後日談④
「ただいま」
そう言って我が家の扉を開けると
「……先輩、おかえりなさい」
蛍が奥から出て来て出迎えてくれる。そしてお約束の
「……先輩、ご飯にしますか?お風呂にしますか?……それとも」
と使い古された定番のネタを振ってくる。俺の選択はいつも「蛍」一択なのだが今日は
「……お話にしますか?」
と蛍が尋ねる……あれ?いつもと違うぞ?
「……ちなみにお話とは?」
「……良いお知らせと悪いお知らせがあります」
ほほう、これも定番のネタだな……ちらりと蛍を見るとポーカーフェイスというか表情からは内容がわからない。
「ふむ、それでは……悪いお知らせから聞かせてもらおうかな?」
と俺が言ったら
「……はい」
そう返事をしてから、蛍はおもむろに押し入れを開けて……あっ!?そこには……
「……先輩、これは何ですか?」
「……えぇと……『スーパーファ○コン』ですね……」
「……いつの間に買ったんですか?」
「……先月です。状態の良い品が売っていたので……つい……ごめんなさい」
「……なんで言ってくれなかったんですか?」
「……いやー無駄遣いしたら怒られるかなーって……」
「……そんなことで怒らないです、押し入れから見知らぬ箱が出てきて……てっきり先輩がエッチな本やDVDでも隠してるのかと思いました……」
「……ちなみにエッチなものが出てきたら……?」
「……浮気です」
浮気らしい。目が恐いです蛍さん。
「……ゲームを買ったなら一緒に遊んで欲しかったです」
「ご、ごめんよ。蛍が原稿で忙しくて相手してくれない時の暇潰しだったんだよ……」
「……そ、それはこっちも悪かったと思います……」
「いやいや、蛍は仕事してたんだから……そんな時に俺はゲームで遊んでたんだから俺が悪い……」
「……それではこの件はお互い様ということで……でも先輩、なんで最新のゲーム機器を買わなかったんですか?」
「……蛍、俺はファ○コンで時代が止まっているんだ……そんな最新のゲームをやれなんて……原始人にスター○ックスで注文しろって言っているようなもんだぞ?」
俺の話を聞いて蛍は「先輩は時々可愛いです」と言ってクスクス笑う。
「……チェッ、それで良いお知らせってなんだよ?」
そう蛍に聞いたら蛍はお腹に手を当て
「……できました」
え?何が……と俺が考える間に
「……三ヶ月です」
そう言って嬉しそうに笑う蛍を俺は反射的に抱き締める、勿論お腹に衝撃を与えないように。
「ほ、蛍ぅぅぅぅ!」
「……ふふっ、先輩。私はもうすぐ『先輩』呼びを卒業します。そして改めて宜しくお願いしますね『パパ』」
二人の愛の結晶が宿ったお腹を愛しそうに撫でて蛍は笑った。




