第58話 JK!?
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スフィーダが玉座の上から「今日、最後の謁見者は、どんなニンゲンなのじゃ?」と訊ねると、彼女のかたわらに控えているヨシュアは「JKでございます」と答えたのだった。
「じぇ、JK? なんじゃ、それは」
「おや。ご存じありませんか」
「ないぞ? 初めて聞いたぞ? 有名人なのか?」
「陛下もまだまだのようでございますね」
「むぅ。JK、JKか。なんだか強そうじゃのぅ」
「実際、強いかもしれません」
「そうなのか?」
「お会いになればわかります」
そのJKとやらが、姿を現した。
双子の近衛兵、ニックスとレックスに挟まれる格好で近づいてくる。
JKは十五、六であろう少女だ。
上は白いブラウスに茶色いジャケット。
下は黒いプリーツスカート。
黒い髪はそう長くない。
実に利発そうな目をしている。
所定の位置で止まったJK。
いきなりだった。
JKが勢いよく両手を上げた。
本当に、あまりに唐突だったので、スフィーダはメチャクチャ驚いた。
思わずギョッと目を見開いてしまうくらいびっくりした。
次にJKは、これまた勢いよくお辞儀をしてみせた。
両手を上げたままなので、実に珍妙なお辞儀と言える。
上体を起こしたJKは「スフィーダ様、万歳です!」と大きな声を放った。
「じぇ、JKじゃったか? そなたはJKということで正しいのか?」
「はい! 私はJKです! JKのコフィといいます! よろしくお願いします!」
「ん? JKのコフィ?」
「はい! 名前はコフィです!」
「あ、あいわかった。コフィよ。椅子に座ってもらってもよいか?」
「はい! 座ります! 失礼します!」
椅子に腰掛けるなり、ジャケットのサイドポケットからメモ帳と万年筆を取り出したコフィ。
「スフィーダ様!」
「な、なんじゃ? というか、いちいちそんな大声を出さずとも聞こえるぞ?」
「……ダ様」
「い、いや。今度は小さすぎじゃ。聞き取れぬぞ?」
「スフィーダ様」
「そうじゃ。それくらいが、ちょうどよい」
コフィは胸に右手を当てると、ふぅと吐息をついてみせた。
大仰な仕草に映ったのである。
「私、緊張しているんです」
「そうは見えんが……。して、何用じゃ? 聞かせてほしい」
「私、学校新聞の記者なんです」
「やはりそなたは学生なのか」
「JKですから」
「JKとはなんなのじゃ?」
「そんなの、自分で調べてください」
「け、けちんぼじゃのぅ」
「取材させてください」
「うむ。なんでも訊くがよいぞ」
「恋人はいるんですか?」
「の、のっけから、グイグイ来るのじゃな」
「どうなんですか?」
「お、おらぬ。おったらまずいじゃろう?」
「どうしてまずいんですか?」
「いろいろと大人の事情があるのじゃ」
「スフィーダ様は子供じゃないですか。幼女じゃないですか」
「い、いや。それでも二千年以上、生きておるわけであって――」
コフィは切り替えが利く少女であるようだ。
すぐさま、「次の質問です」と返してきた。
「スフィーダ様は処女ですか?」
「ままっ、また突拍子もないことを」
「どうなんですか?」
「そうであるに決まっておるじゃろう?」
「なんでしないんですか?」
「幼女には無理というものじゃ」
「私はそんなことないと思います。ニンゲン、やってやれないことなんてないと思います」
「え、えらく前向きじゃの。しかしじゃな、やっぱり幼女がとなると倫理的な問題が発生――」
「次の質問です」
「い、一応、話は最後まで聞いてほしいのじゃが……」
「何年かに一度、満月の夜に、魔女は大人の姿になるという伝説は本当ですか?」
「そそっ、それは、じゃな――」
「大人になったときは、巨乳になるんですか?」
「お、おい、コフィよ、じゃから、ヒトの話は最後まで――」
「答えてください。巨乳になるって言ってください」
「なぜ一択なのじゃ?」
「そのほうが、男子が喜ぶからです」
「そう言われても……」
スフィーダはあまりに困ってしまい、ヨシュアを見上げる。
彼は顔を向こうに向け、身をぷるぷると震わせていた。
必死に笑いをこらえているようだ。
「わかりました。とても有意義な時間でした。ありがとうございました」
「よ、よいのか? わしはほとんどなにも答えておらんぞ?」
「任せてください。生徒にウケるように書きますから」
「それなら取材などせずともよかったのではないかと思うのじゃが……」
椅子から腰を上げたコフィ。
「じゃあ、帰ります。おなかがすいたのでダッシュで帰ります。夕食はクリームシチューです。ばんざーいっ!」
コフィは身を翻し、本当に赤絨毯の上をダッシュしてゆく。
双子の近衛兵が慌ててあとを追う。
滑稽な光景だとしか言いようがなかった。




