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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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324/575

第324話 ピザ。

       ◆◆◆


 本日の昼食はピザである。


 スフィーダ、ピザは好きなのである。

 かなり好きなのである。


 口の中で、具がそれぞれ主張する。

 チーズの甘味が舌を刺激する。


 うまい。

 うまいのだ。


 向かいの席についているヨシュアに対し、スフィーダは「もう少し、ピザの頻度を高めてもよいと思うのじゃ」と意見した。


「いけません。太っちょになってからでは遅いのです」

「少々ぽっちゃりしていたほうが、愛嬌があるというものではないか」

「では、たとえばです。陛下は腹が出ている私を見たいですか?」

「それは難しいところじゃの。それはそれで笑えるじゃろうからの」

「そもそも論、それは腹が出ている男性を冒涜するお言葉でございますね」

「そんな大げさな話ではない。ところで、ヨシュアよ、そっちのピザを一切れ分けてくれ」

「おや? そちらのピザは陛下の大好物であるはずですが?」

「確かにソーセージは好物じゃ。香ばしいのがイイ感じじゃからの。しかし、そっちのトマトソースもうまそうじゃ。サラミも好きじゃしの。というわけじゃから、やはり一切れ寄越せ」

「確かに、ピザは切り分けられています。ですが本来、他者に分けたりはしないものなんです。それが作法なんですよ」

「ええい、細かいことは抜きにしろ。わしが作法じゃ。よって、わしが決める」

「傲慢極まれりですね。国民に嫌われてしまいますよ?」

「おまえが言わなきゃばれんじゃろうが」

「そういう考え方はどうかと思います」

「ほれ」


 促すようにそう言い、スフィーダは小皿を出した。


 やむを得ない。

 そんな顔をして、小皿に自身のピザをのっけてくれたヨシュアである。


「おぉーっ」


 トマトソースのなんとかぐわしいこと。

 火の通りが絶妙であろうサラミを前にすると、目を輝かすしかない。


「素晴らしい。素晴らしいぞ、ピザであれば、毎日でも食べられるぞ」

「そうは思えません」

「ほぅ。なにをもってそう言うのじゃ?」

「陛下のせいについては、私はまだ触れた程度でしかありませんが」

「小難しいことはよい。つまるところ、なにが言いたいのじゃ?」

「では、申し上げましょう」

「うむ。申してみよ」

「陛下は絶望的に飽きっぽいでしょう?」


 そう言われたスフィーダはドキリとなった。


 いやいやいや、そんなふうに振る舞ったことはないはずだ。

 博愛をよしとしてきたはずだ。

 だから、飽きっぽいところなんて見せたことはないつもりなのだ。


「なっ、なにをもってそう言うのじゃ?」

「感覚的なものです」

「じゃったらそれは冤罪じゃ。まさしくそれは冤罪じゃ」

「でしたら、ピザはご自分のものだけをお食べください」

「それは無情すぎるぞ。一切れ寄越せと言っただけではないか」

「そこに飽きっぽさが滲み出ていると申しております」

「大げさじゃ。おまえの悪いところじゃ。事をネガティブに捉えすぎる」

「ポジティブすぎる陛下は、あるいは馬鹿……いえ、なんでもございません」

「ちょ、おまっ、今、馬鹿だと言いよったな?」

「まさか。我が主君にそのような口を利くなど」

「い、いや。確かに言ったぞ? 馬鹿だと言ったぞ?」

「空耳でございます。どうかお気になさらず、お食事の続きを」

「いいっ、いや、待て待て待て。おまえは確かに馬鹿だと言って――」

「ああ、はい、もうわかりました、結構です。私は陛下のことを馬鹿であると罵りました」

「ちょ、ちょっ、お、おまえ、ついには開き直りよったな?」

「私は陛下を愛しております」

「それこそ馬鹿を言え。愛の一言で済むと思っていてはいかんぞ」

「でしたら、今後は愛など持たずに接することといたします」

「だ、だから、そのへんが開き直っていると言ってるわけじゃが?」


 ヨシュアが右手をひたいにやり、ゆるゆると首を横に振った。


「不毛です、陛下。この話題はここらで終わりにいたしましょう」

「いい、いや、だからちょっと待て。ここはわしが怒る場面であってじゃな――」

「陛下、早く食事をお済ませください。昼休みが終わってしまいますので」

「ひらひらかわすのはよくないぞ? やりすぎるとヒトに嫌われるぞ?」

「私は陛下の前でしか無礼なことは申しません」

「わ、わしの前じゃと無礼なことを言うのか?」

「平にご容赦を」

「いや、いやいや。待て待て待て。おまえにとってわしはどのような存在なのじゃ?」

「遊び相手……ああ、失言でした、謝罪します」


 スフィーダ、腹が立ったので、椅子の上に立ってヨシュアのピザを強奪してやろうと考えた。

 しかし、彼は最後の一切れを素早く取って、自らの口へと運んだ。


 まあ、ピザの話から肥満の話へと発展したのは仕方がない。

 しかし、えらく馬鹿にされたことについては大いに抗議したいスフィーダである。


「ピザは、本当においしゅうございますね」


 格別の笑顔でそんなふうに言われると、毒気を抜かれてしまうというものだが。


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[一言] ピザ食べたくなっちゃったな……
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