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第545話 ヤオディ、その一。

       ◆◆◆


 ヤオディ相手に奮闘中らしい。

 メグ自身が語ったのだから、その通りなのだろう。

 裏切りの過去があろうと、今さら背を向けられるとは思いたくない。


 ブレーデセンの首相官邸にある小さな会議室。

 ここを訪れるのは最後にしてくれと、ヨシュアから言われている。


「状況はつぶさに観察、把握しています。一歩踏み出し、状況を打開したいところですね、メグ・シャイナ首相」

「その通りです、ヴィノー閣下。正直に申し上げます。我々だけではやりきることができません」

「承知しています。でなければ、私が呼ばれた意味も意義もない」


 顎に右手をやったヨシュアである。


「我が軍の力をもってすれば、ヤオディが相手でも遅れをとることはありません」

「心得ております。フォトン・メルドー少佐ですか?」

「彼を出す出さないは私の判断です。我が国はすでに腕利きの使い手を四人も出撃させています。彼らだけでなんとかしたいですし、またなんとかなるとも考えています」


 スフィーダは一つ頷き、左方を見た。

 ヨシュアを見上げる。


「エヴァにピットにミカエラ、それにマキエのことじゃな?」

「ピットとミカエラには、これを機に、また一皮むけて欲しいところですね」


 メグよ。

 そう呼び掛けたスフィーダである。


「恐らく、事後報告だけになるはずじゃ。その旨、心得ておるか?」

「かまいません。ただ、我が国の安寧に貢献してくださった方とはお会いしたいです」

「らしいぞ、ヨシュア」

「手配しましょう。四人とも面白い顔はしないことでしょうが」

「最大限の礼を尽くします」

「そうしてやってください」


 パチッとウインクをした、ヨシュア。

 メグはにこりと笑うだけだった。


 なんだかこう、マダムキラーだ、ヨシュアってば。




       ◆◆◆


 夜、玉座に戻ったのである。

 左隣にはヨシュアが立っている。

 夕食が出てくるまでのインターバルである。


「メグは従順じゃ。変わったのか、もともとああいう人格じゃったのか」

「後者でございましょう。悪い人物ではないと踏んでいます。とにかく国のことを第一に考えられる女性なんですよ」


 スフィーダは腕を組み、目を閉じた。


「また多くのヒトの血が流れておるのぅ」

「やむを得ない場合もあります」


 ふーっ。

 自らを落ち着かせるように、一つ息をついた、スフィーダである。


「戦わなければならんか」

「戦うことこそ、ヒトの歴史でございます」

「わしは戦いのない世界を作りたい」

「現状、それは、無理だと言ったら?」

「やはり、無理なのか……」


 スフィーダは改めてヨシュアを見上げる。

 彼は右の頬をぽりぽりと掻いてみせた。


「懸案事項が一つ、減りました」

「懸案事項?」

「無論、ブレーデセンの件でございます。メグ首相が心を決めてくださったことで、我々は対ヤオディに注力することができる」

「本当に足りるのじゃな? 我が軍は、足りるのじゃな?」


 ヨシュアに「しつこいですね」と言われてしまった。


 スフィーダは俯いた。

 国のためとはいえ、死する兵には掛ける言葉などやはりない。


「陛下。それでも知っておいてください。我が国は人材に恵まれています」

「人材がおるから、それほどの数にはならんということか?」

「そうは言いません。陛下。プサルムに栄光を」


 プサルムが我が子であることを、スフィーダは改めて実感した。


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