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全力女王!~気高き幼女は死神に見捨てられたのか?~  作者: XI


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第129話 魔物。

       ◆◆◆


 本日最後の謁見者が玉座の間をあとにした、その直後のこと。


 赤絨毯の上に突如として飴色の筒、移送法陣が出現した。

 ヒトを三人は包み込めるような、大きなものである。


 筒が空気に溶け込むようにして消滅する。

 人影が見えてくる。

 姿を現したのはピットとミカエラ、それにエヴァだった。


 ピットとミカエラは肩で息をしている。

 だが、そのうち落ち着いたようで、二人は片膝をつき、こうべを垂れてみせた。

 エヴァはというと、腕を組んで突っ立ったままである。

 彼女は呼吸を乱しているということはない。


「エヴァ・クレイヴァー少佐。陛下の御前です。礼を尽くしなさい」

「閣下、堅苦しいことは抜きにしてよ。仲間じゃない」

「ダメだと言っています」

「しょうがないわね。はーい」


 エヴァも片膝をついた。

 ヨシュアは確かに頭が固い。

 別に大仰な挨拶は要らない。

 だから早速、三人には立ってもらった。


「今、そなたらが従事している任務はなんじゃ? 揃ってイェンファの攻略戦に回されておるのか?」


 エヴァが「そうよぉ」と答え、「やっぱり戦場っていいわよね。ストレス発散になるから」と続けた。


「その考え方はよくないぞ」

「陛下ならそう言うわよねぇ」

「なぜ作戦中に帰ってきたのじゃ?」

「焦らないでよ。これから話すから」


 本題に入る前に、ヨシュアが待ったをかけた。


「エヴァ・クレイヴァー少佐、二つ、注意事項があります」

「なによぅ」

「一つ。移送法陣の使用は禁止されています」

「その国際法って、もはや形骸化してない?」

「やむを得ない場合のみにしなさい」

「はーい。二つ目は?」

「移送先に、この玉座の間を選択するのはやめなさい」

「わかった。わかったから、そんなに怖い顔しないでよ」


 エヴァは肩を下げて息をつくと「ホントに閣下って細かいんだから」と、ぶうたれた。


 ピットが「クレイヴァー少佐が近くにいてくれたおかげで助かったッスよ」と言い、ミカエラに至っては「殺されていたかもしれないとまでは言いませんけれど、危なかったことは事実です」と物騒なことを述べた。


 スフィーダは「なにがあったのじゃ?」と問い掛けた。

 するとエヴァが「変なのが出てきたのよ」と返してきた。


「変なの? どういうことじゃ?」

「ヒトのかたちをしていて、中には人語がわかる奴や魔法を使える奴もいるみたいだけど、肌が緑色なのよ」

「緑色?」

「そう。白い布をまとっているのもいれば、ああ、やだ、全裸のやからのほうがずっと多かったわね。見た感じだけど、男も女もいた。気持ち悪いったらありゃしない。言ってみれば魔物ね。とにかく見たこともない生き物だった。あんな連中がこの世界にいるなんて、私は知らなかった」

「その魔物とやらのせいで、逃げてきたのか?」

「悪い?」

「いや、そなたらしくないなと思っての」


 スフィーダ、素直にそんなふうに考えた。

 エヴァが退くなど、本当にレアケースであるように感じられた。


「数がいたのよ。しかも、かなり頑丈だった。ヒトよりずっと体が強いわ。厄介よ」

「そのような生き物の話は、わしもまったく聞いたことがない」

「そうなの?」

「そうなのじゃ」

「でも、変よね。そういう手札を持っているなら、もっと早くに切ればよかったんだから」

「確かに、その通りじゃの」

「でしょう?」

「うむ」

「まあ、そんなふうに状況はちょっと剣呑さを帯びてきたわけだけど、ねぇ、閣下、これから私はどうしたらいい?」

「改めて、出撃してもらいます」

「兵の増員は? してくれるのよね?」

「貴女が述べたことが真実なのであれば」

「嘘ついてどうすんのよ」

「貴女には期待しています」

「へぇ。そうなの? 褒めてくれるなんて珍しい」

「別に褒めてはいませんよ」


 ヴィノー閣下と呼び掛けたピット。


「俺達もまた派遣してくださいッス」

「魔物とやらと戦うことすら、いい経験だと?」

「違うッスか?」

「あなた達の能力は評価していますが」

「死んだところで自己責任ッス」

「わかりました。その覚悟があるのなら、いいでしょう。実戦に勝る鍛錬はないでしょうしね」


 ピットとミカエラが軽く拳をぶつけ合う。

 やったねということだろう。


 エヴァが「じゃあ、とりあえず待機?」と訊いた。


「ええ。ときが来たら伝えます」

「あんまり待たせないでよね。私って気が短いんだから」

「知っていますよ」


 スフィーダは「魔物については、わしも調べてみるとしよう」と言った。

 そしたらエヴァが「あら。陛下にはあてでもあるわけ?」と訊いてきた。


「ちょっと訪ねてみるだけじゃがの」

「誰を?」

「内緒じゃ」

「ケチ」

「陛下が外出されるのであれば、当然、私も同行します」

「かまわんぞ。というか、ヨシュアよ、おまえの移送法陣でないと訪ねることができん。わしはその場所を知らんからの」

「……なるほど。そういうことでございますか。確かに、彼らならなにか知っているかもしれませんね」

「そういうことじゃ」


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