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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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211/575

第211話 青年が歩む道に、幸多からんことを。

       ◆◆◆


 いくさがあった。

 本土にまで攻め上がられたこともあった。

 だが、なんとかみなの力で凌ぎきった


 隣接している敵国もあり、予断をゆるさない状況にある。

 それでも、国は落ち着いた。


 次に攻めてくるものがあれば、またみなの力を結集させればいい。

 次に攻め上がらなければならないことがあれば、火の玉のごとくぶつかればいい。


 ヒトとは悲しい生き物だ。

 ヒトとは不自由で不器用な存在だ。

 だからこそ、彼らを導く者が必要なのだ。


 そう。

 指導者は、いつだって求められるのだ。

 その声に応え、応え続けなければならないのだ。




       ◆◆◆


 玉座の間のさらに上階にあるテラス。


 城下に集まった人々に、スフィーダは淑やかに右手を振ってみせる。

 別に「みな元気かーっ!」とか、「わしは元気じゃぞーっ!」とか叫んでもよいのだが、こういう場においては、彼女は静かに振る舞おうと決めている。


 隣にはヨシュアの姿がある。

 彼は別になにもしなくても、「キャーッ! ヨシュア様ぁーっ!!」と黄色い声を飛ばされる。

 まさに不公平だ。

 美男は正義かと問われると、イエスと答えるしかないのだが。


「ラースよ、ほれ、来い。こっちに来て、みなに手を振ってやれ」

「し、しかし、私は現状、ハインドのただの一兵卒でしか――」

「そなたが立たんと言うのであれば、わしはそなたのことを見損なうぞ」

「えっ?」

「ヒトの総意を汲むことができる存在。そうなって、わしを驚かせてみろ」


 ラースは小さく俯き、それから前髪を掻き上げた。

 口元には小さな笑みをたたえている。


「スフィーダ様もヨシュア様も、私の退路を断つおつもりだったのですね?」


 ヨシュアが「そうですよ」と言い、「指導者になれるニンゲンは多くない。だからこそ、貴方はそうなりなさい」と続けた。


 ラースが前へと踏み出した。

 大きく両手を振ってみせたところで、集まった国民は頭にクエスチョンマークを浮かべるだけだろう。


 だが、近い将来、その名を知らない者はきっと、否、絶対にいなくなる。




       ◆◆◆


 のちの日の昼食時。

 白いテーブルを挟んで、ヨシュアと向かい合っている。


「楽しみですね。ラースが国のしゅとなることを想像すると、ぞくぞくしていまいます」

「ぞくぞくって、ヨシュアよ、あるいは、おまえにはМの一面もあるのか?」

「ございますね」

「じゃったら、少しSは控えろ。わしのことをあまりからかうな」

「からかわれている実感はおありだったのですね」

「当り前じゃ」


 スフィーダは、ガラスの器に入ったかぼちゃの冷製スープをズズッとすすった。


「音を立てて飲むのは、行儀が悪うございますよ?」

「やかましいわい」

「その態度もいかがなものかと」

「わしはわしの生きたいように生きるのじゃ」

「話が飛躍しましたね」

「ラースが前を向く姿。その姿に、わしは見事に触発されてしまったぞ」

「この先は、ラース殿下と呼ぶ必要があります」

「わかっておる。じゃが、プライベートとなれば、ラースでよいじゃろぅ」

「そうでございますね」

「おまえとクロエ。二人がラースの中でどれだけ特別な存在であるかがわかった」

「おや。お褒めいただいているのでしょうか」

「そうじゃ」

「気持ち悪い」

「気持ち悪い言うな」

「気色悪い」

「気色悪い言うな」

「まあ、いずれにせよ」

「ああ、そうじゃな。ラースのビーンシィは強くなるぞ」


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