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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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95/575

第95話 侯爵家に嫁いだ女。

       ◆◆◆


「次の謁見者についてでございますが」

「ん? なにかあるのか?」

「陛下にというより、私に用がある人物なのでございます」

「男か?」

「女性です」

「昔の女か?」

「まさか。簡単にご説明いたしましょうか?」

「いや。まずは直接、話を聞いてみることにする」

「承知いたしました」


 玉座の間に、女が入ってきた。

 赤絨毯の上をゆっくりと歩いてくる。

 険しい顔をしているように映るのは、気のせいだろうか。


「フェルト・ウィリアムスでございます」


 女は名乗り、立礼した。

 若い。

 二十代の前半だろう。

 袖や裾にレースのあしらわれた黒いワンピースを着ている。

 艶やかな黒髪、明眸。

 なかなか綺麗な女だ。


「座るのじゃ」

「失礼いたします」


 フェルトが椅子に腰を下ろしたところで、ヨシュアが「久しぶりですね」と彼女に声を掛けた。


「ええ。お久しぶりでございます、ヴィノー様」


 答えたフェルトの表情は暗い。

 というより、目つきに明確な棘がある。

 なにかを憎んでいる、あるいは恨んでいる。

 そんな目だ。


「もう三年にもなりますか」

「私ごときのことを覚えていてくださったのですね」

「ごときなどと、ご自分を卑下する言い方はやめてください」

「卑下したくもなります」

「ご結婚は? もうされましたか?」

「こうしゃくけの方と」

「デューク?」

「いえ」


 なるほど。

 侯爵家というわけだ。


「子は?」

「息子が一人。生んだのはもう一年も前ですけれど」

「おめでとうございます」


 俯いたフェルト。

 両肩が震えている。

 そして、「……おめでたいものですか」と悔しげに、絞り出すように発声した。


「どうして私を選んでくださらなかったのですか? どうして、あんな末端貴族の女を、ヴィノー様は、ヨシュア様は選ばれたのでございますか? あんなぱっとしない女をどうして……」

「彼女のいじらしいところを、ことのほか、気に入ってしまいましてね」

「たったそれだけの理由なのですか?」

「他にも多々あります」

「公爵家のご長男。数々の肩書き。才能。おまけにそのお姿……。貴方様と見合いをした女は、親の書いた筋書きをなぞるしかなかったのではありません。みながみな、貴方様に魅せられたのでございます」

「そのこと自体はありがたく、また嬉しいことだと感じています。今でもです。選ぶ立場になってしまったことについては、多少以上の申し訳のなさを覚えていますが」


 だいたい、話が見えてきた。

 二人は見合いをしたものの、それは上手くまとまらなかったのだ。

 フェルトはそのことを、今でもかなり悔やんでいるらしい。

 上流貴族の男と結婚しても、現状に我慢がならない。

 そこにあるのは執念か、はたまた女としてのプライドか。


「クロエ……。何度殺してやりたいと思ったことか……」

「私の無意識の部分が、貴女のそういった執念深さに気づき、それを嫌ったのかもしれませんね」


 フェルトがカッと目を見開いて、ヨシュアを睨みつけた。


「殺してやる、本当に、クロエ……ッ」

「そんな真似をされては非常に困ります」

「でしたら、今すぐクロエと別れて、私と一緒になってくださいませ」

「それはできません」

「だったら、やっぱり――」

「貴女は自らの発言で自らを追いつめています。よくありませんよ、ミセス・フェルト」

「ミセス? よくもまぁ、いけしゃあしゃあと……」

「お帰りください。話すことなど、もうなにもないでしょう?」


 すると、呪詛でも吐くようなよどんだ声で、フェルトは「クロエ」という名を連呼した。

 椅子からゆらりと腰を上げる。


「私は一生ゆるさない。貴方のことも、クロエのことも!」


 そう叫ぶと、フェルトは狂ったように笑いながら、去っていった。


「ヨシュアよ」

「はい」

「クロエの存在は、おまえのアキレス腱でもあるわけじゃな」

「まったくもって、その通りでございます。なれば妻など持つなと、自らに言い聞かせたいところではありますが」

「それでもクロエを愛しているから、どうしようもないわけか」

「はい」

「おまえのそういうニンゲンくさいところ、わしは好きじゃぞ?」


 ヨシュアは「ありがとうございます」と答えたが、顔は笑っていなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] リクエストにお応えいただき、ありがとうございます! これは、一旦ここまでですか?(フラグ的な) それともすぐ続きですか? どちらでも楽しみにしてます!
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