表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/575

第90話 怒りの旅路。

       ◆◆◆


 飛空艇内。

 スフィーダの船室。


 スフィーダの他に二名いる。

 一人は椅子の上で脚を組み、読書にふけっているヨシュアである。

 もう一人は椅子の背もたれを前にして座り、退屈そうに顔を左右に揺らしているケイオスである。


 ケイオスと会うのは久しぶりだ。

 相変わらず、髪の色も瞳の色も真っ赤である。

 二十歳の若者だが、もっと幼く映るのも相変わらず。


 なぜ、ケイオスが同行しているのか。

 その点、不思議なので、スフィーダは率直に「どうしてそなたが呼ばれたのじゃ?」と訊ねた。


「ヨシュア様の一存だよぉ」

「ヴィノーですよ。ケイオス・タール」

「えーっ、フレンドリーに行こうよぅ」

「そなたは治安部隊に就職したのではなかったのか?」

「そうなんだけど、首都の治安部隊って、軍の首都防衛隊と業務がかぶってる部分が、結構あるんだぁ。だからあんまり意味ないなぁと思ってさ。それをヴィノー様に伝えたら、じゃあ、なんでも屋としてこき使ってやるって言われたんだ」

「こき使われる場面など、あるのか?」

「ないよぉ。だから、ぶっちゃけ暇しちゃってるんだぁ。だけど、平和なのが一番だよねぇ」


 あるいは剣呑に見えかねないのがケイオスなので、平和という言葉を聞かされ、スフィーダは安心した。

 戦闘や戦争を望むニンゲンなどいないと信じたいのである。


「カレンとは、その後、どうなのじゃ?」

「1LDKしかない俺の部屋に、転がり込んできちゃった」

「そそっ、そうなのか?」

「ベッド、一つしかないからさ、一緒に寝てるんだぁ」

「そそそっ、そうなのかっ!?」

「どうしてそんなに驚くの?」

「だって、いや、あのカレンが、そんなふうに、のぅ……」

「恋は盲目ってヤツなんじゃない?」


 それを自分で言ってしまうのか。

 ケイオスはとことん大物であるらしい。


「どうか、かわいがってやってほしいのじゃ」

「嫌いじゃないからね。まあ、うまくやれるよ。おっぱい結構おっきぃし」

「お、おっぱい?」

「俺、おっぱい好きなんだぁ」

「子供っぽいところがあるのじゃな」


 ケイオスがピッと右手の人差し指を立てた。


「一つ、質問していい?」

「うむ。よいぞ」

「スフィーダ様って、あのフォトン・メルドーのことが好きなの?」

「む。その旨、どこで知った?」

「こないだ、ヨシュア様と飲んでさ、そのときに」

「ヨシュアよ、なぜ話した?」

「口は堅そうでございますから」

「理由になっとらんぞ」

「いいじゃん、別に。にしてもさ」

「なんじゃ?」

「いや、メルドーさんも陛下のことが好きなんでしょ? それって凄まじいというか、究極的なロリコンだなって思ってさ。陛下が二千年以上生きてるって設定じゃなかったら、完全に逮捕案件じゃん」

「ケ、ケイオスよ、それを言ってしまってはおしまいじゃ。というか、設定ではないぞ? わしは本当に二千年以上生きておるのじゃぞ? それにじゃ、フォトンとはその……」

「エッチなことはしてないの?」

「ま、まあ、そういうことなのじゃ」

「メルドーさんは、スフィーダ様のどこがいいんだろう」

「どこじゃと思う?」

「ちょっと考えてみたんだよ。たとえば、メルドーさんが恋をした相手って、そもそも今のスフィーダ様じゃないのかもしれないな、とか」

「ほぉ。興味深い見解じゃのぅ」

「当たってる?」

「内緒じゃ」

「意地悪っ」

「わっはっは」


 安堵したように「よかったぁ」と言い、目を細めてみせたケイオス。


「ん? なにがよかったのじゃ?」

「んとね? メルドーさんが投獄されちゃったわけだから、スフィーダ様、メチャクチャ凹んでるんじゃないかなって心配してたんだぁ」


 スフィーダは苦笑した。


「凹んでおるぞ。実は、メチャクチャ……」

「悪いのはハイペリオンじゃん。やられたらやり返す。当たり前じゃん。っていうか、むしろこっちが呼びつけてやる立場なんじゃないの? どうしてこっちから出向かなきゃなの?」

「仕方ないじゃろうが。来なければ会わぬと頑ななのじゃからの」

「スフィーダ様が出席する理由は?」

「まるっきり、わしのわがままじゃ」

「気持ちはわかるよ。一言、物申してやりたいよね。メインスピーカーはセラー首相?」

「無論、そうじゃろうの」

「でも、相手は軍事政権の親分なんだよね?」

「なにか問題があるか?」

「セラー首相は賢いヒトだと思うけど、ちゃんとキレられるヒト?」

「キレたらいかんじゃろう」

「ナメられるようだったら、キレなきゃ。たとえ国同士のことであっても」

「そうかのぅ」

「そうだよぅ。あ、その場でなにか揉めるようなら、俺、しっかりスフィーダ様を守るからね。そのために呼ばれたんだもん。任せてよ。指一本、触れさせないから」

「ありがとうなのじゃ」

「どういたしましてなのだ。あ、今さらだけど」

「ん?」

「黒いドレス、スッゴく似合ってるよ」

「再び、ありがとうなのじゃ」

「再び、どういたしましてなのだ」


 スフィーダは「ふふ」と笑い、それから静かに目を閉じた。

 胸の内にふつふつと湧き上がってくる、激しい憤怒の念。

 いよいよ、それに身をゆだねることに決める。


「すべては陛下の御心のままに」


 ヨシュアのその言葉を聞いて、やってやるぞという気持ちになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 緊張感に溢れた局面。 設定発言と逮捕案件には笑いました。ケイオス君優しくて男気がありますね。スフィーダとのやりとりでよく伝わってきました。 こういう場面の描き方いいなと感じます。 ヨシュア…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