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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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134/575

第134話 ヴァレリアからの報告。

       ◆◆◆


 ヴァレリアがタクトを振り始めてから五日。


 フォトンの部隊を筆頭とする兵らが、ついにカナデの地を取り戻した。

 ヨシュアからその知らせを受けるなり、嬉しくなって、スフィーダはぴょんぴょんと飛び跳ねた次第である。




       ◆◆◆


 翌日。

 玉座の間。


 スフィーダの視線の先では、黒い軍服姿のフォトンとヴァレリアが立っている。

 直接、報告を聞かせてもらいたくて呼んでもらったのだ。


 ヨシュアは定位置、玉座のかたわらにいる。

 防衛戦の総指揮はリンドブルムが担っているらしい。

 予断をゆるさないには違いないが、大将閣下御自ら出撃しなければならないような状況は、ひとまず脱したということだろう。


 スフィーダはヴァレリアに「女王は、ユメルは、発見できたのか?」と訊ねた。

 すると「いえ」とだけ返ってきた。


「ダ、ダメじゃったのか?」

「どこか別の場所に移されたのかもしれませんし、あるいは」

「食われたのやもしれん、と……?」

「はい」

「……わかった」


 文句をを言ったところでしょうがない。

 つらいところではあるが、自分を納得させたスフィーダである。


「ただ、くだんの術者を確保することはできました」

「おぉっ。それは朗報ではないか」

「はい。異界につながる穴とやらも閉じさせることができました。ただ、術者は他に二名いるとのことです」

「ま、まだ二人もおるのか」

「個人的には、少なくて助かったと考えています。あと、一応、お伝えしておきます。あまり見られないとのことではありますが、穴はもともと、自然界に存在しているのだそうです。しかし、それは切り口程度のもの。その切り口を見ることができて、さらに広げることができるのが、術者であるとのことです」

「ふむ。厳密にはそういうことじゃったのか」


 ヨシュアが「大尉」と呼び掛け、「お手数ですが、先達て私に報告していただいたカナデ王国の現況、それを陛下にもお話し願えますか?」と告げた。

 承知しましたと返事をしたヴァレリアである。


「惨状と化している地域もありますが、国を回すためでしょうね、ヒトはそれなりに生かされております。ケイ・クドウ首相もご存命です」

「なによりじゃの」

「食糧になってしまった者についてはどうしようもありません。問題は犯された女性です。仮に繁殖能力が高いというのであれば、厄介なことになるかもしれません。ヒトと魔物の子が、どのような性質を持って生まれてくるのかわかりませんから」

「それこそヒトを食らうというのであれば、たまったものではないな……。ヨシュアよ、この先はどうなる?」

「残った二国、イェンファとブレーデセンですね。敵はその両方からの派兵を繰り返すでしょう」

「やはり、継続的に我が国に仕掛けてくると?」

「はい。並行して、他国にも手を広げるのは間違いありませんが」


 スフィーダは再びヴァレリアと目を合わせた。


「ヴァレリアよ、質問じゃ。以前、エヴァが話しておったのじゃが、メスの魔物もいるそうじゃな」

「はい。おります」

「それでは、メスはメスでその、なんというか……」

「ヒトの男と交わるのか、と?」

「う、うむ」

「魔物はヒトを劣等種としていると考えられますから、その線は薄いかと存じます」

「劣等種を孕ませるのはよいのか?」

「妊娠は結果です。オスは性欲さえ吐き出すことができれば、それでいい」

「そうなるか。まさに蛮族じゃの」

「同感でございます」

「あとは、こっちがどう動くか、じゃな」


 改めて、ヨシュアを見上げたスフィーダ。

 彼は前を向いたままでいる。


「イェンファとブレーデセン。両方に派兵したいところではありますが、どう考えても、今、戦力を二つに割るのはリスキーです」

「どちらから叩くのじゃ?」

「イェンファです」

「王がいる可能性が高いからか?」

「そうです。頭を潰さなければ、戦いは終わりません」

「必然的な動機じゃな。合点のいく理由でもある」

「事が事です。派兵の準備はすぐに整えます。ヴァレリア大尉、引き続き、指揮をお願いしてもよろしいですか?」

「私でよければ喜んで。ですが――」

「わかっています。あまり甘く見ないほうがいい。そう言いたいんですね?」

「はい。とはいえ、リソースに限りがあることは理解しております」

「今ある状況においては、指示の内容がすべてです。励んでください」

「少佐とともに、全力を尽くします」

「頼みます」

「はっ」


 フォトンとヴァレリアは揃って立礼し、玉座の間を出ていった。


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