第62話
「可愛いかったです」
「あぁ、本当にな」
石井さん。いや、今は神宮寺 美沙姫さんか。今日は神宮寺夫妻の赤ちゃんを見に行ってきた。つい先日、出産されたのだ。しかも……
「双子かぁ」
「先輩にも教えてくれてなかったんですか?」
「あぁ」
神宮寺の奴は双子を妊娠していたとは教えてくれなかったのだ。
「それにしても男の子と女の子の双子とは……」
「出産も大変だったでしょうね」
出産も大変だが子育ても大変だろうな。
この前、美沙姫さんのお父さんこと会社の社長に会ったときは嬉しそうだった。まだ大学生の神宮寺との子どもだと妊娠を知ったときは少し不安混じりだったが、やっぱり生まれてきた孫は可愛いのだろう。まだ未熟な神宮寺を皆でフォローしてやろうと張り切っていた。
二人で帰り道を歩いていたら、隣の蛍が小さな声で呟いた。
「……私も赤ちゃん欲しいなぁ」
……どうやら蛍の母性本能に火がついてしまったようだ。まだ学生の身の上でそんなことになるわけにもいかないので、もう少し待ってもらうしかない。
「蛍は子どもは何人欲しいんだ?」
「えっ、そうですね……私はひとりっ子だったので昔は兄弟が欲しかったんです。だから、二人は欲しいかな」
「俺もひとりっ子だったから気持ちは分かるな」
そんな話の流れで
「それじゃ、蛍は男の子と女の子だったらどっちが欲しいんだ?」
そう尋ねたら
「多分、最初は女の子だと思います。理由は内緒ですけど」
何故か蛍は最初の子どもは女の子だという確信があるみたいだ。女性にはそんな霊感があるのかな?
「ふふっ、娘が出来たら三人で手を繋いで遊園地に行きましょうね」
そう言って蛍は笑った。どうやら娘の父親は俺の事をきちんと想定してくれているみたいで一安心だ。




