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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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332/575

第332話 ジェリド首相の最後の仕事。

       ◆◆◆


 ローラ大陸の南方の島で国家を成す、その名もヴィエイラ。


 ヴィエイラの首脳が、城を訪れた。


 先方の先頭は首相である。

 名はジェリド・ヴィエイラ。

 小柄な白髪の老人である。


 ジェリドは、プサルムの首相であるアーノルド・セラーと握手を交わすと、テーブルの向こうへと歩んだ。


「どうぞ」


 アーノルドがそう促したのに従い、彼らは席についた次第である。


 スフィーダ、実はどうして自分がこの場に呼ばれたのか、詳しいところはわかっていない。

 ヨシュアに「出迎えましょう」と言われたから出席したのである。

 彼女は大人用の椅子に、よいしょと腰掛けたのだった。


「女王陛下の御前です。むしろ、楽にしていただけますでしょうか?」


 アーノルドはそう告げた。

 まったく、気の利いたことを言う男である。


「申し訳ない」


 ジェリドが静かに大きく頭を下げた。


 スフィーダ、今日はのっけから、らしくあろうと決めている。


「ジェリドよ。本当に肩の力を抜いてくれ。わしが出席すれば、我が国に対して揺るぎのない信頼が置くことができる。そんなふうに考えての要望なのじゃろう?」


 ジェリドはしわくちゃの顔を笑みのかたちに変え、「そういうことでございます」と苦笑い気味に答えた。


「スフィーダ様、本当に申し訳ありません」

「じゃから、そこのところは気にするなと言うておる。偉そうにしゃべるわしのほうこそ失礼だというものじゃ」


 にっこりと笑んだジェリド。


「内緒の内緒ではございますが、私の家にはスフィーダ様の肖像画がございまして」

「覚えておる。そんなことがあった。そなたの曽祖父の代に描かれたものであるはずじゃ」

「本当に、よく覚えていらっしゃるのですね」

「ヴィエイラの家系はインパクトが強い。忘れられるはずもないのじゃ」

「スフィーダ様は、本当にお優しい」

「よせよせ。おべっかはときに舌を腐らせる」

「経験則でございますか?」

「ま、そんなとこじゃの」


 失礼な言い方をしてしまえばよれよれの老人でしかないのだが、そんなジェリドのことが、スフィーダからすればかわいくてしょうがない。


「困り事なのじゃろう? 地政学的に見ても、ヴィエイラは微妙な立ち位置にある。ローラ大陸の南側の国家の圧力に、アーカムの影響。難しい立場でないわけがない」


 ジェリドはまたにこりと笑んで。


「そこでいっそ、貴国の、プサルムの直轄地にしていただこうと考え、参ったのです」


 少々驚いたスフィーダではあったが、その線をまるっきり考えていないわけではなかった。


「国民の総意があってのことか?」

「無論でございます。九割以上もの国民が、ぜひそうしてほしいと。プサルムという国の気高さ、尊さは、民のほとんどが共有していることです。私もそこに真実を見ております」


 アーノルドよ。

 彼に話を振ったスフィーダである。


 アーノルドは「心得ております」と返してきた。


「議題については、もちろん、事前に伺っています。私はその方向で推し進めたいと考えています。長い道のりになるのは間違いないことではありますが」

「くどいようじゃが、アーノルドよ、嘘を言うてはおらんのじゃな?」

「スフィーダ様、嘘を言う理由がありましょうか?」

「ありゃせんな」


 スフィーダはふぃーっと息を吐いた。


「出しゃばってすまんかった。難しい話に関しては、わしの出る幕はない。うまく事をまとめ、進めてほしい」


 ジェリドが「スフィーダ様にお目通りがかない、本当によかった」と言い、また顔をほころばせた。


「わしでも役に立つことはあったか?」

「先にスフィーダ様がおっしゃった通りです。私は安心を得るために、スフィーダ様にお会いしたかったのです」

「笑顔くらいならいくらでも振りまくぞ。得意じゃからの」

「またそうやって、心にもないことをおっしゃる」

「そなたの最後の仕事というわけか?」

「そうなればよいと、考えております」

「気持ちが老け込んでしまうと、体まで老け込んでしまうぞ?」

「私などは先ももう長くありません。もし、貴国に面倒を見ていただけるようになれば、若者達の選ぶ道も多様化することでございましょう」

「我が国と行く先をともにする。そなたはそう考えているのかもしれんが、ときが満ちれば、またヴィエイラを解き放つときが来ると思うぞ」

「その通りでございます。私はそう信じて、自らの生を全うしたい」

「ジェリドは、つくづくお人好しじゃの」

「これはまた、手厳しい」

「いや。褒めておる。ヴィエイラ国の宰相、かくあるべきじゃ」

「ありがとうございます」

「気にするな。そなたが晴耕雨読の日々を送れるよう祈っておるぞ」


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