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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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241/575

第241話 予期せぬ攻防。

       ◆◆◆


 日曜日の夕方。


 スフィーダは私室にて、結構すけすけの黒色のドレスに着替えた。

 さらには黒いヒールをはいて、そしたら準備は万端だ。

 殺伐とした戦場に一輪の黒薔薇を。

 彼女はそんな思いでいる。


 私室から出ると、玉座のかたわらにヨシュアの姿が見えた。

 彼は腕を組んでいるようだ。


 ひょっとすると我が側近は、難しい顔をしているのではないか。

 そう思い、スフィーダはヨシュアの隣にぴょこんと並ぶと、率直に「懸念事項でもあるのか?」と訊ねた。


「やはりお供いたします」

「それは反則じゃ」

「ダークロードがなんの手も打たずに事に臨むとは考えにくい」

「だからといってじゃな」

「私は結論を述べています」

「やれやれ。強引じゃの」

「私とフォトンが同行いたします」

「フォトンもなのか?」

「彼は私の一存で動かせますから。ああ、ちょうど来ましたね」


 赤絨毯の先の大扉が開き、フォトンが入ってきた。

 相変わらずの熊のような巨体。

 彼の姿を目にしただけで、スフィーダの頬は緩むのだ。


「間違っても、手出しをするでないぞ?」

「かえすがえすになりますが、ダークロードだって腕利きを連れてくるはずです。いざというときのために」


 所定の位置で、フォトンが片膝をついた。

 スフィーダはたたと駆けて彼に近づく。

 その太い首に両腕を巻きつけてやった。


 やがてヨシュアが隣に立った。


「陛下。イチャイチャするのは事後にしてくださいませ」

「わかっておる。飛ぶぞ」


 フォトンとともに立ち上がったスフィーダは、移送法陣を使う。

 飴色の筒で自らを含めた三人を早速、包む。

 行き先はもちろん、ダークロードとの待ち合わせ場所だ。




       ◆◆◆


 えらく蒸し暑い。

 森の中だ。


 三十メートルほど先に、ダークロードの姿がある。

 どこから持ち出してきたのか、玉座と呼べる大げさな椅子に座っている。


 ヨシュアの予想は的中だ。

 ダークロードの左右はずらりと骸骨の兵が固めている。


 たかが骸骨兵、されど骸骨兵。

 位は高そうだ。

 みながみな、黒いマントを身につけている点からそう言える。


「おい、ダークロード。一対一ではなかったのか?」

「おまえだって、供を二人も連れているではないか」

「開き直るな。わしはおまえの不誠実さを指摘しておる」

「どうあれおまえを始末できればいいと考えている。おまえが死ねば、プサルムは傾くに決まっている。さすれば、世の大国は曙光とアーカムのみとなる」

「”不死者の王”は決め手を欠いていると耳にしたが?」

「おや。それは誰から聞いた?」

「オスカー・オビロワという若い男からの情報じゃ」


 ダークロードが、カッカッカと笑った。


「そうか。アイツが言ったのか」

「笑うところではないように思うが?」

「いいや。笑うところだ。オスカーはうまく立ち回ってくれたようだ」

「なにを言っておるのじゃ?」

「今一度、告げてやろう。おまえを潰すことができれば、この一件は大成功だ」


 ダークロードが上下に大きくがぱっと口を開いた。

 喉の奥から飛び出してきたのは、白く太い光線だ。


 無論、それくらいは余裕で凌ぐスフィーダである。

 薄紫のバリアを展開し、最後まで防ぎ切った。

 彼女はダークロードに右手を向ける。

 お返しとして、火の玉をボッボッボと放った。


 ダークロードがびゅんと飛翔した。

 おつきの連中も舞い上がる。


 当然、スフィーダはあとを追う。

 ヨシュアとフォトンもついてきた。




       ◆◆◆


 三十メートルほどの距離を保ち、対峙しながら、スフィーダは言う。


「炎を吐いたり光の線を吐いたり、おまえの口はほんに便利じゃの」

「かったるい世辞だ」

「阿呆を抜かせ。からかっておるのじゃ。さて、どうする? ウチの二人は最強レベルのニンゲンじゃ。戦力的にはおまえ達のほう確実に劣っておるぞ?」

「ヴィノー閣下と、もう一人はどこの誰だ?」

「フォトン・メルドーじゃ。知らぬか?」


 ダークロードがまたカッカッカと笑った。


「そうか。ソイツがメルドー少佐か」

「なんじゃ。なんだかんだで知っているのではないか」

「ある程度の情報は知る立場にある」


 いよいよおっぱじめるべく、スフィーダは改めてダークロードを睨みつけると身を低くした。


「ゆくぞ、ダークロードよ。おまえはここで朽ち果てるがいい」


 するとダークロードは大きな右手を前に向けて広げ。


「まあ、そう急くな。もうすぐだ。もうすぐ、来る」

「来る? 誰がじゃ?」

「聞こえないか? おまえ達に敗北をもたらす軍靴の音が」

「ダークロード、おまえはいったい、なにを言って――」


 背後にざわと気配を感じた。

 敵を前にしているにもかかわらず、咄嗟に振り返った。




       ◆◆◆


 大がつくほど巨大な移送法陣、飴色の筒。


 中から飛び出してきた多くのニンゲンは、揃って赤い軍服に身を包んでいた。


 まさか、あかぞなえ!?

 曙光の兵隊!?


 闇が舞い下りつつある中でも、先頭に立っているニンゲンは確認できた。

 それは、茶色いコートですっぽりと身を覆っている、オスカー・オビロワだった。


 オスカーは言う。


「申し訳ありませんが、スフィーダ女王陛下、今夜ここで、貴女は命を落とすことになっています。ご覧の通り、俺は移送法陣がことのほか得意なんですよ」

「この痴れ者がぁっ!!」

「ほら、俺に気を取られていていいんですか? ダークロードが来ますよ?」


 スフィーダは前に向き直った。

 らしくもない。

 自分は少し、ほんの少し取り乱しているようだと、彼女は思う。


 ダークロードの白く太い光線は、ヨシュアがバリアを張ってやり過ごした。


「陛下、一旦、退きましょう」

「馬鹿を言うな! 面倒事を一気に片づけるチャンスではないか!」

「赤備えの力量がわかりません」

「奴らはおまえとフォトンでなんとかせぃっ!」

「しかし――」

「これは命令じゃ!」


 炎の竜を放つべく、両手を後ろに回したスフィーダ。

 途端にダークロードは後退、素早く距離をとった。


 骨でできた魔法使いやら剣の兵らが、スフィーダを取り囲まんと動き出した。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 徐々に高まる緊張感。 ダークロードと一対一での戦いになると思っていたのでびっくりしました。 オスカーは重要人物だったんですね。 [一言] フォトンの存在をダークロードが知っていたことが不安…
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