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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第96話 ヒトが最後に望むもの。

       ◆◆◆


 強烈なまでに甘ったるい香水の匂いは、玉座にまで届いた。


 女の名はメイプル。

 年齢は七十三。

 かなりでっぷりとした体型である。

 絹だろう。

 滑らかな生地の赤いワンピース姿なのだが、腹の部分がはちきれそうだ。

 若作りのためか化粧も濃く、金色の髪だって染め抜いたのに違いない。

 指という指にリングをはめており、ネックレスだっていくつもつけている。

 まったく、趣味が悪いというか品がないというか。


 スフィーダが訊くより早く、メイプルはこう言った。


「スフィーダ様の血をいただきとうございます」


 理由を訊ねた。


「悠久のときを生きる魔女。その血を飲めば、永遠の生が得られるとの噂がございますよね?」


 たまに現れるのだ、こういうやからが。


 スフィーダ自身、試したことはない。

 実現したという例についても、聞いたことがない。


 その旨をメイプルに伝えた。

 すると「可能性が、まったくないわけではございませんよね?」と返してきた。

 彼女は目をキラキラと輝かせている。


「お金ならいくらでもお支払いいたします」


 本当に、下品なことを言う。


「わたくしはビジネスにおいて、数々の実績を残してまいりました。莫大な資産を抱えております。それを誰にも渡したくないのです。いつまでもいつまでも持っていたいのです。私は永遠の成功者でありたいのです」


 まったく、強欲なことだ。

 しかし、気持ちはわからなくもない。

 とはいえ、スフィーダにその気はない。


「メイプルよ」

「はい」

「ものであれヒトであれ、永遠に続く存在などないと思うぞ?」

「わかっております。だからこそ、私はスフィーダ様の血を求めるのでございます」

「血を分け与えるつもりはない。そなただけを特別扱いするわけにはいかん」

「お金ならいくらでもと申し上げました」

「わしに賄賂が通じるわけがなかろう?」

「そうおっしゃらず。わたくしはスフィーダ様と蜜月になりとうございます」

「言ってもわからぬか……」


 スフィーダは吐息をついた。


「本当は若い姿のままキープできればよかったのですが、それは今となっては仕方のないこと。その点について、わがままを言うつもりはございません」

「言われたところで、わしにはどうしようもないがの」

「そちらのヴィノー様。貴方様のお綺麗さも、やがては朽ちてしまうのでございますよ? なれば、現状でときを固定してしまいたいとは思われませんか?」

「思いません」

「なぜですか?」

「簡単です。私はヒトが愚直に老いていくさまを、美しいと考えているからです」

「冗談でございますよね?」

「冗談を言う動機がありません」

「しかし、ヒトが最後に望むのは、やはり永久とわの命でございます。私の友人は、そういったニンゲンばかりです」

「その価値観を、陛下や私に押しつけないでください」

「そ、そんな」


 メイプルは眉尻を下げ、情けない表情を浮かべる。


「一回だけ、試すくらいはゆるしていただけませんか?」

「陛下も述べられました。貴女だけをひいきするわけにはいきません」

「お、お金ならいくらでも――」

「その手は通じないと言っています。もうお引き取りください、メイプルさん」




       ◆◆◆


 次の謁見者が訪れるまでの、わずかな時間のこと。


「陛下はこれまでにも、あのようなニンゲンとお会いになったことが?」

「まあの。幾度かあったぞ」

「お優しい陛下のこと。なればとお考えになったこともあったのではありませんか?」

「考えることはあったが、やはりよしとはできんかった。魔女には魔女の、ヒトにはヒトの一生があると、わしは区別しておるからの」

「実際のところはどうなのでしょうね。なんらかの思惑があって、分け与えた魔女もいたのではないでしょうか」

「おったらおったでどうする?」

「どういう理由があったとしても、軽蔑する自分しか想像できません」

「厳しいのぅ」

「陛下も同じご意見なのでは?」


 スフィーダは小さく肩をすくめた。

 ヨシュアの言う通りだった。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 多分、感想返信が一件ズレているのです。 今回の話がさっき頂いた感想返信の気がします。 [一言] 昔の漫画の悪人は大概『永遠の若さ』とか『永遠の命』とか言いますよね~ そんなのは要らない…
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