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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第329話 ヨシュアが帰ってきた!

       ◆◆◆


 現象としては、たった二日や三日のことだったのに、玉座の間にヨシュアが姿を現した瞬間、スフィーダは駆けていた。


 大きく手を広げて迎えてくれたヨシュアに、抱きついた。


 わああん、わあああんっ。


 そんなふうに、とても大きな泣き声が出たのだった。


 侍女らまで、近づいてきた。

 みんな、しくしく泣くのだ。

 よかった、よかったと言って、泣くのだ。


「もう少し、留置所にいてもよかったのですが。ええ。あそこは静かでうるさくなかった」

「おまえが帰ってくるのがあと一日遅れていたら、自殺していたかもしれん」

「ほぅ。それは誰の話でございますか?」

「わしに決まっておろうが」


 スフィーダはヨシュアの胸を、それぞれの拳でぽかぽかと叩いた。


「こたびの件で、ある程度、膿みは出せたのでしょうね」

「サドラー教がうんたらかんたらの話か?」

「はい。警察内にシンパがいたとなると、第三者の介入が必要かもしれませんが」

「フォトンとヴァレリアが手を回したと聞いた。そうなのか?」

「主にヴァレリア大尉ですね。彼女はあちこちに顔が利く。頼もしい存在ですよ」


 スフィーダはヨシュアから離れると、腕を組み組み、「むぅ」と唸った。

 もうだいたい、自らを取り戻した彼女である。


「第三者というが、自浄作用に期待することはできんのか?」

「基本的にはという枕詞はつきますが、誰も身内を狩り出したくはありません。穏便に済ませられるものなら、そうしたい。ヴァレリア大尉もその旨を改めて聞かされたはずです。彼女がどこまで譲歩したのかは、知る由もありませんが」

「おまえをもってしても、ヴァレリアの本意は掴めんのか?」

「彼女は水です」

「水?」

「はい。強く打つこともできれば、優しくたたずむこともできる。恐らく、フォトンも彼女のそういったところが好きなのだと思います」

「妬けるぞ」

「しかし、老いには勝てません。大尉もフォトンも、それに私もそうです」


 悲しいことを言われたので、スフィーダはまた、目を潤ませる。

 やっぱりヨシュアに抱き締めてもらう。


「わしはいつまで経っても子供じゃ。どうしてじゃろう。子供でしかいられんのじゃ……」

「貴女にとって、特別な存在でありたい」


 貴女。

 ヨシュアにそんなふうに呼ばれたことは、これまで一度もなかったように思う。

 だからスフィーダは彼を見上げつつ、きょとんとなった。


「私はそう考えています。フォトンにしたって、そうです」


 白く高い天井を眺め、スフィーダは泣いた。

 あっ、あっと、細切れの嗚咽を漏らすたびに胸が上下する。


「おまえ達ほどの者は、これまでおらんかったのじゃ。だから、老いの話などするな。間違ってもするな」

「それは過去の忠臣のことを、あるいは蔑ろにしかねないお言葉でございます」

「フォトンのことが愛おしい。おまえのことだって、愛おしい。いったい、わしはどうすればよいのじゃ……?」


 ヨシュアはその問いには答えず、「雨が降ってまいりましたね」と言った。

 とても静かで、優しい口調で、「涙雨でございますね」と言った。


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