第370話 十七歳コンビは事もあろうに。
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玉座の間。
夕方。
本日最後の謁見者。
ピットとミカエラである。
二人は片膝をついて礼をすると、ヨシュアのゆるしに従い立ち上がった。
「通しはしました。ですが、帰還の命を出した覚えはありません。詳しいところを教えていただけますか?」
「リンドブルム中将の許可は得ました」
「ミカエラ、それは本当ですか?」
「嘘を言ってもしょうがないと思います。ダメならダメで我慢しました。あたしだって軍人ですから」
「ダメならダメで我慢した。いったい、なにを我慢したのですか?」
「寝たいんです」
「寝たい?」
「要するに、濡れ事です」
玉座の上にて、スフィーダはどひゃっと身を引いてしまった。
とにかくびっくりしたので、顔も一気に熱を帯びた。
紅茶などをたしなんでいたら、即座に吹き出してしまったことだろう。
「なななななっ! ミカエラ、そなたはいきなりなにを言い出すのじゃ?!」
「濡れ事です。だけど、野営でするわけにもいきませんから」
「しししっ、したいとは隣のピットとか!?」
「それ以外に誰がいるんですか」
「ピッ、ピットよ!」
「えっと、はい。なんスかね、スフィーダ様」
「そなたもそなたじゃ! もう少し恥ずかしがったらどうじゃ?!」
「でも、俺もしたいッスから」
「ししっ、したいじゃと!?」
「そうッス。したいんス」
ヨシュアが「一晩だけにしなさい。リンドブルム中将も、そのようなことを言ってはいませんでしたか?」と問うた。
「はい。あたし達も馬鹿ではないので、することをしたら戻ります」
「すすすっ、することをしたら?!」
「陛下、どうか落ち着いてくださいませ」
「ヨ、ヨシュアよ、しかしっ――」
スフィーダはミカエラとピットを交互に指差しながら、「だだだっ、だってアレじゃ! ヨシュアよ! あやつらは相当エロいことを言っておるぞ? 言っておるのじゃぞ!?」と訴えた。
「エロいことのどこが悪いと? 私は推奨いたします」
「ば、馬鹿なのか、おまえは!」
「二人はまだ若いのです」
「わわ、若いとなんだというのじゃ?」
「それはもう、裸体で抱き合うだけでも絶頂を極めるような快感を――」
「やめろぉっ! それ以上は言うなあぁっ!!」
恥ずかしすぎて、両手で顔を覆ったスフィーダである。
その一方でヨシュアは「二人とも、行っていいですよ。わざわざの報告、ご苦労様でした」と簡単に言った。
では、失礼いたします。
ミカエラのその言葉をしおにピットも立ち上がり、二人は身を翻すと歩いていき、やがては大扉の向こうへと消えた。
玉座に腰掛けたスフィーダである。
頭を抱えてしまう。
ぜはーぜはーと荒い呼吸をするあまり、落ち着かないのである。
「ヨシュアよ、わかったぞ。わしがまともなのじゃ。おまえとピットとミカエラが、まともではないのじゃ。異常なのじゃ」
「想像してみてください」
「そ、想像?」
「はい。ミカエラは体をゆるすことに快感を覚えるでしょう。そんな彼女を激しく抱くことにピットもまた深い快感を覚えることでしょう。すなわち、私は濡れ事の素晴らしさを強く説いているわけで――」
「だからやめろぉっ! それ以上は言うなあぁっ!!」
「二千以上も生きているというにもかかわらず、このうぶさ加減。陛下はやはり、尊い存在でございます」
「ほ、褒めておるのか?」
「いいえ。馬鹿にしております」
「ヨシュア、きっさまぁっ!!」
「業務が終わりましたので、失礼いたします」
ヨシュアが深々と立礼した。
背筋をピンと伸ばして、すたすたと歩いてゆく。
「くそぅっ、くそぅっ!」
地団太を踏んだスフィーダである。
なんだかとっても、悔しかった。




