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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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240/575

第240話 青年の名はオスカー。

       ◆◆◆


 一日の業務、すなわち謁見者の対応を終えると、ヨシュアは玉座の間から足早に立ち去ったのだった。


 ヨシュアが戻ってきたのは、スフィーダが夕食をとっている最中のこと。


「失礼いたします」


 ヨシュアはそう言って、スフィーダの向かいの席についた。


「なにか急ぎの用事でも生じたのか?」

「骸骨騒ぎに関する報告を受けていました。急ぎというわけではありません。定例的なことでございます」

「彼奴らは見事に拡散しておるのか?」

「そうでもないようです。一国に注力する格好で攻め込んでいるとのことです。最初に兵をばらまいたのは、恐怖のサイズを大きくするためだったようですね」

「恐怖のサイズ?」

「骸骨兵の存在が明るみに出れば、世界は彼らに対してビビりまくるでしょう?」

「怯ませておいて、ずどんというわけか」

「さようでございます」


 スフィーダは「ふーむ」と息をついた。

 一定の対応をされるのはやむを得ないと思うのだが、事実そうであるとむしゃくしゃしてしまう。


「昔のダークロードよりは、幾分、頭が回るようになったようじゃの」

「そうなのですか?」

「そうなのじゃ」

「攻め入られている国は待ったなしですが、このようなときにこそ、周辺国と手を取り合って、事に臨んでいきたいものです。そうすることで、明日は我が身という事態を回避できる」

「じゃが、それは難しいことではないのか?」

「肯定します。どの国も、自らの利益を最優先に考えますからね」

「それを悪とは――」

「断じます。少なくとも、私は」




       ◆◆◆


 それから三週間。

 一週間あたり一つずつ落とされ、だからダークロードに降った国は計三つ。

 いよいよのっぴきならないぞと、世界中が騒ぎ始めた。


 そんな折、土曜日。


 オスカーと名乗る青年が謁見を申し込んできたと聞かされた。

 

 休日なのでフツウなら断るところだが、オスカーは「骸骨のことで相談が」と興味深い話題を投げ掛けてきたとのこと。

 その知らせがヨシュアの耳に入り、結果、玉座の間で会うことになったというわけである。


 茶色いコートにすっぽりと身を包んだ青年。

 赤絨毯の上を堂々と歩いてくる。

 なかなかのイケメンだ。

 紅茶色の瞳が目を引く。


 オスカーは所定の位置で立ち止まると、片膝をついた。


「オスカー・オビロワです。お目通りがかなったこと、嬉しく思います」

「よいぞ。おもてを上げよ」

「はっ」


 顔を上げたオスカー。

 やはりかなりの美青年である。


 オスカーは椅子に腰掛けた。

 脚を組んだりしない。

 きちんとした若者であるようだ。


「骸骨らの件で話したいことがあると聞いたが?」

「そうです。お知らせしたいことがあります」

「申してみよ」

「ダークロード、彼は次の標的をここ、プサルムに絞ったようです」


 ダークロード。

 その名を知っているという点から、真実味のある情報を携えてきたことがわかった。


「また急な話じゃの。奴は外堀から埋めていくようなことをのたまっておったのじゃが?」

「三国を奪ったことは事実です。しかし、思っていたよりずっと、兵の消耗が激しいとのこと。ダークロードの悲願は世界の支配ではありますが、のんびりやっていると、逆に追い込まれかねない」

「その旨、事実だとすると、悲しい戦争に手を染めているに過ぎんの。じゃが、不死者の島に引っ込んでいる限り、自らの保身にあたっては無敵のはずじゃ」

「今の立場に飽いたということです」

「飽いたから、どうするというのじゃ?」

「ダークロードはスフィーダ様との決着をつけたがっている。そういうことでございます」

「ほぅ。奴自身がそう言ったのか?」

「はい」

「じゃったら、相手になってやる旨、伝えてもらいたい。それはそうとして、オスカーよ」

「なんでしょうか?」

「そなたは不死者の島に出入りができるのか?」

「はい。移送法陣を使って、ですが」

「どうやって移送先をメモった?」

「俺は曙光のニンゲンです」


 いきなりの告白に、スフィーダの胸の内はざわついた。


「曙光じゃと?」

「気に食いませんか?」

「まったくもってその通りじゃが、先を聞かせてみろ」

「ある日、我が国に骸骨の魔法使いが現れました。見た感じからして、かなりの使い手だということが窺い知れました。その彼の用事はとどのつまり、不死者の進軍を容認、あるいは黙認することでした。かなりの使い手だろうとは言いましたが、下っ端とする話ではありません。そこで俺が直接、ダークロードと面会することになりました。ダイン皇帝陛下の言葉を漏れなく伝達するためです」

「そなたは軍人か?」

「俺は皇帝陛下の側近の一人です」


 スフィーダは俯き、ゆるゆると首を横に振った。


「そなたは自分がなにを言っているのか、そのへんわかっておるのか? 曙光が一枚以上噛んでいるのだとすれば、事は途端にこじれてくるのじゃぞ?」

「なにがどう転んでも、今、貴国を攻撃することはいたしません。俺はあくまでも、ダークロードの思いを伝えに馳せ参じたというだけです」

「わしに、プサルムに伝えてなんとする?」

「すべては世界のためです」

「そなたらが狩ってくれてもよいのじゃが?」

「最後っ屁くらい、受けて立ってやってはいかがですか?」

「よいことを言うではないか。わかった。ダークロードに言え。奴の寝床の南に無人島があるじゃろう? そこで決着をつける」

「わかりました。互いに供は連れない。それでいいですか?」

「そんなの当たり前じゃ」

「では、用事は済みましたので、俺はこれで失礼いたします」

「ダインの側近というのであれば、ここで殺してやってもよいのじゃがの」

「そうなる可能性は低いだろうと判断しました。相手は”慈愛の女王”なのですから」


 オスカーは腰を上げると「では」と言い、移送法陣を使ってどこかへ行ってしまった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ええぇぇぇえぇぇ!!? これは罠なのか事実なのかすらわからない!! 或いは両方?!
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