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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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215/575

第215話 複雑交差。

       ◆◆◆


 今朝も玉座に腰掛けたスフィーダである。


さくじつは席をはずしてしまい、申し訳ございませんでした」


 かたわらに立っているヨシュアにそう言われた。

 スフィーダは大あくび。

 まだまだ眠い。


「よいよい。仕事だったのじゃろう?」

「謁見者の対応とどちらがプライオリティが高いのかと言われると、微妙なところではあったのですが」

「どこへ行ってきたのじゃ?」

「首相と閣僚とともに、ブレーデセンに行ってまいりました」

「なにかのっぴきならない事象でも発生したのか?」

「はい。ふみで済ませるような話ではありませんでした」

「して、内容は? わしに話す必要がないのであれば、話さずともよいぞ」

「隠し立てするようなことではございません」

「じゃったら、聞かせてもらおう」


 ヨシュアが膝を折った。

 ひそひそ話をしたいというわけではないだろう。

 ただ、近くで言葉を交わそうというだけであって。


「アーカムから接触があったそうです。国交を結びたいとの文言が記されているとのこと。しかも、ネフェルティティ様の直筆である可能性が高いと」

「ちょっと待て」


 スフィーダは目を閉じ、左右それぞれのこめかみを人差し指でさする。

 整理しておきたいことを正確に思い出そうとする。


 先の緑の魔物との戦争においてのことだ。


 ネフェルティティが治める国家アーカムは、ブレーデセンの地で、世界一の国力を誇る曙光と、一戦、交えたのだ。


 アーカムも曙光も問題の緑の魔物を駆逐しつつという、異質ないくさだった。


 アーカムの目的は、どさくさに紛れてブレーデセンを占領すること。

 一方の曙光は、魔物退治だけをよしとしていた。


 その事実から考えると、少なくとも、曙光は悪ではない。

 ブレーデセンから迷惑がられたのは、間違いなくアーカムのほうだ。


 そうであるにもかかわらず、そのアーカムが接触してきた?

 ブレーデセンの政府関係者からすれば、まるで意味がわからないことだろう。

 頭を悩ませて、返事に窮しているであろうことは容易に予測がつく。


 スフィーダは目を開け、すぐそばに顔を近づけているヨシュアのほうを向いた。


「アーカムからそのように知らされたことについて困り果て、我が国に相談してきたということか」

「さようでございます。ブレーデセンは我が国の支援によって、立ち直りつつあります。言ってしまえば、彼らはアーカムの存在など必要がないと考えている」

「じゃが、アーカムは巨大じゃ。その事実があるというだけで、断りにくいじゃろうのぅ」

「そういうことなのでございます。圧力的な外交を向こうに回しては、どうにも分が悪い。とはいえ、そのような旨を相談されても困るというものですが」

「アドバイスを求めたい。その考えはよくわかるぞ。誰かにビシッとこれが正しいと言ってもらいたいのじゃ」

「お鋭い」

「鋭くはないわい。なんだかんだ言っても、ブレーデセンは、国交を樹立するくらいなら問題がないと判断しようとしているのではないか?」

「おっしゃる通りでございます」


 一つ吐息をついた、スフィーダ。

 彼女は眉をひそめた。


「言ってよいか?」

「なんなりと」

「どうあれわしらは第三国にしか過ぎんのじゃ。見守ることが正道でじゃろう?」

「これまた、お鋭い」

「じゃから、別に鋭くはないわい」

「ですが陛下、正道を貫くことによって、あるいはヒトを困らせてしまうこともあります。その旨はご理解いただけますか?」

「もちろんじゃ。ネフェルティティがじきじきに来るということで怯えているのならば、あいだを取り持ってやることもアリじゃろう」

「しかし、セラー首相が音頭をとってそれをやると、まとまるものもまとまらないかもしれません。なにせ、ネフェルティティ様は――」


 スフィーダは「そうじゃな」と言って再び吐息をつき、前髪を掻き上げた。


「あやつはヒトの言うことなど聞かん。わしの言葉にならかろうじて耳を傾けはするがな」

「やはり、自分でなんとかしろと伝えるしかないのでしょうか」

「あまりにもブレーデセンにとって不利な条件なら、また知らせが来るじゃろう。そのときになったら考える。わし自身、アーカムによる支配はどうかと考えておるからの」

「承知いたしました」

「それにしても、どういう意図があってのことなのか。裏にある思惑は、近いうちに領土を広げたいということなのじゃろうか」

「領地を召し上げられるとなると、いよいよブレーデセンは泣きますよ」

「国民が、か?」

「首脳らもです」

「できることなら、ネフェルティティとはえんを切りたい」

「それは嘘でございましょう?」

「どうしてそう思う?」

「お二人は魔女という特異な存在であり、そこに仲間意識みいたいなものが皆無なのかというと、そうではないはずでございますから」

「おまえは頭がよいのぅ」

「いえ。誰にでもわかることでございますよ」


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