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第534話 箱詰めの結界。

       ◆◆◆


 翌朝、スフィーダはヨシュアとともに、ブレーデセンを訪れた。

 移送法陣は用いなかった。

 やはりあれは反則だ。


 ひとまず上空に浮いている。


 ヨシュアがあらゆる強大な魔法、あるいは気が利いた魔法でもって、スフィーダの前を開ける。

 容赦はしない。

 そんなスタンスである。

 同じ種族の生物だという判断があるからだろう。

 強い弱い以前に、そこには残酷なリアルがあるだけだ。


 宙を進むと、やがてフォトンを発見した。

 思わずスフィーダは「フォトン!」と叫んだ。

 彼は特段のケガをしているわけではないようだ。

 ただ宙に浮いたまま、その状態のまま、あぐらをかいている。


 少し離れた位置にはヴァレリアの姿もある。

 彼女もまた、それはもう豪快なあぐらをかいている。


 ではもう一人、マキエはというと、宙に立ったまま、ガンガンガンガンなにかを叩いているのだ。


 なるほどと理解した。

 三人はなんらかの結界内に閉じ込められているらしい。

 それはオレンジ色で、マキエが叩くたびに、その結界が姿を現す。

 物理的な干渉を受けると、反射するようなかたちで具現化されるということだ。


 マキエがガンガンガンガン結界を殴っている様子が、尚も見える。

 声は聞こえてこないのだが、助けてくれーっと言っているようにも映る。


 マキエは移送法陣を使うことができる。

 フォトンも、そしてヴァレリアもだ。

 それでも逃げ出さないのだとすると……。


 浮遊しているヤオディの一人の魔法使いに向け、ヨシュアが「やめましょう」と告げた。

 彼は「誰も殺したくはないんですよ」と、らしいことを述べた。


 軍服であろうカーキ色の魔法衣、それに身を包んだヤオディの男は「ふふっ」と笑ってみせ、そこには嘲笑うかのような色があった。


「ヨシュア・ヴィノー様」

「ええ、はい、そうですよ。私はヴィノー様です」


 ヨシュアにテキトーな感じでそんなふうに答えられたからだろう。

 男は一気に驚いたようで、「くっ……」と尻込みしたように見えた。


「わ、わかっているのか? 三人の命は、今、我らの手に――」

「質問です。教えてください。たいていの場合、術者が死ねば、その効力は意味消失します。あの結界もそうでしょうか?」

「お、おまえはなにを言って――」

「そもそもです。世界最強と呼ばれる兵士が、魔法などに屈するわけがないでしょう?」

「な、なに!?」


 凄まじい爆音とともに、フォトンが飛び出してきた。

 結界をパンチ一発で、ぶっ壊して見せたのだ。

 結局のところ、どれだけ強力な魔法が使えようと、絶対的な腕力には敵わないのである。


 そう、絶対的な腕力。

 物理的に最強なところが、スフィーダの大のお気に入りだ。


 機を待っていたのか、ヴァレリアも自身の力で、正確に言うと、二回三回と蹴りを見舞うことで結界をぶっ壊して出てきた。

 そのうち、マキエもパンチの連打で自力で脱出した。


 怯えるのは、ヤオディの男。

 まさか、結界を破られるとは思いもしなかったのだろう。

 それだけ結界が強力だという自負が、男にはきっとあったのだ。


 逃げた敵襲を、マキエが一目散に追い掛ける。

 ヴァレリアが止めないのは、彼女を信頼しているからに違いない。


「なんとも得体の知れぬ話じゃったな。そもそもじゃ、ヴァレリアよ。くだんの結界などいつでも壊せたにもかかわらず、なぜ大人しくしておったのじゃ?」

「少佐が動かれた時点で行動を起こそうと考えていました。なのに少佐はいつまでも動かないものですから」

「まあ、そのへんはよしとするか。結界内の状況は? どういうものだったのじゃ?」

「結界内では魔法を使うことができません。少佐や私、それにマキエの場合は問題などありませんが、一般的な魔法使いには脅威となります」


 スフィーダは一度頷いた。

 ヨシュアは「やはりそうですか」と言い、二度頷いてみせた。


「ヴァレリア大尉。一つ、相談したいのですが」

「なんなりと」

「マキエ少尉を貸していただけませんか?」

「ああ。結界を破壊したという実績が得られたからですね?」

「ええ。場合によっては、貴女にお願いするケースも考えられる」

「マキエがいれば、問題ないはずです」

「わかりました。まずは彼女に期待することにします」


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