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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第64話 愛が勝つとは限らない。

       ◆◆◆


 長い金髪が美しい若い女、スザンナは言う。


「夫はとても優しいのです。一生懸命働いてくれますし、精一杯の愛情を注いでくれます。ですが、体の相性はAさんのほうがよいのです」


 Aさんというのは、無論、偽名だろう。


「陛下、私はどうしたらよいのでしょうか。愛情に重きを置くべきなのか、肉欲に身をゆだねるべきなのか」

「フツウに考えて、不義を働くのはよくないじゃろうのぅ」

「でも、Aさんと体を重ねているときは、深い快楽に浸ることができるのです」

「む、むぅ。そうなのか」

「はい」


 肉欲。

 なんとも生々しい単語が出てきたものである。


「仮にそのAさんとやらとの関係を続けたいのであれば、速やかに離婚すべきではないのか?」

「不倫というかたちが望ましいのです。ああ、これが背徳の味かとぞくぞくするのがたまらないのです」

「は、背徳の味ときたか」

「一度、覚えてしまったが最後、なかなか忘れることなどできないようです」

「じゃが、事がばれてしまった場合、修羅場になることは必至じゃろう?」

「そうなったらそうなったで、ああ、このヒト達は必死になって私の取り合いをしているのだなあと、さらなる悦が得られるかもしれません」

「じゅ、重症じゃ。そなたは重症じゃ」

「やはり、そうなのでしょうか」

「わしはそう思うぞ。強くそう思うぞ」


 スフィーダは二度、頷いた。

 やはりヒトの道を誤ることがあってはいけないだろうと、彼女は思う次第である。

 

「実はAさんには奥様がいて」

「そそっ、それはまずいではないか」

「ですが、Aさんも体の相性については私のほうがよいのだと」

「この際、体の相性うんぬんはうっちゃるべきじゃ。結論を言わせてもらうと、離婚する、あるいはしなければならない状況に陥ってしまったら、スザンナ、そなたは絶対に後悔することになるぞ」

「陛下のお考えはごもっともだと思います。ですが、肉の匂いは嗅いでいたいのです」

「わ、わがままじゃのぅ。しかも、今度は肉の匂いと来たか」

「Aさんは、女の心のひだの部分に巧みに触れてくるのです。実際、ピロートークがとても上手で――」

「そ、それ以上は言わんでいい。エッチな表現に拍車をかけるな」

「卑猥な話はお嫌いですか?」

「少なくとも好きではない」

「そうですか。残念です」

「ざ、残念なのか」

「とにかく深く悩んでいるのです……」

「やはり一番よいのは、Aさんとの関係を清算することではないか?」

「夫にも正直に打ち明け、謝罪することが望ましいでしょうか」

「それができれば最高じゃの」

「わかりました。その方向でやってみます。結果が出た折には、またご報告に訪れてもよいですか?」

「かまわんぞ。わしとしても気になるからの。どうなったのかは、ぜひ聞かせてもらいたいのじゃ」




       ◆◆◆


 三日後。


 スザンナはしゅっとした若い男性と一緒に再訪した。

 手をつないだまま、赤絨毯の上を歩いてくる。

 仲睦まじい様子だ。

 だからスフィーダはホッとした。


 二人は深々とお辞儀をすると、用意された二脚の椅子に、それぞれ腰を下ろした。


「スザンナよ、話はうまくまとまったようじゃな」

「はい。まとまりました。こちらの男性がAさんです」

「……へっ?」


 Aさん?

 夫ではない……?


「い、いったい、どういうことなのじゃ?」

「私は夫と、Aさんは奥様と別れたのです」

「いや、それはわかるのじゃ。なぜ、そう転んだのかと訊いておる」

「お互いが肉欲を優先した結果です」

「本当にそれでよいのか?」

「はい」

「う、うーむ、じゃが、しかしじゃな……」


 スザンナの夫、それにA氏の妻が不憫に思えてならない。

 一方的に別れを切り出され、それを即実行に移されたとあっては、たまったものではないだろう。

 だが、今さら、こうしろああしろと促したところでとっくに手遅れだ。


 スザンナとAさんは手を握り合ったまま、ニコニコと笑っている。


 こういう帰結もアリなのだろうか。

 そのへん、ちょっとわからない。


 ただ、どうしたって納得できないのは事実だ。

 事実なのだが、やっぱりどうしようもないわけだ。


 スフィーダはかたわらに立つヨシュアを見上げた。

 彼は「まあ、収まるところに収まったということでしょう」と、あまり興味がない様子。

 もともとフラットな男だから、そう述べるだけに留めても、なんらおかしくはない。


 自分の倫理観はおかしくないと思うのだが、頭の柔軟性が足りないのかもしれない。

 そんなふうに考えもしたが、別に難しいことでもなんでもなく、ただ単純な話として。


 結論。

 肉欲は罪深い。


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― 新着の感想 ―
[一言] 別れるんだろ~な、このふたり…… って思いましたwwww もう背徳の味じゃないですからねぇ。 あ、互いに好きなようにやりながら一緒にいる、って特殊パターンもあるか。
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