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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第218話 三国間条約。

       ◆◆◆


 プサルムはこれまで通り力を貸す。

 アーカムは新たに支援の輪に加わる。

 ネフェルティティの阿呆みたいな強引さのおかげで、その旨が容赦なくまとまり、会談は終わった。


 首相官邸の屋上。


 ネフェルティティは気持ちよさそうに、前から吹く風を浴びている。

 一方で、スフィーダはその隣で顎に右手をやり、難しい顔をしていた。


「余計な世話であったか?」


 ネフェルティティが訊ねてきた。


「そうじゃな。まるっきりそうじゃ」


 ぷいっとそっぽを向いたスフィーダである。


「あれがラニード・ウィルホークか。噂通り、藍色の男であったな」

「あの風貌と捻じ曲がった性格は、しばらく忘れられそうもないのじゃ」

「トリニティを前にして逃げた。理由はどうあれ、賢明な判断である」

「そのトリニティじゃが、おまえにしか扱えんのか?」

「そういうわけではない。投じた者のもとに必ず戻ってくる」

「重量は? 軽いのか?」

「幼女のわらわが苦にしない程度である」

「なんにせよ、奪われたら厄介じゃな。対策は? 講じておるのじゃな?」

「無論である」


 ネフェルティティがそう言うのであれば、間違いないのだろう。

 危機管理は万全なのだ。

 保身と呼ぶのはいささか気が咎める。


「ネフェルティティよ、一つ聞かせろ」

「答えようぞ」

「おまえの最側近、ヨナ・ヴェルディじゃったか? あやつはどうした?」

「死んだ。先の緑の魔物とのいくさにおいてな」

「ふぅん。そうなのか」

「だからこそ、言いたい」

「なんと抜かしたいのじゃ?」

「ヴィノー閣下を、わらわは欲しておる」

「じゃから、やらんと言っておるじゃろうが。新しい最側近など、また見つけろ。以前、アーカムは人手不足なのじゃなとツッコミを入れた覚えはあるが、実際はそうでもないのじゃろう?」

「まあ、そうではあるな」

「とっとと帰れ」

「これは異な事。この国はいつからおまえのものになった?」

「メグは絶対に迷惑しておるぞ。おまえは空気すら読めんのか」

「もうずいぶんと前のことであるぞ」

「なにがじゃ?」

「いつかプサルムと矛を交えることになるやもしれんと、わらわは言った」


 その言葉に嘘偽りのなさを感じ、スフィーダは思わずネフェルティティの横顔に目をやった。

 警戒の視線を送る。


「本気で言っておるのではあるまいな?」

「わらわは絶対的な存在ぞ。従わぬ者など必要がない。従わぬ者になど、用はない」

「ネフェルティティよ、おまえは本気でわしを怒らせたいのか?」

「怒ればよい。しかし、おまえにわらわを言い負かすことができるのか? よりよい統治の手法はあるのかもしれぬ。だが、その点については誰も正しい解を持ち合わせてはおらぬ。これは奉仕ぞ。わらわ自らが泥をかぶり、タクトを振ろうというのである」

「傲慢なことじゃの」

「それは負け惜しみでしかない。そのくらい、わからぬのか?」

「おまえと話をすると、本当に頭の中が怒りで満ちてくる」

「たとえそうであろうと知っておけ。理解しておけ。わらわはとにかく無敵である」

「そうではないと思い知らせてやりたいところなのじゃが?」

「今、やり合う理由はない。せいぜい達者に生きることぞ。ヴィノー閣下、また会おうぞ」

「じゃから、おまえは!」


 そんなスフィーダの大声を無視して、ネフェルティティは飛び上がった。

 船着き場に停泊している自らの巨大飛空艇へと向かう。


「ネフェルティティ様は相変わらずでございますね。とにかく神々しく、また美しすぎるくらいに美しい」

「それは心の底から認めておるということか?」

「私の評価は、いつだって客観的なものでございますよ」

「じゃが、わしはどうしたって、奴のことが気に食わんのじゃ」

「とはいえ、ネフェルティティ様はネフェルティティ様で、苦労をなさっているご様子」

「なにをもって、そう言うのじゃ?」

「最側近のニンゲンをとっかえひっかえにしなければならない。恐らくあの御方はその事実に不満を抱いていることでしょう。そこに物足りなさを見ているのですよ。あるいは、寂しいとす考えている可能性も」


 スフィーダは「馬鹿を抜かせ」と言い、「あやつが寂しいなどとと感じるわけがないじゃろうが」と笑い飛ばした。


「メグ・シャイナ首相のお言葉。悔やんでも悔やみきれないという色がございましたね」

「いきなり本題に戻すあたりはおまえらしいが、まあ、その通りであるように見えたな」

「メグ首相はかつて大学で法学を教えていたニンゲンだった。しかし、生徒の中から、ラニード・ウィルホークのような存在を生んでしまった。不可抗力でしかないとはいえ、彼女からすれば、やりきれないことでございましょう」

「ラニードの跋扈にメグは困り果てておる。けっして無視できん事実じゃ」

「我が国に粉をかけてくるようなら、私が屠ります。陛下が出るまでもございません」

「現状においてはその判断でよい。じゃが、状況が変わるようなことがあれば――」


 するとヨシュアは「ラニード・ウィルホークはニンゲンです」と言い、「ニンゲンの相手はニンゲンがします」と言い切った。


 過去にも同様のことを述べていたような気がする。


「陛下のお命が失われること。それ以上の恐怖はないのでございます」


 国を治めるという観点を重視すると、ヨシュアの言い分はよくわかる。

 だがしかし、臣下の命が危機にさらされるとなると……。


「何度だって、幾度だって申し上げます。陛下の身の回りのすべては、私がなんとかいたします。くれぐれも、ご心配なさらないでくださいませ」


 スフィーダは口をとがらせながら俯いた。

 人々を守るためにいるはずの女王が、どうしてヒトに守ってもらわなければならないのだろう……。


「冷たい風じゃの……」


 ネフェルティティがそうしていたように、スフィーダも手を広げ、向かい風に全身を晒した。


「このくらいがちょうどよいのでございますよ」


 ヨシュアが風を受けると、白い魔法衣の裾がひらひらと舞った。


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