第1話
くだらない人生だった……刺された腹からは大量の血が流れ出して……俺はもう立ち上がれない。刺した男は何処かに逃げていった。誰が刺したかって?俺を恨んでいる奴なんか心当たりが多過ぎてわからない。おそらく何処かの刺客だったんだろう、かなりの手練れだった。
俺の叔父の仕事は堅気じゃない、高校を卒業した後にそんなものに自分から望んで成った。その時の叔父の申し訳なさそうな顔は忘れられない。
父親は俺が子どもの頃に蒸発した、母親は身体が弱かったが一人で俺を育てようと無理をして……身体を壊して死んでしまった。死ぬ前に実の弟である叔父を呼び俺を託した。本当は堅気じゃない叔父に頼みたくなかったのだろうし、叔父も散々迷惑を掛けた姉の前には姿を見せたく無かったのだと思うが……姉の最期の頼みを聞いて俺の後見人に成ってくれた。そんな俺にいじめの様なちょっかいを出してきた奴に抵抗して大事になった時に叔父の事を皆に知られそれからはちょっかいを出されることもなくなり……腫れ物のような存在になった。
そんな俺が……あぁ、ここで死ぬんだなと思った時に頭に浮かんできたのは……小柄な眼鏡の女だった、学生の時に少し関わっただけの可哀想な女。いつも自分の事を何一つ主張できずに俺の後ろをとぼとぼ着いて歩いていた……俺の一つ下の後輩。
俺は彼女に何かしてやれなかったのか……あれ以来いつも後悔していた。