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2.5-02  じぇらじぇらじぇら2

 さくさくと草の上を歩く音。

 時たま地面に落ちた石を蹴る音や、牛や羊の鳴き声が重なるも、それ以上の騒音が混じることは無い。

 メリパルカという村は、羊毛の加工品に力を入れている農村である。

 がしかし、目視した限りでは牛と羊は半々に点在しているようだ。力を入れているだけであって、それに特化しているわけではないのだろう、とヴァイサーは推測する。


 二日前に村の治療院に訪れて気絶したヴァイサーにとって、メリパルカという村をきちんと歩くのは今回が初めてであった。

 初めて訪れたはずなのに、どこか懐かしい気分に浸りながら、疎らに家々が立ち並ぶ土道を歩く。

 懐かしさの原因は、おそらくは農村である故郷ウレイブに似ているからだろう。主に田舎という点で。

 ぼんやりと歩きながら、隣村のグラジークもウレイブのような町並みだったことを追想する。


「けど、グラジークよりはのんびりだよねえ」

「うん。なんにもないからね」


 ヴァイサーとセセルカは、特に行き先を決めることなく、ふらりふらりと村内を歩いていた。

 聞くところによると、セセルカとソサーカの本当の住居はメリパルカにあるらしい。

 しかしながら、普段はキュオンにある宿舎で交代勤務のために待機していたため、家に戻るのは稀だったのだとか。

 結果的に久しぶりの帰宅となったセセルカだが、兄のいない家に居座り続けても仕方ない、と何だかんだ理由をつけて病室に入り浸っているのが現状である。


 そんなセセルカを連れ出したヴァイサーだが、二人きりでセセルカ宅に訪問するのは流石に気が引けてしまったため、ひとまず適当にふらつくことにしたのだ。


「ね、ヴァイサー」

「うん?」

「……あの。あんまり、頑張らなくていいよ?」


 ヴァイサーのことを見ずに、ぽつりと呟くセセルカ。

 長距離歩くことで疲弊する可能性を案じているのだろうか、とヴァイサーは小首を傾げる。

 けれどもセセルカはそれ以上言葉を発することなく、ぴょんぴょんと跳ねるようにヴァイサーの隣を歩く。

 普通に歩くより鍛えられるでしょ、とのことだが、逆につんのめって倒れないか心配である。


 リズミカルに前進する少女を興味深く視界に入れたヴァイサーは、空白になった隣の空間へ視線を戻す。

 柵の向こうで羊が草を食べている様子が見えた。

 心做しか脳天気な光景に見える。


 ヴァイサーとセセルカはあまり会話をせずに歩いていた。

 もともと散歩をするという体で出かけたので、その点で見れば何ら不自然ではないのだが、不意に声をかけてきた少女に、ヴァイサーは一抹の不安を覚え、駆け足でセセルカの隣に並ぶ。


