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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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291/575

第291話 貴重な季節、多大な時間。

       ◆◆◆


 謁見者用の椅子は二脚準備されていたのだが、少年と少女はそれに座ろうともしない。


 否、正確に言うと、少女に引きずられるようにして訪れた少年には、選択肢もなにもなかったように見えるのだが。


 茶色いロングヘアの少女、十二歳、くらいだろうか。

 くるくるっとした茶髪の少年は、それより二つくらい年下だろうか。


 二人ともしゅっとしていて、俳優の子供らだと言われても納得してしまうくらいの面立ちなのだが、そこのところ、実際はどうなのだろう、きょうだいなのだろうか。


 そのへん、スフィーダは訊ねた。

 少女が「違います」と強い口調で返してきた。


「コレは私の夫になるつもりなんだそうです」


 少女がそんなふうに言ったものだから、スフィーダは今日も「へ……?」と目を点にするのである。


「全然意気地もないのに結婚したいとか、バッカみたい」

「そうは言ってもじゃ。想い抱くのは自由ではないか」

「スフィーダ様、でもコイツ、私よりもずっと小さいんですよ?」

「それは見ればわかる。見ればわかるが、身長は考慮に入れるべきではないと思うぞ」

「そんなの、ヒトの勝手じゃないですか」

「む、むぅ。そう言われてしまうと、ぐうの音も出んが……」


 ヨシュアが「貴女、名前は?」と訊ねた。

 少女はむすっとした顔を続けながら、「リネです」と答えた。


「少年のほうは?」

「ロビーです」

「どちらもいい名前ですね」

「ヴィノー様は、からかっているんですか?」

「リネ、そのようなつもりは微塵もありませんが」

「いきなり呼び捨てなんですか?」

「では、リネさんと呼びましょう」

「いいです、リネで。減るもんじゃありませんし。そんなことより、コレのこと、叱り飛ばしていただけませんか?」

「リネ、コレ呼ばわりもやめなさい。無礼ですから」

「でも――」

「無礼です」

「……わかりました」


 相手を説き伏せるにあたっては、人一倍、威力を発揮するヨシュアである。


「リネ、意見を言ってもいいですか?」

「もちろん、伺います」

「あなた方くらいの時期は、総じて女性のほうが大きいんです」

「それは知っています。でも、本当に私のことが好きなら、今からでも私より大きくていいんじゃないかな、って」


 スフィーダ、「お、おおぅ」と驚きつつ、のけ反った。

 なんとも無茶を言ってくれるおなだと感じた次第だ。


「じゃがのう、じゃがのぅ、リネよ、わしは――」

「スフィーダ様は黙っていてください。私はヴィノー様と話をしています」

「ひ、冷ややかじゃの」


 スフィーダは、どひゃっと身を引いた。

 こういう場面は、最近、ままあるのだ。


「ヴィノー様、今、えーんえーんと泣いているだけのロビーに、将来性はあるのでしょうか?」

「なかなかに、よい質問です」

「どうですか? ヴィノー様の経験と照らし合わせた上で教えてください」

「情けない男はかなりいます。力強い女性はごまんといます」

「ロビーは私にふさわしいですか?」

「今の時点で想いを伝えているのであれば、有望です」

「でも、私より背が低いんですよ?」

「ですから、そのうち追い抜かれます。ざまあみろと笑われますよ」

「それって、要するに……」

「リネ、その通りです。ロビーはきっと立派になります。今から押さえておいて、損はないと考えます。唾をつけておけという話ですよ」

「ヴィノー様の言い方は、まるっきり他人事であるように聞こえます」

「他人事だから、客観的に評価できるんです。もし結婚して失敗したというのであれば、またここを訪れなさい。責任をとりますから」

「どういうかたちで、責任をとってくださるんですか?」

「友人の貴族を紹介しましょう」

「そういうことであれば、今すぐお願いできませんか?」


 リネがそんなことを言ったからだろう。

 ロビーはいよいよ、ひっくひっくとしゃくり上げ始めた。


「あるいはロビーは、貴女のために泣いているのかもしれない。まずはときの流れに身をゆだねるべきです」

「本当に、ロビーは立派な男のヒトになりますか?」

「少なくとも、レディファーストの紳士にはなるでしょう」

「……だよね」


 そう言ってうなずいたリネは、なんの前触れもなく、笑顔を見せた。


「ロビーにしておきます」

「そうですか?」

「はい。私、今日はヴィノー様に相談したかっただけなんです。ヴィノー様にオッケーを出していただけるのであれば、なにも問題なんてないなって思ってました」

「本当に、男子はあっという間に背が伸びます。リネ。覚悟しておいたほうがいいですよ?」

「その日が今から楽しみです」


 にこりと笑ったリネ。


 リネは「行くよ」と言って、ロビーに右手を差し出したのだった。


 本当に、二人に幸あれ、だ。


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