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第255話 わがままエヴァ、その五。

       ◆◆◆


「もういいじゃない。ティターン、やっつけちゃえばいいじゃない。この先、どうせやり合うことになるんだから。先手を打ってなにが悪いっていうのよ」


 赤絨毯の上に設けられた椅子の上でふんぞり返り、イイ感じの肉づきの脚を組んだのは、なにを隠そう、エヴァ・クレイヴァーである。


「エヴァよ」

「なによ?」

「今、脚を組み替える瞬間、パンツが見えたぞ」

「あーら。だったらスフィーダ様、お金、払ってもらえる? 私の体はタダじゃないんですからね」

「だが、見えてしまったものはしょうがないのじゃ。のぅ、ヨシュアよ。おまえにも見えたじゃろう?」

「ピンクでしたね」


 ヨシュアがそう言ったのを聞いて、エヴァはにぃと笑った。


「ホントに見えたみたいね。閣下ならオッケー。むしろ、ヤッてみたいわ」

「そのようにのたまいますか」

「なによ、閣下。のたまったからって、なんだっていうのよ」

「以前にも指摘した覚えがあります。貴女はヴァージンなんでしょう?」

「なっ、なななななっ! そっ、そんなこと、言った覚えはないわよ!!」

「では、実のところ、どうなんですか?」

「そ、それは……」

「大切なものは大切なヒトのために、とっておきなさい」


 すると、エヴァはヨシュアのことを見て。

 まるで睨みつけるように鋭く見て。

 そうでありながら、次に若干俯くと、頬を桃色に染めて。


「なんでそんな恥ずかしいことを、平然と言えるのよ……」

「大事なものは大事なものです。だから、大事な男性にそれを――」

「うるさいわよ! そんなのもう聞き飽きたって言ってるのよ!」

「貴女の元気さは買えます」

「裏を返せば、元気さしか買えないってことでしょ? ああ、最悪。ホント、まいっちゃうなあ」

「なにがまいっちゃうんですか?」

「鈍感すぎ。死んでよ、馬鹿っ!」

「わけのわからないことを言わないでください」

「閣下が鈍感すぎるって言ってるのよ!」


 らしくもない。

 エヴァは猫みたいに目を吊り上げ、険しい顔でヨシュアを見る。


 スフィーダ、ヨシュアに言ってやりたい。

 あんまりエヴァにキツく当たってやるなと言ってやりたい。


「話を戻すわ」

「ええ。そうしなさい」

「ティターンは潰しにかかるべきよ。ホント、長々と野放しにしておける国じゃないんだから。いつか絶対に食らいついてくるわよ」

「そのあたりのことは、セラー首相が判断します」

「首相がするのは最終的な決定ってだけでしょ? 戦争に関する事柄については、当然のごとくかつことごとく、閣下の専権事項。それって間違ってる?」

「私は客観的かつ他人事のように、ものを見極めたいと考えています」

「かもしれないわね。でも、冷静かつ冷徹な振る舞いの意味を知っているニンゲンなら、逆にその裏にある真実を掴もうとするわ」

「いい指摘です。貴女は成長したのでしょうか。エヴァ・クレイヴァー少佐」

「まってくもって、その通りよ。いいわよ。閣下が望むなら、私は閣下の駒を続けてあげる」

「貴女に対しての場合、駒という呼称にはいささか不本意さを覚えます」

「どうしてよ?」

「私は貴女のことが、あまり好きではない」

「そ、そんなこと、知ってるわよ!」


 エヴァのその言葉は強がりに聞こえた。


「ですがね、エヴァ」

「えっ……?」

「どうかしましたか?」

「だ、だって、閣下からエヴァって呼んでもらったの、初めてだから……」

「気に入らないのであれば訂正します」

「だ、だから、そういうことじゃないの。私はただ――」

「女心と秋の空といいますね」

「また言わせるわけ? そんなふうなことじゃ、そんなことじゃ、ないんだってば……っ」

「せいぜい長生きすることです。がんばりなさい」

「根性論なんて受けつけないわよ」

「でしたら、すみません」

「あ、謝る必要はないけど……」

「これからの働きに期待します」

「ホント、それって、わかっていての嫌味でしょ?」

「貴女にも、いつかイイヒトが見つかりますように」

「閣下みたいな男を見たら……って、もういいわ。この朴念仁!」

「おや。私は多弁なつもりですが?」

「うるさいわよ!」


 エヴァは椅子から腰を上げると身を翻し、肩を怒らせ、向こうへと歩いてゆく。

 彼女は振り返ると、もう一度、「この朴念仁!」と言い放った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] エヴァ大好きです。朴念仁なヨシュアも! [一言] エヴァの成長と女心が垣間見れて楽しい回でした。 ヨシュアなんでエヴァには冷たく距離を持って接するのかな?  面白かったです!
[一言] ♪てれれれってれ~♪ エヴァはツンデレにスキルアップした!
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