「セセルカ。もしかして疲れちゃった?」

「え……」


 ぽかんと上を向いたセセルカの額に、ヴァイサーの手が当てられる。

 手の甲から伝わるセセルカの体温は平常だ。

 ヴァイサーは高体温の自覚があるので、己のそれを上回らないことに安堵する。


 その間、セセルカは身体をガチガチに固めて静止していたが、ヴァイサーの手が離れると同時に糸が切れたようにふらついた。


「おっと」

「ひゃっ」


 後ろに倒れかかったセセルカを片腕で抱き寄せるヴァイサー。

 少女を左腕で抱きしめたあと、右手のひらを開いたり閉じたりして己の身体が正常に動くことを確認する。


 それから、セセルカの安否を確認しようと胸中の少女へ視線を移したところ。


「…………」


 少女の耳が赤くなっていることに気づいたヴァイサーは固まった。


 ヴァイサーは鈍感だったが、想像力の働く鈍感だった。

 故にセセルカは自分に少なからず気があることを承知で、それをどうにか恋情に近づけることが目下の課題だと認識していた。

 無関心な相手に「かっこいい」なんて言うはずがないからだ。


 けれども、思い返してみればセセルカは恋を知らないと言ったのであり、言い換えれば恋に気づいていない可能性があるのだ。

 流れでセセルカを抱きしめてしまったヴァイサーは、この状況こそ、彼女を口説く良い機会なのではないかと悟った。

 なれば、今こそセセルカをときめかせようではないか、と心の中で拳を握る。


 残念ながら、抱きしめられた時点でセセルカがときめいていることには気づいていなかった。

 そして、どうにかしてせセルカにキャーキャー言ってもらおうかと思案するべく生まれた沈黙が、セセルカの緊張をさらに高めていることにも気づいていなかった。

 ヴァイサーは目の前の事象にひたすら疎い鈍感だったのである。


 少しだけ考えを巡らせたヴァイサーは、突如、お留守になっていた右腕をセセルカの背中に回して両手で少女を抱擁する。

 セセルカはびくりと肩を震わせた。


「ヴァ、ヴァイサー……?」

「セセルカ」

「え、あ、はいっ」

「僕、今すごくしあわ……」

「あのー。お熱いところ申し訳ないんスけど」


 第三者の声を聞き入れた美少年は、咄嗟に抱擁を解き、彼女の前へ盾になるように立つ。

 近くには羊しかいないことを確認していたヴァイサーは、家の隙間からひょっこり現れた少年を目に入れた。


 対するセセルカは、小さく、あ、と声を漏らす。


「ポルボント?」

「セセルカじゃーん。なぜにメルパルカに……あ、着替え取りに来たカンジ?」

「…………誰」


 腕章を身につけた少年は、気だるそうに首へ手を当てた。

 年齢はヴァイサーより少し上だろうか。

 砕けた口調と乱れた髪から、怠惰な性格であることは推測出来る。

 斜め掛けの使い古したカバンは、ソサーカが所持していたものに酷似しており、よく見れば少年の腕章と同じ紋様が刻まれていた。


 セセルカが名前を知っていたこと、そしてソサーカと揃いのカバンを所持していること。

 浅くセセルカたちの半生を聴いたヴァイサーは、少年ポルボントの正体にぼんやりと察しがつき、肩の力を抜いた。


「どもー。商業組合のポルボントっス。ホントは書類作業やってる人でーす」





 組合は万年人手不足なのだ、とポルボントは力強く語った。

 成り行きで、馬に干し草をあげるポルボントの愚痴を聞く羽目になったヴァイサーは、適当に相槌を打つ。

 隣が愛しの天然少女から見知らぬボサボサ男に変わったことに対しては、少なからず落胆していた。


 主に店店の支援をする商業組合だが、その支援部門のひとつが物資の運送である。

 店を監査をする部門に比べると、知識を要しないものの、馬という財産を扱いながら荷運びをする運送代行業務は有り体に言うと人気がないらしい。

 少なくともポルボントたちが所属している、王都北東を担当している支部では希望者が極端に少ないのだとか。


「……だからセセルカに仕事を手伝わせてるの?」

