魔界と悪魔と私と②
「………気持ち悪い天井」
目が覚めて最初に見えたのは、見覚えなんてあるはずもない、おどろおどろしい天井だった。
いや、見覚えはあったか。
さっきまで見てた風景とおんなじやつだ。
赤黒くて、どろどろしてて、蠢いてて、この天井はなんか、目がいっぱいついてて、めっちゃこっち見てくる。
「夢じゃなかったか」
ほんとに一瞬だけ期待したんだけど、やっぱりそんなに甘くないみたい。
「どこだろ、ここ?」
私はキョロキョロと周りを見回してみた。
まず、自分が寝ていたのが布団なのかどうかさえ疑わしいものだったけど、確かに寝てたんだから布団なんだと思おう。
どろどろしてるくせに、服にはそういうのが一切ついてないのが不思議だった。
床も壁も、天井と同じようなものでできてた。
床は、横線みたいなのが入ってる。
畳のつもりなのかな。
側面は2辺が壁で、あとは、扉と窓。
扉は区切りがついてるし、生えてる手みたいなのが取っ手なんだと思う。
窓はたぶん障子みたいのが開けられてて、大きく口を開けた何かの中が半透明になってて、外が見えた。
窓の外には、さっき見た森が風に揺れながら、オオオオーッてうめき声をあげてた。
「なんか、ちょっと見慣れてきたなー」
とりあえず地面とか壁とかは、害はないみたいだ。
それなら、こういうデザインなんだと思うことにしよう。
そうじゃなきゃやってけない。
「それにしても、」
私はどうしてここに?
森の手前で気を失ったんだよね。
あの悪魔は?
あいつが、私をここに?
どうして?
布団に寝かせられてるの?
寝かせてくれた?
そんなまさかね。
分かんないな。
そんなことを考えてたら、
コンコン
部屋をノックする音が聞こえた。
「はーい」
あ、やば。
つい返事しちゃった。
ガチャ
「ぎゃっ!」
思わず変な声出た。
あいつだ!
あのすごい怖い顔してた悪魔!
やばっ!
え?
逃げる?
「娥楙鄰靈爬蟇娜」
なんて?
何か喋ったけど、なんて言ってんのかぜんぜん分かんない。
てか、声怖すぎる!
耳に指突っ込んで鼓膜破って聞こえなくしたい!
いや、それも怖いから無理!
でも、そんぐらいヤバい!
あー、まだなんか言ってる。
ぜんぜん分かんないんだって。
こっちの言葉も通じてないみたい。
顔見れないけど、お互いに首傾げてるの分かるよ。
ははっ。
なんかおもしろっ。
ちょっとだけ怖くないかも。
めっちゃ怖いけど。
でも何か、すごい身の危険?みたいなのは感じないかも。
話は通じないけど、ちょっとでも何か分かれば。
よし。
こうなったら、JKのコミュ力見せつけてやるしかない!
あ、でもごめん。
やっぱ顔は怖いから見れないや。