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『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』  作者: もんじゃ
『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』
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第8話


 銀行のATMで預金をおろす。ゴールデンウィーク前にはおろしておきたかったのだ。


 「蛍、お待たせ」


 「……いえ、どうしましょう?先輩も本屋さんに行きますか?」


 「そうだな、面白そうなのあれば買おうかな」


 そう言って二人で本屋に行く、俺は結局ぶらぶらと店内を眺めて終わったが蛍は少女漫画の新刊を購入したようだ。


 「……その漫画を集めてるのか?」


 「……そうです、先輩は少女漫画とかは読まないですよね?」


 「……あー、まぁ読まないな。でも男だからって少女漫画に無関係って訳じゃないよな……」


 昔、○塚先生や○塚先生みたいな大御所の漫画家さんは少女漫画も描いていたんだよなとか漫画の話をしながら二人で歩いていたら


 「……先輩!」


 蛍が指差す先にはうちの学生二人が男達に絡まれている様子が見えた。あの二人は……


 「……昼間の二人か?」


 昼休みに同じ教室で食べてた男女、男を後ろに庇い女が前にでて若い男達と対峙している。


 「……仕方ない。蛍、ちょっと鞄もって隠れてろ」


 荷物を蛍に預け争いの中に向かう。


 「……どうしたんだ?」


 うちの学生の二人に話し掛ける。そうしたら「あっ、昼間の先輩……」って声が聞こえて


 「……この人達が自分からぶつかってきたのにジュースが掛かったからクリーニング代払えっていうんです!」


 女生徒の方が気が強いのか大きな声で言うと男達は「なんだと、てめえ!」と言い返す。


 「……なぁ、この子達は入学したばかりの学生なんだ、勘弁してやってくれないか?」


 俺が男達に交渉し始めたら「なんだてめえは横から、じゃ、てめえが払うのか!?」と俺に矛先が向かう。


 そうして連中が俺に注目し始めたら……中の一人が俺の顔を見て


 「……あれ!?もしかして……こいつ、いや、この人は榊さんの……」


 一人の男が何かに気づいたのかこそこそ仲間と相談し始めて……


 「……いや、すみません。こちらの気のせいでした!」


 丁寧に謝り始め逃げるように消えていった。俺の後ろにいた二人はなんだろう?って顔をしていたが……まぁいつものことだ。


 「……大丈夫だったか?まぁ、ああいうのもいるから気をつけな」


 そう言うと二人は慌ててお礼を言っていたが「じゃあな」と言って蛍の所に向かう。


 「……先輩っ」


 なんだろう、離れて見ていたはずの蛍の脚が産まれたての小鹿のように震えているし、表情は誰よりも一番泣きそうになっていた。


 「……いや、俺は大丈夫だからな?」


 心配していてくれたんだろうと蛍の頭を撫で「さぁ、帰ろう」と言った。

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