「人聞きの悪い。経験者に手解きしてもらってんスよ。効率考えりゃ妥当な対応っしょ」


 メリパルカの馬車置き場にて、けろりとした顔で職務放棄を正当化するポルボント。

 ここは馬小屋と荷台小屋の二つが背を向けるように建てられた、小さな家屋である。

 ポルボントは顔見知りのセセルカを見つけるや否や、荷台の荷物をどこそこに届けてと、軽い調子で己の仕事を明け渡した。


 当然ヴァイサーはそれを咎めたものの、なんだか嬉しそうな顔をしたセセルカは二つ返事で了承し、メリパルカのどこかへ駆けていってしまったのだ。

 同じ支部にいたのだというから、ポルボントとセセルカとは多少親しい間柄だったのかもしれない。しかし、彼女に想いを寄せるヴァイサーはあまり良い気分ではなかった。


「でもね、せセルカは魔王の被害にも遭ってるから疲れてると思うんだ」

「まーた魔王っスか。去年もいたなあ、キャウルズの近くに。そんでセセルカは勇者に求婚されてたし」

「えっ」


 ポルボントの聞き捨てならない発言に、思わず小屋の支柱へ肩をぶつけるヴァイサー。

 唐突に不機嫌そうな美少年が食いついてきたことに驚いたポルボントは、目を細めてニヤリと笑う。


「なるほど、つまり奴さんもセセルカに気がある、と。さーすが、あの親にしてこの子ありってか?」

「……セセルカとソサーカの親のこと、知ってるの?」

「生憎と人のハナシをべらべら喋る性格じゃないスけどね。でもあの子はやめといたほうがいいっスよ?」


 干し草をくるくる回しながら得意げな顔で語るポルボント。

 セセルカに仕事を押し付けて休憩している時点で、この男は彼女を都合の良い道具としか見ていないことはヴァイサーでも分かった。


 睨みつけるようなヴァイサーの視線に動じることなく、ポルボントは馬に餌を与えながら続ける。


「セセルカってさ、バカじゃん。ちょっとだけ話すなら面白いけど、長くいると疲れるタイプっスよ」

「それは経験談かな?」

「おれぁそこまで深入りしてないっスよ。でも、みんなそうだった。勝手に期待して勝手に疲れて離れてたスね」


 セセルカが少し――否、かなりのほほんとした性格であることはヴァイサーも把握している。

 が、それよりなにより、彼女の性格に惹かれた男が他にもいたという事実が、ヴァイサーの脳天に非常に大きなダメージを与えていた。


 セセルカはモテるらしい。

 薄々感じていたが、その事実にヴァイサーは焦りを抱いた。

 ポルボントの話や、セセルカの態度を見るからに今まで恋仲に発展した例はないと思われるが、近く彼女と離れる予定のヴァイサーにとってはこれまでに無い爆撃だった。

 このままでは彼女は誰かにとられてしまうかもしれない。

 仮に婚約が成就しても、離れているヴァイサーより近くの優男に傾く可能性はゼロではない。

 考えまいとしていたことが、もくもくと黒い煙のように湧き上がってヴァイサーの思考を支配していく。


「ヴァイサー? 大丈夫? 具合悪い?」

「えあ!?」


 唐突に、くりくりした瞳に除きこまれたヴァイサーは、気が抜けて尻もちをつく。

 いつの間にかセセルカが戻ってきていたらしい。

 そんなことに気づかないくらいショックを受けていた事実に、情けないと拳を握る。


「ごめんね、アタシがちゃんと見てなかったから。やっぱりムリしてたんだよね。ごめんね、ヴァイサー」

「無理なんかしてないって! 僕は君と歩きたかっただけなんだから!」

「……それ、ヴァイサーがアタシのダンナさんになるって言ったからでしょ?」

「え?」


 ちょこんと、ヴァイサーの左隣に座ったセセルカは小さく見えた。

 膝を抱えて小さく丸まっているのは事実だが、覇気がない。


 もしゃもしゃと咀嚼音が聞こえるあたり、ポルボントは依然、馬に餌をあげているらしい。

 口がよく回る男だったので、茶々を入れてこないことに疑問を抱きつつ、無言であることに感謝する。


「あのね。ヴァイサー」

「は、はい」

