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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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315/575

第315話 マキエは男に興味がない?

       ◆◆◆


「以前にも申し上げた通り、私はヴァレリア大尉とエッチがしたいのです。フォトン少佐とでしたら三人でするのもやぶさかではないのです。うぉぉぉぉ……。そんなふうに考える私のどこが悪なのでしょうか……?」


 赤絨毯の上に設けられた椅子に腰掛けているマキエは、頭を抱え、そのようなことを言ったのだった。


 スフィーダ、顔に熱を感じている。

 あるいは鼻血を噴き出してしまうかもしれない。

 以前もマキエはそう言っていたが、改めて言われると聞いているほうが恥ずかしいのである。


「スフィーダ様、教えてください。私は間違っていますか?」

「えっとじゃな……い、いや。想像することは自由だと思うぞ?」

「うぉぉぉぉ……。やっぱり私は大尉に抱かれたいのですっ!」

「それはアレか? いわゆるレズビアンというヤツなのか?」

「スフィーダ様はそういった人種を差別するのですか!?」

「い、いや。そんなことはないぞ? そういうことではないぞ?」

「抱かれたい、ああ抱かれたい、抱かれたい。スフィーダ様、ご存じですか?」

「なんのことじゃ?」

「ヴァレリア大尉の乳房のことです」

「ち、乳房?」

「おっぱいと言ったほうがわかりやすいですか?」

「ど、どちらでもでかまわんが……」

「こないだ、ヴァレリア大佐におっぱいを触らせていただいたのです」

「お、おぉぉ。そのようなことがあったのか」

「スゴく重くてスゴくぷるんぷるんでした。あれに触ったら、男性はみんな、おかしくなります」

「そ、そうなのか?」

「はいなのです。うぉぉぉぉ……。あのおっぱいを一人占めしているフォトン少佐は、裁かれるべきですよぉ」

「二人は愛し合っておるわけじゃ。だったら――」

「うぉぉぉぉ。いけない妄想をしていると鼻血が」


 本当に鼻血を出したマキエである。

 彼女は「失礼します」と言って、白いハンカチで鼻の下を拭うのである。


「あうぅっ!」

「こ、今度はなんじゃ!?」

「どうすれば私はヴァレリア大尉とエッチができるのでしょうか。そのことに関して伺いたくて、謁見を申し込んだ次第なのですよ。二千年以上も生きていらっしゃるスフィーダ様のお知恵をたまわりたいのですよ」


 結構、真剣な目なまなざしを向けてくるマキエである。

 あるいは切実さを帯びているようにも映る。


 ヴァレリアと、したい。


 どうやってするのかと考える。

 あるいは邪とも言える想像が頭の中を駆けめぐって、だからまた、スフィーダは赤面してしまう。

 鼻血を噴き出さずに済んでいることについては、もはやラッキーとしか言いようがない。


 そのときだった。


 テラスのほうから飛んできて侵入し、赤絨毯の上へと舞い下りた男の姿があった。

 特徴的な黒い上下からして、軍人だろう。

 結構、ゴツい男だ。

 だからなんだという話で、無礼極まりない奴でしかない。


「ああ、やっぱり本当だ。マキエ、こんなところにいたんだな」


 気色ばんだ様子の双子の近衛兵、ニックスとレックスが、すかさず男の前に立ち塞がった。


「まあ、待ってくれないか? ご覧の通り、俺は軍人だ。敵じゃない」


 それはそうだ。

 敵ではないだろう。

 しかし、どう考えたって、テラスから入ってくることは礼を欠いている。

 それでもスフィーダは、双子の近衛兵に向けて「よい」と言葉を発した。

 ただちに槍を引いた二人である。


 どうあれ男に危険性はないと踏んだ、スフィーダである。


 マキエは椅子に座ったまま、自身に歩み寄ってきた男を見上げた。


「ですからドルーさん。私は貴方に興味などないのですよ。放っておいてほしいのですよ」

「そんなこと、言わないでほしいな。俺の愛はスゴく大きなものなんだから」

「どれくらい大きいのですか?」

「世界の誰よりも愛しているのさ」


 マキエは頭を抱え、また「うぉぉぉぉ……」と漏らした。


「ドルーさん、いい加減、私のことは諦めてくれませんか? 基本、私は、男性になど興味はないのですから」

「それは不健全だと言っているんだ」

「私の想いを否定されるわけですね。わかりました」


 すっくと立ち上がったマキエである。


「ドルーさん。私のことが好きだとおっしゃるのであれば、私をやっつけてください」

「そんなこと、できるわけがないだろう? 余裕だけど」

「余裕だという言葉が癪に障りました。わかったのです。地に伏せていただくのです」

「はあ?」


 あっという間の早業。

 マキエはドルーの左の膝を真正面から蹴った。


「ぐあぁっ!」


 そんなふうに醜い声を上げたドルー。

 ぴょんと跳ねたかと思うと彼の顎に右の肘を決め、マキエは速やかに彼のことを転がしてみせたのだった。


 スフィーダ、マキエのことを少々見くびっていたと感じた。


 だってマキエときたら、転がったドルーに対して、執拗なまでにストンピングを浴びせるからだ。

 彼女がここまで容赦のないニンゲンだとは、スフィーダも考えていなかった。


 ようやく気が済んだようだ。

 溜飲を下げたというヤツだろう。


「このドルーってヒト、部隊のメンバーなんです」

「浅はかで軽薄そうなニンゲンに見えるのじゃが?」

「その旨、少佐と大尉に伝えます。力があっても精神面が馬鹿なら、それは救いようがない阿呆ですから。お二人とも、わかってくださると思います」

「マキエは退屈か?」

「そう考えた時期もあるのですが、ヴァレリア大尉のおそばにいられれば満足なのです。テラスから飛び立つことをおゆるしいただけますか? 移送法陣でもよいのですが」

「移送法陣? そういえば、その点については訊いたことがなかったな。ふむふむ。そなたは使えるのか」

「最近、使えるようになったのです。ヴァレリア大尉にコツを教えていただきました」

「お、おぉっ。そなたも成長する魔法使いなのか」

「そなたもということは、他にもいるのですか?」

「い、いや。まあ、気にするな。ら飛んでゆくがよいぞ。ドルーの身柄はについては、こちらで対応しよう」

「では、失礼いたします」


 マキエはすたすたとテラスに向かって歩いていった。


 多少、ドルーは不憫だなとスフィーダは思った。


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