魔界と悪魔と私と③
「あははははーっ!
うんうん、そうなんだー!」
うん。
もちろん、この悪魔たちが何を話してるのかなんて、さっぱり分かんないよ。
分かんないけど、とりあえず笑顔で乗り切ろう大作戦実行中です。
外国人相手でも、笑顔で何とかなったし!
あとは身振り手振りで何とかする!
1個問題があるとすれば、相手の顔がまったく見れないってことかな。
だから表情がぜんぜん分かんない。
てか、表情なんて見たら死ぬ自信ある。
私が寝てたところは2階だったみたいで、今は1階に降りて、リビングみたいな所の、テーブルセットみたいな所で、椅子みたいなのに座ってる。
うわーお。
なんかもう一人増えたよ。
紹介チックなジェスチャーしたかなって思ったら、障子みたいなのを開けて悪魔がもう一人出てきましたよ。
さっきの悪魔はいかにもって感じの悪魔で、赤黒い肌に痩せ細った体。いかにもな翼が生えてて、たぶん角が生えてる感じ。
今度の悪魔は、子供の時に見た妖怪図鑑の、海坊主ってやつに似てる。
黒くてどろどろしてるやつの塊みたいな感じだから、正直、どこからが顔なのかあんま分かんないけど、こっから先は見ちゃダメ!って何となく思うから、そっからが顔なのかな。
あ、私の隣に座るんですね。
4人掛けのテーブルなのに、私の隣ですか。そうですか。
ぽん
あ、肩に手を置かないでもらえますか。
けっこう気持ち悪い感触なんですよね。
ていうか、それ手なんですか。
手、あったんですか。
あ、頭ぽんぽんはやめてもらっていいですか。
お風呂入れてないから、せめて汚したくないんですが。
あ、ちょっと嫌がったらどかしてくれた。
しかも、ちょっとシュンとしてない?
なんか、すいません。
一度、席を外した悪魔姿の悪魔が、お盆みたいなのにお茶みたいなのを持ってきてくれた。
あ、喉乾いてたんだー。
助かるー。
あ、うん。
分かってたよ。
分かってたけど、想像以上のビジュアルだね。
灰色と紫を混ぜたみたいな色で、ぼこぼこなってて、目玉みたいなの浮いてない?
え?
これを飲めと?
隣の海坊主さん。めっちゃ美味しそうに飲みますね。
もう、からんて言ってる。
ほら、あなたも。みたいなジェスチャーやめてもらえませんか?
どうしよ。
ハードルめっちゃ高いんですけど。
えーい!
女は度胸!
だいぶ悩んでから、私は思いきってその灰紫のお茶を一口舐めてみた。
あ、意外とおいしーやーん!
予想に反して冷たくて美味しいお茶で、私は残りもごくごく飲んで、あっという間に飲み干してしまった。
あ、目玉は飲んでないよ。
さすがにしんどい。
海坊主さんも残してるし、たぶん氷的な役割なのかな?
あ、また頭に手を。
なんか撫でられてます?
心なしか、微笑んでるような気もする。
悪魔風悪魔さんはお茶のおかわりを持ってきてくれた。
なんだか、頭にあるどろどろの手が、少しだけ嫌じゃないかも。
うん。少しだけね。