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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第391話 マキエの負傷。

       ◆◆◆


 マキエ・カタセが大きなケガに見舞われた。


 ヨシュアからそう聞かされた途端、スフィーダは取り乱すほどの心配さに襲われた。

 いろんなケースを考えた。

 彼女の上官から直接話を聞いたほうが早いと判断した。


 そこで金曜日の夜、ヨシュアに言って、ヴァレリアを呼んでもらった。



       ◆◆◆ 


 赤絨毯の上にて、片膝をついて礼を尽くしたヴァレリア。

 スフィーダは早々に、彼女に立ち上がってもらった。


「マ、マキエは大丈夫なのか? どのくらいのケガを負ったのじゃ?」


 するとヴァレリアはにこりと笑み。


「両腕を骨折しています。とても重たいなにかが頭上から降ってきて、それをなんとかして防ごうとした結果であるような、そんな節が窺えます」

「今、マキエはどうしておるのじゃ?」

「ひとまず入院させました。本人はその必要はないと言ったのですが、足手まといになる者など要らないと、私が言って聞かせました」

「そ、その言い方はあんまりではないのか?」

「そうなのでしょうね。マキエはマキエらしくもなく、しょんぼりしていました」

「もう少し、気を遣ってやってもよいと思うのじゃが……」

「それより、閣下」


 ヴァレリアが、玉座の脇に控えているヨシュアに目を向けた。


「ご報告した通りです。これは少々、ゆるしがたい。そうでなくとも、相手は国際的な犯罪集団であるわけです。いつかどこかで誰かが叩かないといけない。その役割を、我々が担ってもよろしいのでは?」


 無知を自覚しているスフィーダからすれば「国際的な犯罪集団?」と問うしかなく、だから「ヨシュアよ」と彼に説明を求めた。


「ザグレブ。そんな名です」

「初耳じゃ」

「わざわざ陛下のお耳に入れるようなことでもありませんから」


 スフィーダはヴァレリアに目を戻した。


「して、どういうことなのじゃ?」

「ドルーという男がおります。我が部隊の兵です。否。兵だったというほうが、適切です」

「ドルー? 確か、マキエに想いを寄せておった若者じゃったか」

「ご存じでしたか」

「うむ。ドルーとの出会い自体は、偶然も偶然じゃったがの」

「では、もう経緯や背景については見当がつくか、と」

「いや、そうでもないぞ?」


 ヨシュアが隣で「さすが陛下。勘がよろしくない」と言って、クックと笑った。

 頭に来たので「うるさいわい」と、やり返しておいたスフィーダである。


「ヴァレリアよ、知り得る限りを教えてもらいたい。頼む」

「ザグレブ。そう申し上げました」

「わしは初耳じゃと答えた」

「各地でテロを、しかも人命に関わるようなテロを起こしている、一般的に言えば非常にゆるしがたい犯罪組織でございます。曙光にアーカムにと、強国相手に対しても挑戦的です」

「いったい、なにが目的なのじゃ?」

「欺瞞に満ちた世界の秩序を破壊したいのだ、と。世を成す深い仕組みにメスを入れたいのだ、と。欺瞞と仕組みに支配されているからこそ誰かがやらなければならないのだ、と。そして」

「そして?」

「力比べでは負けない、と。なぜなら我々が力そのものであるから、と」

「単なる誇大妄想狂ではないのか?」

「それを判断するのは、どうでもよいことです。マキエを的にかけたことが、私からすれば面白くない」


 スフィーダは頬を緩めた。


「ヴァレリアよ、やはりそなたは優しいのぅ」


 苦笑じみた表情を浮かべたヴァレリア。


「部下のことも守れず、なにが上官だという話です」

「卑屈になることはあるまい」

「恐縮でございます」

「フォトンは? どうしておる?」

「怒りを通り越して、少佐もまた、申し訳なく思っているようです」

「それもよかろう」


 ヴァレリアがヨシュアを見た。


「閣下。警察ではなく、本件は軍にお任せいただきたい。私どもにやらせてください」

「いいでしょう。任せます。一任するからこそ、間違いはゆるされないということを自覚しておいてください」

「重々、承知しております」

「励んでください。期待します」

「はっ!」


 ヴァレリアは立礼し、姿勢よく歩み、大扉の向こうへと消えた。


 左の肘掛けを使い、頬杖をついたスフィーダである。


「首魁のニンゲンはわかっておるのか?」

「ザグレブのスレイマニといえば、それなりに知れた名です」

「そのスレイマニとやらからすれば、本丸はやはりわしか?」

「あとは、ダイン皇帝とネフェルティティ様ですね」

「だとすれば、ヴァレリアはどんな策を用いる?」

「さあ。企業秘密なのでは?」

「とにかく、ヴァレリアであれば成せると?」

「単純で馬鹿なフォトンになにかさせるのはよくない。大尉はそのへんをきちんとわきまえているんですよ。頼もしい限りです」

「むぅ。フォトンが単純で馬鹿なのは、そうだと思うのじゃが。わしは黙って、この場におればよいのか?」

「そうなさってください。お願いいたします」

「おまえからお願いなんてされてしまうと、とても逆らえんが」

「なにせ陛下は、お子ちゃまですからね」

「な、なんじゃとぅ」

「お子ちゃまでしょう?」


 スフィーダは玉座から立ち上がった。

 彼女は「無礼じゃぞ。怒るぞ。子供扱いするな」と言って、ヨシュアの胸をぽかぽかと叩いたのだった。


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