第504話 イ〇されてしまったのですっ。
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玉座の間。
赤絨毯の上で片膝をついたのは、マキエ・カタセである。
メルドー隊に所属する屈強な女子だ。
「イカされてしまいました、きゃあぁっ」
マキエはそう言って、顔を両手で覆った。
「は?」
スフィーダの目は点になった。
「イカされてしまったのです、きやぁぁぁっ」
「いい、いや。イカでもタコでもかまわんが、具体的な内容を――」
するとマキエは「うぉぉぉぉ……」などと発しつつ頭を抱え。
「ああ、いけなかったのです。私の行為は間違いだったのです。でも……っ」
「で、でも?」
「私はヴァレリア大尉に抱かれてしまったのです、きゃあぁぁっ」
「ヴァヴァ、ヴァレリアに抱かれた?」
「はい。ベッドの中でいたずらをされてしまったのですっ」
「いいい、いや、自慢げに言わずともよいのじゃが……」
「きゃあぁぁっ」
スフィーダは自身を落ち着かせるために、一つコホンと咳払いをした。
それでもドキドキは止まらないのだが。
「き、気持ちよかったのか?」
「イカされてしまったと言ったではありませんか」
「いい、イカされてしまったのか?」
「だってヴァレリア大尉ときたら、私の割れ目に絶妙な感じで触れてきて――」
「わわ、わかった。それ以上はよいっ。言わずともよいっ」
「ヴァレリア大尉のテクニックはスゴいのです。あれではフォトン少佐もあっという間にイッてしま――」
「だだだ、だから、それ以上は言うなと言っておるじゃろうがっ」
「もっと詳しく話したいのですけれど」
「マキエはヘンタイじゃ。ドヘンタイじゃっ」
「その自覚はあるのです」
「あ、あるのか?」
マキエは両手で顔を覆い、首を大きく左右に振った。
「ああ、いけません。いけないのです。でも、あのお二人は日常的に、ああだこうだしていらっしゃるわけです。そこに想像を、妄想を働かせる。それのどこがいけないのでしょうか」
「い、いや。いけないなどということはないのじゃが……」
いきなりマキエが「ヴィノー閣下っ」と呼び掛けた。
「マキエ少尉、なんでしょう?」
「セックス的なことは、気持ちがよいですか?」
「ええ。気持ちがよいものですよ」
「クロエさんを抱くと気持ちがよいですか?」
「間違いありません」
「きぃやぁぁぁっ」
マキエはいよいよ両手で顔を覆った。
「ヴァレリア大尉に抱かれたいですか?」
「それはもう、きゃあああっ」
「今度、二人がするときに混ぜてもらいなさい」
「やっぱりそうすべきでしょうか?」
「そうすべきです」
「きやぁぁぁっ」
当然、あたふたするスフィーダである。
「い、いくらなんでも、混ぜてもらうのはいかんじゃろう?」
「ですが、それを望んでいる乙女がいるわけです」
「きゃああ、ヴィノー閣下、乙女だなんて、きゃぁぁっ」
「い、いや、マキエ、照れておる場合ではなくてじゃな」
「マキエ少尉、フォトンは力任せのニンゲンなので、多少、乱暴をされるかもしれませんが?」
「がんばります、スゴくがんばります、きゃぁぁっ」
「ヨヨヨ、ヨシュア、おまえは馬鹿か? もしくは阿保なのか?」
「フォトンのアレは雄々しく太く長い剛槍なので、心配しないように――」
「ババ、馬鹿か、ヨシュア。心配するなとか、なんの話じゃ!?」
「太いとか長いとか剛槍とかっ。きやぁぁっ」
「ままま、待て。おまえ達、勝手に話を進めるな」
「体を綺麗にしておかないと!」
「は? マキエ、そなたはなにを言って――」
「いつ乱暴されてもいいように綺麗にしておかないとっ!」
「い、いや、待て。乱暴はいかん。いかんのじゃぞ?」
「いかんと思います。いかんですよ。でも、フォトン少佐とヴァレリア大尉にそうされると思うと……きゃっ」
「きゃっ、ではないぞ、マキエ」
マキエはいきなり立ち上がり、いきなり万歳をし、「やるぞーっ!」と叫んだ。
「まま、待て、マキエ。そなたは間違った道を歩もうとしておるぞ?」
「よいのです。私はお二人に乱暴されることをよしとするのです」
「いいい、いや、だから、それはよくないと言っておるわけでじゃな」
さらにいきなりマキエは万歳三唱。
「帰ります!」
言葉の通り、マキエはくるっと身を翻し、立ち去ってゆく。
スフィーダが唖然となったことは、言うまでもない。




