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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第77話 わがままエヴァ、その三

       ◆◆◆


 イェンファの侵攻から、たった二日。


 エヴァはもう仕事を終えたらしい。

 彼女の帰還先は元いた北の国境沿いではなく、首都アルネだった。

 そして、わざわざ玉座の間にまで訪れたのだった。


 黒い軍服姿だが一応そうだというだけで、デザインはオリジナル、上着もスカートも丈が短い。

 相変わらず、目の保養になる容姿だ。


 赤絨毯の上に設けられた椅子に腰掛け脚を組むと、事後の報告に来たのだとエヴァは述べた。


「結果は聞いています。そもそも呼んですらいませんが?」


 玉座のかたわらに立つヨシュアがそう言った。


「わざわざ直接馳せ参じてあげたのよ。ありがたく思いなさいよね」

「ですから、呼んでいないと言っています」

「だったら、どうしてここに通してくれたわけ?」

「貴女が強引に入ってきたんでしょう? 北の警備に戻りなさい」

「やーよ。ゆっくりお風呂に入って、おいしいものを食べるの。そしたら、また行ってあげてもいいわ」

「貴女はわがまますぎます。エヴァ・クレイヴァー」

「そういうキャラクターですから」


 エヴァはぷいっとそっぽを向いた。

 まったくと言っていいほど、悪びれる様子がない。

 だからといって、ヨシュアにもこれといって困っている様子はない。

 ただただ、冷たい目をしている。

 そう。

 彼の彼女に対する言動は、いちいち冷ややかに感じられるのだ。


「とにかく報告は不要です。出ていきなさい」

「せっかく来てあげたのに、まだそんなことを言っちゃうわけ?」

「でしたら、言いたいことをさっさと言いなさい」

「ヴァレリア・オーシュタハウトゥ? ウッザいくらい、なっがい名前」

「彼女がどうかしましたか?」

「あの女、デカいわよね。身長も、胸も、お尻も。おまけに馬鹿なんじゃないかっていうくらいエロい恰好。だけど、認めてやってもいいわ」

「ですから、なにをですか?」

「実力よ、実力。大した女じゃない。ブレーデセンにも、あれほどの使い手はそうはいなかったはずだから。もちろん、私には及ばないけれど」


 ヨシュアは右手で前髪を掻き上げる。

 至極めんどくさそうに映るのは、きのせいではないだろう。


「で?」

「で? じゃないわよ。あれだけやれる軍人が、どうして大尉止まりなのかって話よ」

「フォトン・メルドー少佐が昇進を拒んでいるからです。彼女はずっと、彼の部下でいたいんですよ」

「ふぅん。やっぱり心酔してるってわけね。そこには生々しい肉の匂いしか覚えないけど」

「たとえそうでも、なんらかまわないと考えますが?」

「なーんてヴィノー閣下は言ってるけど、陛下はそれでいいわけ?」

「ここでわしに話を振るのか。というか、その旨、なぜ知っておるのじゃ?」

「戦闘が終わったあと、基地でお昼を食べてるときにそんな話になったのよ。メルドーさんには、実は好きな女がいるってね」

「あまり外でべらべらとしゃべらんようにの」

「しゃべらないわよ。私ならしゃべらないだろうって思ったから、あの女だって話したんでしょ。それで、陛下としては、二股はアリなの? ナシなの?」


 スフィーダ、顎に手をやり、うーむと考えた。

 考えたのち、「ま、いろいろと勘案すると、アリじゃろう」と答えた。


「へぇ。懐がお深いこと。一方のメルドーさんは、底が浅いと言えるわよね」

「なぜじゃ?」

「だって、要は性欲が抑えられなくてヴァレリア大尉を抱くわけでしょう? もう一回伺いますけど、陛下はそれでいいわけ?」

「ぶっちゃけるぞ」

「どーぞどーぞ」

「悔しくもあるが、仕方のないことじゃ」

「ひょっとして、陛下はあの女に代わりをしてもらってるって思ってる?」

「そこまでは思っとらん。思っとらんが、フォトンほどの男を独占できると考えていないことは事実じゃな」

「ふぅん。わからないなあ」

「なにがじゃ?」

「メルドーさんがモテる理由。顔立ちは悪くないけど、野獣みたいに荒っぽそうじゃない。実際、脳筋馬鹿なんでしょ?」

「そんなことはない。実は賢いのじゃぞ?」

「ヴァレリアさん、ベッドの上ではスッゴく乱暴されてそう」

「あはははは。そうかもしれんのぅ」

「ここで笑っちゃうとか、本気?」


 エヴァはやれやれとでも言わんばかりに、首を横に振った。


「で、どうするの? 領土を侵した阿呆どもはまるっと葬ったわけですけど、イェンファに攻め込むことはするわけ?」

「その点は、貴女が知る必要はありませんよ」

「いけずの閣下。教えてくれたっていいじゃない」

「相手の出方次第ですね」

「どういう手を打つの?」

「大統領を呼びつけ、釘を刺します。要求に応じないようであれば、それまでです」

「相変わらず、お優しいのねぇ」

「もういいでしょう? 行きなさい」

「はーい」


 エヴァが去ったあとの話である。


「エヴァはいくつなのじゃ?」

「二十一歳だそうです。それがどうかしましたか?」

「いや。なにを言ってもかわいい年頃ではないかと思っての」

「彼女に対する私の当たりがキツいと?」

「実際、そうではないか」

「恐らく、生理的に受けつけないタイプなのでしょう」

「らしくないのぅ」

「確かに、そうかもしれませんね」


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