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序章01 「非日常」

皆様初めまして邦継です。


作品タイトルのあらすじにも書かせていただいたのですが、数年前にこの「小説家になろう」さんで作品を執筆させていただいていました。


しかし、創作意欲の低下や家庭環境の変化などで挫折を経験し、しばらく離れていました。


最近になって創作意欲や余裕が生まれたこともあり、凝りもせずまた作品を作ることにいたしました。


最低週一を目標に無理のない範囲で執筆していきますので、どうか末永くお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 


「よく見ておけ、これが俺たちが守る世界だ」



 そう言った父の顔をよく覚えている。


 人の手が入っていない森の中、そこは何百年……もしくは何千年もの間を生きた木々たちが鎮座し、草花は咲き乱れている。

 花の香りが鼻孔をくすぐり、そよ風が頬をなでる。

 とても壮大で幻想的で、しかし綺麗で恐れを抱いたことを覚えている。

 森の中心にはこじんまりとしたそれでも神聖さを感じさせる社の前で、神々に捧げる舞を踊っている母の姿がある。


 今日は父たちの仕事を見物しに来た。

 年に一度の「奉納の舞(ほうのうのまい)」の日。

 5歳になった俺に、両親たちは自分たちの仕事ぶりを自慢したかったのだろう。

 いつもはキリッっとした感じの顔がデフォルトの父が、母の舞を見て目じりを緩ませていたのを見て、幼いながらに呆れたのを覚えている。

 ……まぁ、いい年してラブラブな両親を見て、よくもまぁ飽きないなといまだに思うのだが。


 その話はまた今度にして……。

 なぜ母が舞を踊っているかというと、代々うちの家系は神主や巫女などの神道(しんとう)にまつわる職に就いている者を輩出しているらしく、例にもれず母もそうだ。

 母は、巫女としてこの「奉納の舞」を舞っている。

 年に一度ということもあって大々的にやるのだが、いかんせん場所が場所だ。

 深い深い森の中ということもあって、参列者は俺たち家族とその親戚でこの社の管理者である叔父夫婦と()()()()()()

 ……総理大臣とかそういう人もいる

 幼いころはわからなかったのだが、今思えば5歳児が参加できるような場所ではなかったと思う。


 舞が終わりに近づくにつれて、母の周りは光があふれてくる。

 ……比喩的な表現ではなく、文字通り光っているのだ。

 淡いその光は赤いものもあれば青いものもあって、様々な色の光が母と一緒に舞を踊っているかのようにふわふわとしかし、規則的に漂っている。


 これが俺の家系がいう所の『神』といわれるものだ。

 神を楽しませて一年間の豊作と安寧を祈願する。それがこの祭事の主な理由だ。

 その舞を邪魔されないように守るのが今回の父の……『陰陽師(おんみょうじ)』である伊之宮(いのみや)宗清(そうせい)の仕事だ。



「……さて、俺はそろそろ仕事にかかるとするか」



 そういう父は先ほどのだらしなく母を見ていた顔ではなく、キリッとした軍人のような顔になる。

 母が舞を踊っている社の周りには、しめ縄をした木々で四角形の結界を張っている

 それぞれの木々は東西南北に面しており、それぞれの木々にはしめ縄の他に、東に青龍(せいりゅう)・南に朱雀(すざく)・西に白虎(びゃっこ)・北に玄武(げんぶ)を模した式神(しきがみ)を張り付けている。

 四聖獣を模した式神と方角を結果に取り込むことによって、より強固な結界を貼る伊之宮家の秘術だ。

 今その結界の外側には、荒ぶる神々『荒神(あらがみ)』と呼ばれる妖怪たちがひしめいている。


 ――他者を食らい自分の力にする――


 それが荒神と呼ばれる者たちの本質だ。

 世界の理を呪符(じゅふ)詠唱(えいしょう)によって利用する陰陽師とは違い、荒神たちは世界の理そのものを食らい自分の力に変換するという全くと言っていいほど正反対の存在である。


 今母が舞っている周りには神々が漂っている状況だ。

 神々は世界の理そのものであり、すべての物質に神々は宿っていると陰陽道に身を置く者たちは考えているし、実際その通りだ。

 荒神たちは物質に宿っている神々を食らい、今回のように祭事中に現れる神々本体も喰らいに来る。

 ……それは俺たち人間も例外ではない。

 神々と人々、この世界を守るために日夜戦っているのが陰陽師という職業だ。

 父は陰陽師として、そして一人の父親として家族である母を守りに戦いに赴く。



五行(ごぎょう)思想(しそう)、土と金を持って行使する。『土生金(どしょうきん)――剣形成(つるぎけいせい)――』」



 父が呪符をピンと立てた人差し指と中指で支え、胸の前に持ち言葉を発するとその呪符が剣に代わる。



「じゃ、行ってくる」



 剣を持っていない左手で俺の頭をなでると、父はそのまま結界の外へと出て行った。

 そこから先は、父の姿を追うのに必死になっていたのを覚えている。

 父がひと振りするごとに、荒神たちは細切れになっていく。

 負けじと人の倍ぐらいありそうな鬼のような荒神が父に襲い掛かるが、鼻歌交じりに父は鬼の片腕を切り飛ばし、頭をも切り飛ばす。

 狼のような姿の荒神数匹がとびかかってきたときには、新たに呪符を使い左手に籠手を出現させて見事な体術で応戦したりと、まさに一騎当千の活躍をしていた。


 ……俺はその姿に強いあこがれを抱いたし、母を守るその父の姿にいたく見入った。


 そのあとはあまりの興奮に細々としたことは覚えてはいないが、父がひと仕事を終えて戻ってきたときに、自分が言った言葉は鮮明に覚えている。



「お父さん! ――俺お父さんみたいな陰陽師になりたい!!」



 そういった俺に、父は満面の笑みで頭をなでてくれた。

作品の評価、ご感想お待ちしております。


今後の作者の励みになりますので何卒よろしくお願いいたします。

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