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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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525/575

第525話 仲介役、その二。

       ◆◆◆


 こんじきの間、会議室。

 ネフェルティティもリヒャルトも向かい合って席についている。

 スフィーダはというと、上座である。

 左にはヨシュアが立ち、控えている。


 スフィーダの左方の座席についているネフェルティティが、「ヴィノー閣下も座ればよい」と高貴に言った。

 いえ、私は、ここで。

 そう遠慮したヨシュアである。


 対して、スフィーダの右方の座席についているリヒャルトは、「ネフェルティティ陛下。話をさせていただきたく存じます」と非常によい声で言い、さらには涼しげににこりと笑んだ。


「うぬはリヒャルトといったか。リヒャルト・クロニクルといったか」

「そうでございます。間違いございません」

「しかし、うぬは黙っておれ」

「なぜでしょう?」

「わらわはヴィノー閣下と話がしたい」


 するとヨシュアは真面目な表情を、ネフェルティティに向け。


「お話があるのですか? お聞かせ願えますか?」

「なに。簡単な話ぞ。いい加減、わらわに仕えんか?」

「それは以前にも伺いましたが、しかし――」

「わしが健在のうちは、ヨシュアは誰にもくれてやらん」

「ならばスフィーダよ、おまえを沈めれば、ヴィノー閣下はわらわのモノになるということか?」

「わしは沈まんぞ」

「やりおうてみるか?」

「そんな話をしに来たのではないぞ。というかリヒャルト、おまえもそのつもりがあるなら、とっとと言わんか」


 テーブルに左の肘をつき、頬杖をついているリヒャルトの笑みには、シニカルな感がある。


「ネフェルティティ様。私がどうして面会を求めたのか、見当がつくと?」

「リヒャルト・クロニクル。聞きしに勝る無礼者である。わらわを誰と心得ておるのか」

「ですから、ネフェルティティ様だと」

「やはり無礼である。焼かれたいのであるか?」

「私からも申し上げたいことがある。我が副官を落としてくれた貴軍には復讐させていただきたい」

「副官とは?」

「隣にいる、シオン・ルシオラ大尉のことを指しています」


 浅黄色の髪をショートに整えているシオンは、相変わらず静かに目を閉じたままでいる。


「知らんな、そのような女は。リヒャルト・クロニクル。もう一度言う。焼かれたいのであるか?」

「この場で焼かれたほうがよいと存じます」

「どういうことか?」

「私は私の気が済むまで、貴国に吹っ掛け続けようと考えます。やはり部下の復讐のためです」

「無駄なことを」

「果ては貴女の首をとりにかかるかもしれない」

「やってみよ。わらわは寛大である。いつでもかかってくるがよいぞ」


 スフィーダはゆるゆると首を左右に振り、思わず呆れてしまった。


「ネフェルティティ、それにリヒャルトよ、そんな無駄な話をしようとしておったわけではあるまい?」

「偉そうなことよのぅ、スフィーダよ」

「おまえにだけは言われたくないぞ」


 リヒャルトが高らかに笑った。


「魔女のけんかを拝見できるなど、恐れ多いことですね」


 スフィーダ、むっとなった。


「リヒャルトよ、フォトンと渡り合えるからといって、調子に乗るでないぞ」

「代わりに貴女が私を焼こうと?」

「違う。フォトンが本気を出せば、おまえなど相手にならんという話じゃ」

「確かに、そうかもしれません」

「ほぅ。潔いではないか」

「それでも向かい合おうという話です。戦おうという話です」

「ドМなのじゃな、おまえは」

「かもしれませんね」


 そこまで言うと、次は「ネフェルティティ様」と発したリヒャルトである。


「兵は引くことにいたします」

「よい判断ぞ」


 ゆったりと笑んだ、ネフェルティティ。


「しかし、わらわの国に迷惑を掛けてくれた。報復はさせてもらうぞ」

「ネフェルティティ様。貴女は賢明な方であるはずです。そうすることの無意味さについては、お心得でしょう?」


 声を上げて笑うネフェルティティなど珍しい。


「承知した。リヒャルト・クロニクルよ。いざやり合えるときを楽しみにしておるぞよ」

「ええ。とはいえ、私は私自身の部隊を率いて戦うだけなのですがね」

「いつか屠られることに恐怖しながら生きるとよい」

「そうは思いますが」


 リヒャルトが「クック」と笑った。


「ネフェルティティ様、スフィーダ様でもいい。お二人は本当に、私に敵うとお思いなのですか?」


 案外、痛いところをついてくる男だ、リヒャルト・クロニクル。

 ヒトの一瞬のきらめきには敵わない。

 スフィーダ自身、そう考えていたりもする。


「無礼者めが。しかし、わらわはやはり寛大である。またどこかで会うことになるとよいな、リヒャルト・クロニクルよ」

「恐れ多きお言葉」


 リヒャルトは席を立つと、深々と礼をした。

 そして、シオンの移送法陣に包まれたのだった。


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