「アタシのこと、気遣わなくていいよ? 大丈夫だよ、ムリして頑張らなくても」


 ヴァイサーは空いた口が塞がらなかった。

 セセルカは本気で言っているのだ。

 自らに求婚したヴァイサーは、その体裁を保とうとしている。寂しそうなセセルカのために、わざわざ二人きりになって恋人の真似事に励んでいるのだと。


「アタシね、バカだから。みんな、バカだから離れてっちゃうの。一緒に居てくれたのは兄者だけだったの」

「僕も、セセルカに失望して離れるって思ってるの?」

「だってアタシ、ヴァイサーに傍にいてもらえる何かなんて持ってないもん……っ」

「僕だって……」

「違うもん! ヴァイサーはかっこいいもん! 強いもん、勇者だもん! だから、アタシなんかじゃなくたって、いいんだもん!」


 膝を抱えながら涙声になるセセルカ。

 ヴァイサーは鈍感である。

 セセルカがどうして泣いているのか、本質的なところが理解出来ていない。

 ただ、彼女の根っこはどうしようもなく自虐的で、今はそれが爆発しているのだということは分かった。


 きっとその自虐さは、彼女の頭が足りないことに起因しているのかもしれない。

 約立たずと自らを評するセセルカは、ポルボントに仕事を与えられた時、とても嬉しそうにしていた。

 要領のなさで人から煙たがられていた彼女は、たとえ利用されているのだとしても、人から必要とされることを喜ぶのだ。

 だから、ヴァイサーから理由もなく散歩に誘われた時、得体の知れない不安に駆られたのだろう。

 役目もなく、仕事もなく、ただ共に歩くだけ。

 損得勘定のない関わりは彼女にとって、不可解なものなのだ。


「そんなこと言わないでよ」


 肩をひくつかせる少女に向かって呟く。

 ぶるる、と馬が鼻を鳴らす音がした。


 薄暗い屋根の下でヴァイサーは、隣に座る少女の手を掴む。

 

「僕、一緒にいるのはセセルカがいいの」

「でもヴァイサー、いなくなっちゃうもん」

「戻ってきたら一緒に住もう。それまではちょっと我慢してもらうことになるけど……」

「帰ってくるまでに、他の子のダンナさんになっちゃうかもだもん」

「ならないっ、なりません! 僕はセセルカ一筋なんだからっ!」


 延々と卑屈な言葉を語るセセルカの肩を無理やり上げて、目を見つめるヴァイサー。

 目を潤ませる少女は、ほんのりと頬を染めた。

 振り払われるかと思った腕はそのままで、二人は暫く黙って見つめ合う。


 何も語らない時間がもどかしくなったヴァイサーは、そっと少女の頬に片手を添える。それからもう片手を頬に添え、間近でセセルカを凝視する。

 抵抗は、されなかった。


「つーかもう、セセルカもそいつのこと好きなんじゃん?」

「ひゃう!?」


 突然の部外者の声に驚いて仰け反ったセセルカは、馬小屋の柵に頭をぶつける。

 ガゴンと良い音が鳴り、ヴァイサーは慌てて少女を抱き起こす。頭を撫で、声をかけるもセセルカは顔を赤くするばかりであった。


 セセルカを抱き寄せたヴァイサーは、当然のように背後を睨む。

 片足と片腕に体重をかけて、気だるそうに立つポルボントはわざとらしく欠伸をした。

 ぶるると馬もそれに合わせて鼻を鳴らす。


「アンタもさー、なんで分かんねえのかな。セセルカは嫉妬してるんだから、おちょくるとか甘い言葉かけるとかすればいいんスよ」

「せ、セセルカ、嫉妬してたの!?」

「し、嫉妬って何!?」


 そこからかーと呆れたようにぼやくポルボント。

 脳天気な二人は、そのどちらも嫉妬と分かっていなかったらしい。


 嫉妬に喜ぶヴァイサーと嫉妬がピンと来ないセセルカは、オウム返しのような会話を開始した。

 進展のない鈍感問答に痺れを切らしたポルボントは、ようやく手から枯れ草を離して二人の前にしゃがみこむ。


「いいっスか。おたくは勇者で近々旅に出るんしょ? だもんで、セセルカはこの先アンタと出会うであろう女の子を想像して、先回りして拗ねてんの。アタシの方が先に好きになったのにずるい! ってカンジに」

