第1話 2/29 ユーイチ
私、朝倉マドカ。二十八歳。
中小企業でOLをやっています。
洋服とか、美容についてとか、そういう話が大好き。
今度、弁護士の彼と結婚することになりました。
最近は、彼のために料理教室に通ってます。
入籍と結婚式は今度の三月末の予定なの。ちなみにその日は、私の二十九歳の誕生日です。
ちなみに今日は、二月二十九日。
夜に、婚約者の、ユーイチに電話で呼び出されちゃった。結婚式の引き出物の話なのかな、なんて思いながら、彼のマンションに出向いてみたの。
引き出物、今はカタログが流行ってるんだけど……。あれ?最近はカードタイプになったんだっけ。式に来てくれる皆にはカタログが行くのかな、カードが行くのかな。まあ、どっちでも良いか。
ちなみに今日のコーデはというと……。
今年、流行の予感がする。シア―素材って言って、なんか袖が透けてる感じの紺色のブラウス。
白地にピンクの大花柄、ふくらはぎまであるロングスカート。
その上から、グレージュのトレンチコート。
靴は、白くて五センチぐらいの高さがある、装飾のないパンプス。
バッグは、某ブランドの白いバッグ。
久しぶりに彼に会えると思って、可愛い洋服にしちゃった。
「ありがとう、来てくれて」
ユーイチの部屋のインターホンを出すと、すぐに中に迎え入れてくれた。
会うのは数週間ぶりだ。
彼とは大学の学部生の頃からの付き合いになる。全学の飲みサークルで出合った彼とは、彼と私が一年生の頃に意気投合して交際し始めた。だから、もう十年の付き合いになる。
ユーイチが司法試験に通って、司法修習生を経て、働いて二年が経つ。彼が働き出してから、付き合いで飲みだ、夜勤の当番があるって言って、全然時間が合わなくなっちゃった。弁護士さんにも夜勤があるのね。
LINEをしても出ないなんてざら。でも、やっぱり相手をしてほしくて連投すると、十回に一回は返ってくる感じ。
「『付き合い長いから、早く結婚したら?』って、周りの先生たちに言われた」
そう言って、結婚することになった私達。
苦節十年、なんとか結婚にこぎつけた。
彼のご両親からは、二人の好きにしたらって言ってもらえて、順風満帆。
弁護士さんだと、一般の大したことない女だと、結婚を反対されることもあるんだって。
私ったら、ラッキー。
でも、今日はなぜか部屋の中には入れてもらえなかった。
玄関先で、「ここで話がある」って言われた。仕事で疲れてるから、中に入りたいな。
なんだか、ユーイチ、真面目な顔をしてる。
なんだろう、引き出物、やっぱり、皿とか壺とかの方が良かったのかな。
そう言うと、ユーイチが話を切り出してきた。
「マドカ、お前と結婚は出来そうにない」
「ええ~~??????」
なになに、どういうこと?
全然、想像してない話が出てきて、ちょっとどういうこと?
「他に好きな人ができたの?」
「いや、単純に、お前の金銭感覚だと厳しいかなって」
「金銭感覚……?」
なになになに?
だって、ユーイチが稼いでくれるんだからいいじゃない。
え~~、一体どういうことなの?
「俺たち、二十代で一千万稼ぐって持て囃されてるけどさ。税金で、いくらとられてるか知ってるか? 二~三百万はさ、持っていかれるんだ。お前の考えてるような、豪遊ができるような身分じゃない。俺はもっと堅実的な女性と結婚したいんだ」
え、え、言うタイミング、遅くない?
言うなら、私が二十代前半の頃にしといてよ~~。
職場にも、四月から弁護士さんのお嫁さんになるの、結婚式にぜひ来てね、なんて言いまわっちゃったし、今更退職願を取り下げられない。
ユーイチのお給料を当てにしてたから、貯金とかもしたことがないよ~~。
そもそも、どうしよう、い、慰謝料とか、いくらもらえちゃうの?
結婚式のキャンセル代は?
四月からの仕事は? 住む場所は? マンションも解約しちゃったよ~~。
「あとは、他の弁護士に任せるから」
そのまま、彼のマンションの玄関から締め出されてしまった。
せっかく、彼が喜ぶと思って、今日は可愛い服を着て来たのに~~。気分は台無しだよ~~。
え~~、私、これからどうなっちゃうの????
でも、でもでも。
落ち込んでる場合じゃない。
「どうにかして、別の相手をみつけなきゃ!」
あと一か月内に、新しい結婚相手を見つけてみせるんだから!
どうもお読みくださってありがとうございました。
シリアスな作品ばかり書いてきたので、少し明るい作品も書いてみたいなと思って、書いてみました。たぶんそんなに長くはないかな。
メインは、恋愛ファンタジー『癒し姫』etcの方になります。作者にご興味いただけましたら、どうぞそちらもお読みください。
こちらの作品は、1週間に1回程度の更新になりそうです。
ブクマや評価してくださる読者様が多かったら、もっと早めに更新するかもしれません。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。