第6話
放課後、昼休みと同じように迎えに行くと蛍の机はクラスメートに囲まれていた。
「蛍、帰るぞ」
そう俺が声をかけたら驚いて蜘蛛の子を散らす様に離れていったクラスメートを置き去りに蛍はカバンを掴んでこちらに寄ってきた。
「帰ろう」
「……はい」
それだけの会話をして二人で下校した。
「……囲まれていたが大丈夫だったか?」
「……はい、なんで先輩に昼休み呼び出されたんだ?って聞かれました」
「……まぁ、別の噂もたつかもしれないなぁ……それはそれで困るかもしれないが……いじめは大丈夫だったか?」
「……はい、今日はわざと身体をぶつけてきたりとか、物を隠されたりしませんでした」
「……そうか」
いつもはそんなことをされていたのか、とりあえず今日は上手くいったようで良かったなと……少し物思いに耽っていたら珍しく蛍の方から話しかけてきた。
「……先輩」
「……どうした?」
「……先輩はどうして私の為にこんなに良くしてくれるのですか?」
蛍は不思議そうに聞いてくる……
……どうしてか。死に戻ったから知っている蛍の不幸な未来を変えたいから……なんて言えない、頭のおかしい奴だと思われるな。
でも……以前も蛍に手をさしのべたんだよな……どうしてなんだろう。
「……先輩、言いたくないなら大丈夫ですから……」
「……いや、少し考えていただけだ。そうだな……よってたかっていじめをする奴等が嫌だったから……?自己投影、感情移入……ううん……」
途中まで言いかけて……やはり上手く言語化するには難しい複雑な感情があるかな……と思い
「……うん、要は蛍のことが気になったからかな?」
そう簡潔に言うと蛍は何故か俯いて「……そ、そうですか」と答えた。
途中で別れ帰宅すると蛍から
『今日はありがとうございました』
とシンプルなメールが届いた。俺も簡単に
『また明日な』
とだけ返信した。




