗して、私を巻き込んだのだ。
茂木田のあだ名の「吊りバカ」はその時についた。茂木田は私を好きで、紗弥香は茂木田が好き。
────変な三角関係になってしまった矢先に……私たちは見覚えのある部屋に三人揃って立っていた。
茂木田と口論になった理由は、目の前にいるやる気のない異界の変な女のせいだ。どうして私や紗弥香、それに茂木田が異世界にいるのか説明もない。
「巨大合体人形作ったから、試しに動かしてみてくれるかしら」
「おぉ、リアルサイズのフィギュアか!」
「テンション高! って、ちょっと待って、意味がわからないよ」
「ねぇ、この人は誰? ここはどこなの?」
薄暗く妙に臭い、飾り気のない石畳の部屋。私たちの話など聞こえていないのか、謎の女に促されて私たちは外? に出る。
「ふおぉぉっーー!!」
茂木田がうるさい。でも気持ちはわかる。いやだから何で私たちここにいるの?
「これ……私たちだよね」
明らかに私達そっくりの顔や身体の人形が置いあったからだ。一応服は着てる。こちらの世界の物だとわかるのは、私と茂木田は二度目の来訪だからだ。
人形の後ろには、もっと大きな人形‥‥巨像があった。
「何なの、これ」
ワニのような顔と皮膚、ゴリラのような胸板のある身体と象の三倍はありそうな銀のような鉄の色をした像が四体もある。
「これはあなたたちの乗る、魂装合体兵器ドラファントよ」




