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第4話 会議に出席。

       ◆◆◆


 城内の会議室。

 計六名が、石製の白い円卓を囲む格好で出席している。


 スフィーダの左から、ヨシュア、太っちょのウィンストン・ローゼンバーグ中将、ひげが自慢のカール・シュナイダー中将、頬に大きな傷のあるリンドブルム・ヴァゴ中将、四角い眼鏡のティーム・ブラック情報部長という並びである。


 議題は、今後の侵攻と防衛について。


 防衛はしなくてはならない。

 国民の権利、財産が奪われるようなことがあってはならないからだ。

 しかし、侵攻はいかがなものか。

 実際、このような会議の場においては、以前からスフィーダは、「戦争反対! 戦争反対!」と意見してきた。

 そうした結果、周りのみなに、しばしば「陛下、ご理解ください」と言われてきた。


 ヒトの営みはヒトに任せる。


 そのスタンスは崩せないし、女王という立場は象徴でしかないのだから、スフィーダは諭されるたび、「むぅ」と口をとがらせ、無理やりにでも自分を納得させるしかないのである。


 とはいえやはり、いつもいつも思うのだ。

 なんのために領土を広げなくてはならないだろう、と。

 なんのために侵略戦争を起こさなければならないのだろう、と。


 今いる国民が幸せであればよいではないか。

 今ある平和を保つことができれば、それでよいではないか。


 しかし、たとえば隣国がひどい独裁政権下にあり、民の人権等が縛られ、蔑ろにされているようなことがあるのであれば、それは救ってやらねばならないとも考える。

 だから、侵攻だって、一概にダメとは言えない。

 難しいところなのである。


 ティーム情報部長が、現在のプサルムを取り巻く状況を一通り説明すると、「そろそろ北に侵攻してもよい頃合いかと考えます」と締めくくった。


 北には小国が三つ、横並びになっている。

 西から数えて一つ目と二つ目の国は、実質的にプサルムの同盟国だ。

 ヒトの交流もあり、貿易も円滑に行われていると聞いている。


 だが、最も東の国だけは、なんというかいけない。

 ちょくちょく、ちょっかいを出してくるのだ。

 プサルムとは天と地ほどの国力の差があるにもかかわらず、だ。


 それこそ、独裁政権とのことなので、とにかく領土の拡大を図りたいのだろうか。

 あるいは、無鉄砲なだけなのだろうか。


 それでもスフィーダ自身は、話せばわかり合えると思っている。


 できることなら、会談の場を設けてもらいたい。

 しかし、それはきっと出しゃばりな行動だ。

 やはりヒト同士で対話するのが、あるべき姿なのだ。


 突然、叩き上げと言っていいリンドブルムが、「メルドーを使おう」と発言した。


 瞬間、スフィーダの肩も心臓もドキッと跳ねた。

 それが誰にも気づかれていやしないかと心配で、左右に顔を向けたりした。

 よかった。

 気づかれてはいないらしい。


 ティームが「フォトン・メルドー少佐のことですか?」と訊くと、リンドブルムは「俺がメルドーといえば、フォトンしかいないだろう?」と答えた。


「フォトンは西部の警備を担当して久しいはずですが?」


 そう発言したのはヨシュアだ。


 するとリンドブルムは、「今までこれといった懸案事項がなかったから、遊ばせておいただけだ」と述べ、「奴を呼び戻す。その上で新たな命令を与え、北の件を一任すればいい」と続けた。


 その後も会議は続いたのだが、スフィーダは、ぽーっとしていた。

 会話が耳に入ってこなかった。


 そうか。

 フォトンを呼び戻すのか……。


 多分、会うことくらいはできるだろう。

 そう考えると、スフィーダの胸は、またドキドキし始めたのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 少しずつ読み始めました。 スフィーダちゃん、めっちゃ可愛いけれど、彼女なりの葛藤があるのですね。 久しぶりにヨシュアのからかい(?)が読めて嬉しいです。 [一言] 新しいお仕事を始めて、ス…
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