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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第73話 ルフラン。

       ◆◆◆


 ヨシュアをディナーに誘ったのだが、彼からは「のちほど、食堂にて簡単に済ませますので」という答えが返ってきた。


 断られると興をそがれたような気分になるものの、いつだって食欲は旺盛だ。

 だから、片っ端からばくばく食べるのである。

 今日のメインディッシュは肉、牛のフィレステーキ。

 焼き加減はミディアムレア。

 絶妙の火の通り具合と言っていい。


 コップの水を飲み干すと、ヨシュアが新しいのを注いでくれた。

 本来は侍女の役割である。

 もう仕事を切り上げてもらってもかまわないのだが、その旨を伝えると、彼は「では、最後に世間話を一つ」と切り出してきた。


「なんじゃ? 面白い話か?」

「面白くはありません」

「それでもよい。話してみよ」

「最近、妙な薬が出回っているようなのでございます」

「妙な薬?」

「はい。白い粉末状のもので、火をつけ吸引するそうです」

「あからさまに怪しいのぅ。ずばり麻薬か?」

「はい。効能は特殊です。なんでも、喜びに満ちた過去にトリップできるのだとか」

「完全に危ない薬ではないか」

「取り締まりは強化しているとのことです」

「当然じゃろう。その薬に名はあるのか?」

「ルフランでございます」




       ◆◆◆


 謁見に訪れたのは、ごま塩頭の男である。

 四十のなかばくらいだろうか。

 目の下の隈は濃く、痩せぎすで、震えが来ていてそれを止めることができないのか、右手を忙しなく小刻みに動かしており、ぱっと見ただけでも精神を病んでいるであろうことが窺える。


 名はスコット。

 病気で妻を亡くし、一人娘は事故で失ったらしい。

 だから、ルフランに手を出したのだと言う。

 幸せだった過去の記憶に浸るために。


「副作用かなにかで、ものが食べられなくなるのか?」

「いえ。薬代がかかってしまい、食費の捻出もままならず……」

「いかんぞ。それはいかん」

「ですが、やめられそうにもありません」

「今はフツウにしゃべっておるではないか」

「一人になると、ダメなんです。どうしても使ってしまいます」


 麻薬の中毒者に対して軽率な発言は控えるべきだろう。

 ならば、どう対応したらよいのか。

 そんなことはわからない。

 正解なんてないに違いない。

 だから結局は、自分らしく振る舞ってやろうという着地点に到達する。


「そもそも私は、どうしてスフィーダ様にお会いしたいと考えたのか……」

「誰かに胸の内を打ち明けたい。あるいは誰かに助けてもらいたい。そういうことではないのか?」

「そうなのでしょうか」

「きっとそうじゃ。否、そうに決まっておる」

「ですが私は、未来はおろか、明日すら要らないんです」

「悲しいことを申すな」


 スコットは両の目尻から頬に涙を伝わせる。

 しかし、表情は笑顔だ。


「スフィーダ様はお優しいですね」


 スコットを見るスフィーダの目には、自然と憐みの色が滲む。


「これからどうするのじゃ?」

「自首しろとおっしゃいますか?」

「もちろんじゃ。体を思いやりながら罪を償い、更生すべきじゃ」


 ここでヨシュアが「スコットさん、待合室にいてください」と言い、「こちらから、警察に連絡を入れますので」と続けた。


「やっぱり、信用してはいただけませんよね」

「妙な行動を起こされては困るからです。貴方の命を守るための措置だと思ってください」

「わかりました」


 椅子から腰を上げたスコット。

 彼はぺこりと頭を下げ、身を翻した。

 双子の近衛兵、ニックスとレックスに挟まれ、歩いていく。

 

 そして、スコットが大扉の向こうに姿を消したところで、ヨシュアが「いろいろと状況が見えてきましたね。点と点が線でつながりました」と口を利いた。


 スフィーダはヨシュアを見上げた。

 彼は前を向いたままでいる。


「ヨシュアよ、どういうことじゃ?」

「彼がつけていた銀色の首飾りには、お気づきに?」

「いや。気にも留めなかったが」

「ペンダントトップが逆十字でした。サドラーの信者だと思われます」


 スフィーダは「ほぅ」と口をすぼめたのである。

 宗教とは、また意外な出所である。


「信者ということは、宗教か?」

「はい。退廃的な思想を掲げていることが要因でしょう。しばしば信者の中から自殺者が出ています」

「ということは、ちまたではそれなりに有名なのじゃな?」

「さようでございます。そして、薬の出所も、恐らくは」

「なるほどの。あとは証拠か」

「じきに結果は出ましょう。あと、これは予備知識として展開いたしますが」

「なんじゃ?」

「教祖のアーロン氏は、女王制の否定論者なのでございます」

「そうなのか? ならば尚のこと、なぜ、入信者であるスコットは、わしに会いにきたのじゃ?」

「教祖の教えであっても、すべてに賛同できるわけではないということではないでしょうか。妄信している者がほとんどだろうとは思いますが」

「なんにせよ、興味深い話ではある。そのアーロンとやらを、この場に呼ぶことはできんか?」

「議論なさろうと?」

「まずはただ、話をしてみたい。ぶっとい釘を刺してやりたい思いはあるがの」

「なにがあろうと、どうか激高だけはなさらないでくださいませ」

「そのへんは心配するでない」

「わかりました。早急に手配いたします」


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