「ずるいとかじゃないもん。ホントのことだもん。ヴァイサーにはアタシより他の子の方が……」

「セセルカあ! ダメだ泣かないで! 大好きだから! 僕、君以外の子は眼中にないからあ!」


 膝を折って律儀にセセルカの心情を解説し始めたポルボント。

 けれども一度火がついてしまったセセルカは、話をするにつれてめそめそと泣き出し、傍らのヴァイサーがそれを抱きしめる事態となった。


 ヴァイサーがよしよしと頭を撫でれば、少女は鼻をすすりながらひたりと擦り寄る。

 ポルボントの教えから、セセルカは自らがヴァイサーに抱く感情をぼんやりと理解したようで、恐る恐るではあるがヴァイサーに抱きつき返すようになった。

 そんな甘えにヴァイサーは胸がぎゅうと締め付けられる思いになりながらも、必死に耐え抜き、精一杯の優しい力で少女を抱擁する。


「っし。じゃー良い言葉をおしえてやんよ、セセルカ。いーか、ちゃんと復唱すんだぞ?」

「フクショー」

「ポルボントと同じ言葉を言うの」

「分かった」


 ぴったりとヴァイサーにひっついたまま、セセルカは小さく頷く。

 訝しげなヴァイサーの視線に応えるかのようにポルボントは口を開いた。


「ヴァイサー愛してる。今夜は一緒に寝たい」

「却下」

「違う違う。復唱すんのはセセルカっスよ?」


 ぽかんとしたセセルカは言葉の意味を分かっていないらしい。

 とはいえ、ヴァイサーは仕組まれたとしても、その言葉を聴いたら嬉しくなってしまう自覚はあったので、なんてことを提案してくれたんだとポルボントを睨みつける。


 賑やかな会話に加わるように馬がフン、と鼻を鳴らした。

 それに続いてセセルカがぼそりと呟く。


「ヴァイ、サー。あいしてる……」

「……………………」


 呟いた直後、みるみる赤くなるセセルカを見て、ポルボントはニヤニヤと目を細める。

 対するヴァイサーはあまりの出来事に硬直した。

 沈黙する美少年に圧を感じたのか、セセルカもまた言葉を無くしてただひたすらにヴァイサーに擦り寄る。

 そのまま暫く沈黙が続いた。


 次なるヴァイサーの言葉を待つポルボントは、余りにも長い沈黙に耐えかねてヴァイサーの様子を伺う。

 かっと開いた目は虚ろである。

 目の前で手を振っても微動だにしなかった。

 つまるところヴァイサーは気絶したらしい。


 ポルボントがそれを伝えると、セセルカは眉を下げて口をとんがらせた。

 形式的とはいえ、愛の言葉を告げたというのに返事も何もないからだ。


「けど、自覚したっしょ? 自分の気持ちは」

「……たぶん? した、のかな?」


 不満そうにぶつぶつ呟くセセルカだが、満更でもない様子で、口角が若干上がっている。

 少女の変化は見なかったことにして、ポルボントは気絶した美少年へ視線を移す。


 このアホ加減はたしかにセセルカと馬が合いそうだなと判断して、じっとその横顔を見つめてみる。

 中性的で憎たらしいほど整っている。

 が、意識が戻る気配はまるで無い。

 ぶるると馬が鼻を鳴らしても、ヴァイサーは微動だにしなかった。


 反応のなさに興味を失ったポルボントは、ボサボサ頭をかきわけ、己の耳に触れてとあることを思い出す。


「そーいやセセルカ。共鳴盤ってまだ持ってるカンジ?」

「キョーメーバン? 組合に返してないからまだあるよ?」


 セセルカはぱちくりと目を瞬かせた後、小さく頷く。

 その返事を聞いたポルボントは、再びニヤニヤと目を細めた。


「アホはいじってなんぼだかんな。ヒヒッ」


 意地の悪い笑みを浮かべる少年は、ぽかんとした少女にある作戦を話す。

 それを耳に入れたセセルカは、無言で拳を上げ、作戦への加担を主張した。きらきら輝く瞳は悪童のようであった。

 

 かくして少女はゆっくり美少年の腕を解き、一目散に駆けて行ったのだった。

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