表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/575

第150話 状況開始。

       ◆◆◆


 太陽がまぶしく、空が高い高い土曜日。


 スフィーダは魔法使いの連隊の前を飛んでいる。

 彼女のさらに前方にはヨシュアとフォトンの姿がある。

 後続を引き離さないよう速度を抑えつつ、海を渡るべく宙をゆく。

 船で現地に向かっている歩兵部隊の到着はあとだ。

 肝要なのは、なにより先に制空権を確保すること。


 イェンファまで、あとおよそ三キロの上空。


 そこまで達したところで、魔物が群を成してやってきた。

 緑色の肌を上から下まで晒している、きっと低能でしかない連中だ。

 防衛に出てきたというより、それこそ、これからプサルムに向かうつもりだったのではないか。


 スフィーダ一行はいったん止まる。

 ヨシュアが誰より前に出た。

 彼女は彼に対して、厳しい表情で命令する。


「薙ぎ払え」


 ヨシュアが右手を左から右へと大きく振った。

 途端、幅広の赤い波が発生した。

 炎の高波だ。

 魔物らをまとめて飲み込んでゆく。

 あっという間に、片づいた。

 後方の兵達からは、驚いているような気配を感じる。

 大将閣下の実力を目の当たりにし、改めて心強く思っていることだろう。

 士気は高まったと言っていい。


 目的地に近づくにつれ、どっと敵の数が増えてきた。

 ところどころに白い布をまとった者がいる。

 ただの肉弾戦に頼るザコとは違う。

 魔法を使えるようだ。


 スフィーダとヨシュア、それにフォトンは一度、高空まで舞い上がった。

 代わりにヴァレリアを先頭とした兵らが前へと進み出る。

 敵勢は思っていたよりも、ずっと多い。

 数は互角くらいだろう。


 横に広がっていたプサルム軍の兵士達が、魔物らを取り囲むように動く。

 ヴァレリアの作戦だ。

 セオリー通りとはいえ、妙策ではないか。

 殲滅するには打ってつけの陣形だろう。

 ぜひとも、勝ち戦にしてもらいたい。

 否、勝ち戦にしなければならない。


 スフィーダら三人は移動を開始。

 イェンファの地へと、ハイスピードで突き進む。

 途中、多数の敵が襲い掛かってきたが、いっさい止まることなく仕留めながら、飛ぶことを続ける。

 ときがゆるすならいくらでも相手をしてやるところだが、あいにく、用事がある。

 大切な用事がある。


 やがて上陸し、宮殿までおよそ一キロの地点。


 宙に浮かんでいる魔物二匹と出くわした。

 両方ともやはり肌は緑色で、頭髪はない。


 一方は胸が大きく膨らんでおり、赤いロングドレスをまとう女、否、メス。

 ミレイだろう。

 もう一方は茶色いズボンをはいている、筋骨隆々の巨躯のオス。

 サーシェスだろう。


 ミレイは「キャハハッ!」と笑い、「ファッキュー、お馬鹿さんの女王陛下。テメーなんざ呼んでねーよ」と汚い口を利いた。

 サーシェスに至っては、体の前で両の拳を幾度もぶつけ合わせながら、「全部砕いて柔らかくしてから食ってやる!」と怒鳴った。


 問答無用。

 背の鞘から大剣を抜いたフォトンがまず突っ掛かる。

 懐に入らんと超のつく速度で迫る。


 サーシェスは素早く反応した。

 至近距離となったところで、右手のチョップを振り下ろした。


 フォトンはそれを剣の腹で受け止める。

 地へと弾き飛ばされるなんてことはない。

 彼はその場で耐えて見せた。

 怪力ぶりはいい勝負だ。


「キャッハハハッ! 男どもの戦いって、野蛮じゃね?」


 ミレイはそう言って、また「キャハハッ!」と笑う。


「おしゃべりしようとは思いませんよ。聞く耳も持ちません」


 ヨシュアが左手を掲げた。

 黄金色の粒子が集まり、まもなくしてその手には槍が握られた。

 投擲。

 ミレイは自らの前に張った薄紫のバリアで難なく遮った。


 フォトンとヨシュア。


 二人の戦いぶりを今しばらく眺めていたいところではあるが、スフィーダは体を前傾させ、飛空を再開する。

 彼女の目当てはあくまでも――。


 ひぃ、ふぅ、みぃ……。

 白亜の宮殿は四階建てで、その倍くらいの高さの塔が隣にある。


 お行儀よく玄関から訪ねるつもりなどない。

 黄金色の太い矢を両手から幾本も放ち、四階の壁をぶち破って中へと飛び込んだ。

 そして、赤絨毯の上に勢いよく下り立った。


 先に見える玉座の上には、小柄な少年のような容姿の魔物の姿があった。

 だぼっとした紫色のズボン。

 むき出しの上半身。

 黒いロングコート。

 王、オベリスクだ。


「よくぞ参った。悠久のときを生きる魔女よ」


 ゆっくりと立ち上がったオベリスク。


「貴様の命もここまでじゃ」


 スフィーダは態勢を低くし、早速、左手を後方へと伸ばす。

 その腕に、赤き炎の竜をまとう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