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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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401/575

第401話 ヴァレリアの、もやもや?

       ◆◆◆


「最近になって、私はしつこいまでに妬いています」


 玉座の間にて、片膝をついた姿勢から立ち上がったヴァレリアが言った。


「それは興味深い。して、そなたに嫉妬を覚えさせている張本人、フォトンはどうしたのじゃ?」

「少佐は眠っておられます」

「寝ておるのか?」

「こっそりベッドから抜け出てまいりました」

「それこそ、妬ける話じゃの」


 ヴァレリアは目を細め、実に穏やかな表情を見せた。


「少佐は昔のことを引きずるきらいがある。その上、彼はいい奴です。だから私は、そこのところに嫉妬する」

「わしもそうじゃな。だから、そなたの言い分を否定することはできん」

「そうなのでございましょうね。ただ、なんというか、彼のことについて、陛下と意見をぶつけ合いたかった。それだけのことでございます」


 ふふと笑んだヴァレリアである。


 スフィーダは「なにが正しくて、どこからが嘘なのかのぅ」と言った。


 正論も虚実もない。

 ヴァレリアはそう答えた。


「じゃったら、わしは――」

「陛下がどうお考えになろうが、それは自由です」

「嘲られているように感ぜられる」

「気のせいでございます」

「とは、言ってものぅ」


 スフィーダは今度は左方、ヨシュアを見上げた。


「陛下」

「んむ?」

「誰が正しいとも言えなければ、誰が間違いだとも言えないのでございます」

「むぅ。深いではないか」

「深くはありません。いにしえから伝わるならわしでございますから」

「しかし、正しいと思わなければ、正しいことはできんじゃろう?」

「神に頼うのが間違いだと申し上げています」

「神はぬるいと?」

「違いますか?」

「違わん」


 はっはっはと笑った、スフィーダ。


 スフィーダは続けて、「そもそも神がいて、連中がまともな神経を有しているのであれば、この世に争い事が生まれるはずもない。すなわち、神は阿呆だということじゃ。そうじゃろう?」と言い、肩をすくめた。


 ヨシュアは深く頷き、「それを踏まえた上で、陛下は陛下なんです。もう少し、言葉を選んだほうがよろしいかと」と紡いだ。


 おまえは馬鹿だと言われたような気がしたので、スフィーダは「軽んじるな」と怒っておいた。


 クックと喉を鳴らして笑った、ヨシュアだ。


 ヨシュアは「我が国を取り巻く環境、あるいは状況は剣呑で、胡散臭い。最近、その旨、強く感じている次第でございますよ」と語った。


「おまえはおまえじゃ。唯一の存在じゃ。この国を守ってみせよ」

「重いお言葉でございますね」

「ばーかを言うな。戯言じゃ。国を守るためだったら、わしかてなんだってするぞ」

「本音を申し上げます」

「うむ。なんじゃ?」


 スフィーダを見下ろし、ヨシュアはにっこりと微笑んだ。


「正しく生きましょう。楽しく生きましょう」


 あまりにも原始的な言い分だったので、スフィーダの目は点になった。しかし、その通りだと思ったから、すぐに納得がいった。


「陛下に尽くします。私はそのために生まれてきたのでしょう」

「そんなことはあるまい。クロエのことはなんとする」

「まあ、そうでございますね」

「生きよ」

「言わずもがな」

「わしは死んでもよい。じゃが、おまえは死ぬな」

「お言葉ですが、陛下――」

「わしにだって、覚悟はあるのじゃ。その旨、忘れんようにな」


 ヨシュアは上体を大きく屈め、礼をしてみせた。


「思っていたよりも、陛下はご立派なのですね」

「そうじゃ、わしは立派じゃぞ?」

「だからこそ、涙をためずにはいられない」

「嘘をつくな。おまえは泣いたりせんじゃろうが」

「そうでございますね」


 ヨシュアがふわりと笑うと、場の空気もやんわりと凪となった。


 ヴァレリアが、「では、そろそろ戻ります」と言い、「これ以上、二人のイチャイチャぶりを見せられるのはかなわない」と続けた。


「なんだかんだ言っても、仕事はあるのじゃろう?」

「はい。部下を鍛えてやらなくてはいけません」

「そなたに稽古をつけられると、あるいは自信をなくす者も出るのでわないか?」

「我が部隊に、そのような軟弱者はおりません」

「そうじゃった、そうじゃったの。まあ、そのへんはわかっておるのじゃが」

「なにか?」

「いつでもよいからマキエを寄越してくれんか? あのおなとじゃれると、ほんに面白いからの」

「わかりました。伝えておきます」

「頼んだぞ」


 ヴァレリアは「はっ」と短く言い、誰よりも美しいお辞儀をした。


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