表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

188/575

第188話 リンドブルムがっ?!

       ◆◆◆


 その日の仕事が終わった時間帯、夕暮れどき。


 タイトな黒い軍服に身を包み、帯剣している男子、若者が、玉座の間に飛び込んできたのだった。


「どどっ、どうしたのじゃ?!」


 スフィーダは驚き、目を白黒させながら訊ねた。


「それが、リンドブルム・ヴァゴ中将が……」

「リリ、リンドブルムがどうしたのじゃ? 傷でも負ったのか?」

「い、いえ。そうではないのですが……」

「じゃったら、なんじゃというのじゃ?」

「そ、それは……」

「ええい。要領を得んぞ。まずは本人のところへ案内しろ」

「よ、よろしいのですか?」

「なにがきっかけでおおごとになるかわからんじゃろうが。行くぞ、ヨシュア」

「御意にございます」




       ◆◆◆


 病室、そう、病室に入ると、うんうんという唸り声が聞こえた。

 スフィーダの薄い胸は、悪い意味でいよいよドキドキし始める。


 まさか、重傷!?


 しかし、よくよく思い返してみれば、リンドブルムが詰めていたのはグスタフ北方の国境線沿いだ。

 相手は北の強国と呼ばれる国家であるが、長らくのあいだ、プサルムと戦争を起こしたという事実はない。

 事態が急変したという話も耳にしていない。


 それでも、リンドブルムが苦しみに悶えていることは事実であり。

 そんな彼を目の前にしているものだから、気が気でなくなるのも当然であり。


 スフィーダはベッドの上で横たわっているリンドブルムに、「大丈夫か、リンドブルムよ!?」と大きな声で問い掛けた。

 しかし、彼は返事を寄越さない。

 うーん、うぅぅーんとつらそうな声を上げるばかりである。


「ああ、なるほど。わかりました」


 スフィーダのすぐ隣で、ヨシュアがそう言った。


「なっ、なにがわかったのじゃ?」

「見たところ、手傷を負った様子はない。だったら、まあ、アレでございましょう」

「ア、アレ?」

「その点、今から問います。リンドブルム中将」

「な、なんだ? 大将閣下殿よぅ」

「ぎっくり腰ですね?」


 それを聞いて、スフィーダの口からは「へっ? ぎっくり腰?」と間抜けな声が出た。


「お、大当たりだ……っ」


 寝返りを打ったリンドブルム。

 その額は汗びっしょりである。


「情けない話だよ。落としたものを拾おうとしたときに、まさにぎっくりだ。動かすと悪いってんで、飛空艇で運ばれてきた。どうだ? 情けない話だろう?」

「いえ。負傷していないというのであれば、喜ばしいことです。よかったです、本当に」

「いきなり腰をやっちまうようなニンゲンだぜ?」

「不可抗力ですよ」

「俺があけた穴はどうする?」

「私が埋めます」

「おいおい。いくらなんでもそりゃあ――」

「かまいませんから、お休みください」


 苦笑じみた表情を浮かべたリンドブルムである。


「これだから、嫌になっちまうんだよなあ」

「嫌になる?」

「ああ。嫌になる。だってそうだろう? 俺の代わりをできる奴がいるってんなら、俺自身のモチベーションは下がっちまうってもんだ」

「考えすぎは、よくありませんよ」

「おまえは有能だよ、ヴィノー閣下。有能すぎるくらい有能だ。いつかは世を正してみせろ。おまえがそれを成したとき、世界は本当の意味で生まれ変わるはずだ」

「おやおや。私は大きな期待を背負わされているのですね」

「おまえなら、メルドーとおまえなら、それができる。俺はそう信じている」


 ヨシュアは「そうですかね」と言い、少々の笑みを口元に浮かべた。


「とにかくリンドブルム中将、貴方はゆっくり休んで、ゆっくり復帰してください」

「ったく、おまえが出張っちまったら、女の兵はキャーキャーなんじゃないかね」

「かもしれませんね」

「否定くらいしろよ」


 リンドブルムが、またうんうん唸り出した。


「あー、ダメだ、とっとと帰ってくれ、ヨシュア、それに陛下も。今夜が山だ、なんつってな」

「本当に、ゆっくり静養してくださって結構ですから」

「わかったよ」


 ヨシュアが部屋を出ていく。

 ホッと胸を撫で下ろしたスフィーダも続く。

 去り際、彼女は訊いた。


「ぎっくり腰とは、そんなにつらいものなのか?」

「そりゃもう。誰かに代わってほしいくらいですよ」

「ご愁傷様なのじゃ」

「縁起でもないことを言わんでください」


 リンドブルムも、もういい年だ。

 いくら彼がやる気だといっても、後進はリストアップしておくべきなのかもしれない。

 それはそれで悲しく、また寂しい話ではあるのだが。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 年齢か……(遠い目) 腰はツラいですね。 でもちょっと可愛いと思ってしまいました。 屈強な男が腰痛で悶えるの、可愛い。(たまになら)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