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『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』  作者: もんじゃ
『腫れ物扱いの先輩が、私には優しい』
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第103話


 「……木刀でも当たりどころが悪ければ死ぬぞ?」


 「当たればだろう?」


 俺と神宮寺はサバイバルゲームのフィールドを借りきって勝負することにした。神宮寺は自分の武術の強さを証明するために愛用の木刀で、俺はペイント弾の銃で……勝負することに。


 「……面白いことになってますね、大きいお兄様♪」


 立合いの見届けは神宮寺の妹、紅花さんに頼んだ。


 ルールは神宮寺が俺を叩きのめすか、俺が神宮寺の頭にペイント弾を当てるか……それだけだ。


 神宮寺を挑発したら「以前、俺に手も足もでなかった癖に!」と案の定、挑発に乗ってきたので


 「なぁ、平らな床で遮蔽物もない道場で勝ったからと言って……裏で通用すると思うなよ?何でもありの俺のフィールドで相手してやる」


 と、この場所を選んだ。


 「……それじゃ、俺が先に入る。五分後に神宮寺が俺を追う……で良いな?」


 「……ああ」


 今になって勝手が違うことに気づき始めた神宮寺に考える間を与えずに始める、既に勝負は始まってるんだぞ?


 森のフィールドで俺は姿を隠し、姿を確認できる場所で神宮寺を待つ。


 五分後、神宮寺はフィールドに入ってくるが……気を付けつつもしゃがみこむ事もなく普通に歩いてくる……神宮寺の武術は基本的に立って行使するものだから当然だが……これはこの場では誤りだ。


 気配を消して待っていると神宮寺もこちらが隠れられそうな場所を探し始めた……そう、その辺りを探すだろうというのは……事前に確認しておいた……だから


 「うわっ!?」


 罠を仕掛けておくことなんて当然だろう?貸し切ったのは当日だけじゃないんだぜ?


 動きを封じられた神宮寺の身体に一発ペイント弾を当てる、本来なら死亡だが……今日のルールは頭に当てることだからこれは警告だ。


 「くっ!卑怯なっ!!」


 そんな言葉に返事するのは愚か者のすることなので黙って場所を移動する。


 罠を抜けて俺を探す神宮寺が……森のなかを走り抜ける音を聞いて追いかけ始める。


 「そっちか!?」


 と神宮寺が走り追いかけ追い付いた先には……可愛い犬がいた。


 「な、何で犬が?」


 このワンちゃんも俺の仕込みだ。この場所に神宮寺を誘い出す為にこの場所まで犬が来るように仕込んだ。上手くいって良かったとは思うが駄目でも別の手はいくらでもあった。


 誘い出された神宮寺をペイント弾が狙う、神宮寺はかろうじて腕で頭への直撃を避け


 「そっちだな!」


 とペイント弾の飛んできた方に駆け出す。


 「貰ったぞ!」


 と木刀を振りかざした神宮寺は目を見開き動きが止まる。


 「……美沙姫みさきさん……な、なんで?」


 「……真一郎しんいちろう君……」


 そこには迷彩服を身に纏い、ペイント銃を構える石井女史がいた。


 「な、なんで美沙姫さんがいるんだよ!」


 と慌てる神宮寺に石井女史は


 「……真一郎君、私は真一郎君が好きです。でも、やっぱり私みたいな女じゃ嫌だった?あの日の事は一夜の過ちだった?」


 と悲しそうに言って銃口を下に向ける石井さんに対して神宮寺は


 「……そんなことあるわけない、俺だって美沙姫さんの事が!」


 と木刀を投げ捨て石井さんを抱き締める、石井さんも神宮寺を抱き締め返して離さない……


 ………………ので俺は急襲して逃げられない神宮寺の頭にペイント弾を当てた。


 「はぁぁぉぁ!?お前っ!卑怯過ぎるだろうぅぅ!!?」


 と神宮寺が叫ぶが俺は冷静に


 「……はぁ、何でもありって最初に言ったろ?それより石井さんに言うことは?」


 と言うだけだ。


 石井さんと抱き締め合って、もはや逃げられず、策略でも俺に嵌められた神宮寺は……


 「……美沙姫さん、好きです。責任とか関係ありません、きちんとお付き合いしましょう」


 と降参した。石井さんは向日葵のような笑顔で自分から神宮寺にキスをした。


 「……大きいお兄様、流石ですわ♪」


 犬を連れて近寄ってきた神宮寺の妹の紅花さんがそんなことを言う。勿論、紅花さんもこちら側の人間だ、もし神宮寺が石井さんから逃げるようなことがあったら「……私が小さなお兄様を犬の餌にして差し上げますわ」と怒っていたので、ある意味命拾いしたんだぞ?神宮寺。


 紅花さんも卑怯ではあるが……これが本当の殺し合いなら俺が勝っていただろうということは認めてくれたようだ。


 「……ふふ、やっぱり大きいお兄様のことは……諦めきれませんね」


 と中学生なのに妖艶な笑顔で言うので


 「……勘弁してください」


 と俺の股間を見つめる女の子にお願いした。


 


 


 

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