表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
539/575

第539話 リンドブルムの進言。

       ◆◆◆


「まあなんというか、結局のところ、ブレーデセンに上陸はしているわけで、戦場も当該であるわけですが」


 老人と呼んでも差し支えがないくらいに年を重ねた、それでいてまだまだ若々しいリンドブルム中将が、赤絨毯の上に立っている。

 片膝をついて礼をしていたのだが、立ってもらった次第だ。

 だが、「立ってくれ」と言わなくとも立っていた気がする。

 豪胆な男なのだ、リンドブルムという男は。


 スフィーダは「ヤオディについてじゃな? なにか特段の問題でもあるのか?」と訊いた。


「喧嘩っ早いし、結構、向こう見ずな団体さんです。自爆目的の兵が結構います」

「自爆目的?」

「自らの身を顧みない特攻兵ですよ。どうです? 恐ろしい話でしょう?」


 スフィーダは肩を落とし、それからため息をついた。


「リンドブルムよ、おまえには苦労をかけてばかりじゃ。すまぬ」


 するとリンドブルムは大きな声で笑い。


「スフィーダ様がスフィーダ様だから、俺は戦うんですよ。アンタは俺よりずっと年寄りだ。俺よりずっとつらい目をしてきたはずだ。ピクニックに行きたいとすら言えないはずだ。自由に生きることはできないはずだ」


 あまりに気遣ってもらっているようなので、スフィーダはうるうるしてしまう。


「しかしリンドブルムよ。それはわしが選んだ道なのじゃ」

「ええ、はい、そうおっしゃる。だからもういいですよ。無理問答はよしましょうや」


 グスグスと鼻を鳴らしながら、目元の涙を拭ったスフィーダである。


「ピットとミカエラ、それにエヴァで事足りるか?」

「なんとでもしますよ。今はマキエもいますしね。で、だ。ブレーデセンとのコミュニケーションについてなんですが、結構、頻繁に先方とは話をしています。ただ、しっくりこない」

「なにがしっくりこないのじゃ?」

「メグ・シャイナ首相。ご存じですか?」


 スフィーダは「うんうん」と頷いた。

 心当たりがなければ、頷いたりしない。


「美熟女じゃろう?」

「ええ。美熟女でしたよ」

「会ったのか?」

「恐れ多いながらも、お会いしました。立派な人物には見えましたが、裏には不安が見て取れた。ま、じいさんの見立てでしかありませんがね」


 今度はスフィーダ、顎に右手をやり、「うーん」と唸った。

 ヨシュアが「彼女に安心感を与えるために派兵しているのではないのですが」と発言した。

 するとリンドブルムは「冷たいじゃねーか、ヴィノー閣下よ」と言うと口をへの字にして、それからスフィーダを見た。


「シャイナ首相は本当に気が気でない様子です。もともとはそういう人物なのではないのでしょうが、なかば毅然さを失っている。そこでだ女王陛下、彼女に会っていただけませんかね」


 目を丸くしたスフィーダである。


「わしが? メグ・シャイナに?」

「はい」


 玉座の左に控えているヨシュアのことを見上げると、彼は一度だけ、こくりと頷き。


「会ってやってくださいよ。戦争の匂いに震える女なんて、俺は見たくない」


 それを聞いて、スフィーダは「ふっ」と笑った。


「ある意味、不敬ですかね。こんなことを言っちまうのは」

「いや、会うぞ。わしが力になれるのであれば、協力したい」


 がしがしと後ろ頭を掻いたのは、リンドブルム。


「貴女に頼ってちゃあ、ヒトはいつまで経っても己の足で立つことができない。自立できないんです。そんなことは、嫌というほどわかっているんですがね」

「わしは道具じゃ。好きに使ってくれてよい」


 スフィーダ、仕事ができたので、正直、嬉しかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