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私の一日

作者: てこ/ひかり

 メールボックスを開くと、迷惑メールが60通くらい来ていた。碌に中身も確認せずに、全てゴミ箱に放り込む。まだ頭の回転は鈍く、視界はぼんやりと霞んでいた。時計を見ると、明け方の4時を過ぎたところだった。


 そのまま迷惑ベッドに横になるも、寝付けないので、仕方なく迷惑冷蔵庫を開ける。迷惑水を取り出し、迷惑珈琲を淹れた。迷惑朝日が登る頃、家の前を迷惑隣人が迷惑犬の散歩をしながら通り過ぎていく。軽く迷惑会釈をすると、向こうも迷惑そうに頭を下げた。それからようやくのろのろと体を動かし、迷惑出勤の準備をする。キッチンでは妻が、迷惑パンを焼いてくれた。迷惑良い匂いだ。今日も迷惑良い一日の始まりだった。


 迷惑電車に乗り、しばらく迷惑窓の外を眺めていると、間違い電話がかかって来た。マナーモードにしておかなかったので、車内に場違いなメロディが響き渡る。冷や汗がどっと噴き出して来た。慌てて電話を切り、気まずかったので、急いで間違い新聞を広げ、顔を埋める。


 間違い一面と、間違いテレビ欄、それから間違い星占いにざっと目を通す。今日も我が国は間違いだらけだ。あとは、興味もない、間違い経済面を読んでいるフリをする。昨今の間違い経済には全く興味がなかった。間違い株を購入していればまだしも、一度痛い目に遭って以来、間違い投資の類には一切手を出さないと決めた。だから、間違い平均株価がいくらだろうが、間違い神経をすり減らさなくて良い。間違っているかもしれないが、精神面の安寧をもたらしているのは間違いない。


 間違い四コマの間違ったオチに大笑いしているうちに、間違い会社に着いた。間違えて部長の席に座り、パソコンを開き、全てのデータを間違ったものに書き換える。これで部長は、今日一日仕事にならないだろう。意気揚々と自分の席に行くと、先に出社していた同僚が、私のパソコンに同じことをしていた。おかげで今週の間違い商談は全てパーだ。どうか間違いであって欲しかった。だが、もう取り返しもつかないので、パソコンを窓から放り投げる。少し残念だが、間違いなく気分は良かった。


 隣の会社の社長が、間違えてうちに出社して来たので、そのまま朝礼となり、社交辞令の挨拶を交わす。会社のブースは名刺交換の列でいっぱいになった。お辞儀辞令をし、笑顔辞令を浮かべながら、最近話題のニュース辞令について談笑辞令したりする。隣の社長は気さく辞令な方だった。私がネクタイ辞令していることを見咎め、フランク辞令にするように言い渡した。とはいえ、その日は一日仕事辞令にならなかったので、私たちは靴下を丸めて、床辞令でサッカー辞令をしたりして過ごした。定時辞令になり、私たちは帰宅辞令した。


 家に帰ると、中はがらんとしていた。妻はまだ外らしい。PTAだかSDGsだかの会合に出ているのだろう。昨年頃から妻のその辺に対する意識はかなり高くなり、まるでADSLがURNかCRMにされたかのようだった。思えばVARも、そのL2TPからQOLされはじめ、TPOはNATO中心となった。もちろんどんなHTMLでも、OECDにはUNHCRなのだが、さすがに毎日RDDだと私もURLLCがPPPoEしてしまう。IOC、IOC。余談だが、最近妻に「VDSL、LGBTsWBGT」と言ったら、「RCEP、PDFOLT」と返された。全く愉快な話である。

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[良い点] 最初は”迷惑”という言葉、次は”間違い”、最後はアルファベットの略字で、ナンセンスだけど部長のPCに”間違いファイル”を入れたのが、本人には間違いじゃないとこが、笑えました。 [一言] 最…
[気になる点] 考え方が終わっている。こんなことまで想像出来て多分作者の人、普通にすごいかも。
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